就業規則の作成義務があるのは労働者の数が10人以上の事業場

2016年6月17日

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就業規則の作成義務があるのは労働者の数が10人以上の事業場

1. 労働者の数が10人以上の場合は就業規則の作成義務あり

1.1. 作成した就業規則は監督署に提出

法律上、就業規則の作成義務があるのは、労働者が常時10人以上いる規模の事業場(※)に限られます。

ここでいう労働者とは正社員に限らず、パート・アルバイトや日雇いなど、すべての労働者が含まれます。

また、海の家や山小屋のような季節的事業のように、季節によって労働者の数が変動し10人以上になったり10人未満になったりする場合も、平均的にならすと労働者が10人以上いる場合も作成義務が生じます。

そのため、条件に当てはまる事業場は、就業規則を作成の上、事業場を管轄する労働基準監督署に届け出る必要があります。

 

※ 事業場とは事業を行う場所のことを言います。例えば、同じ会社で会っても工場と事務所が別の場所にあるという場合、2つの事業場があると考え、労働者の数もそれぞれで見ます。

 

2. 就業規則を作成しなかった場合の罰則

就業規則の作成義務のある規模の事業場で、就業規則を作成しない場合、労働基準法第120条により30万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

ただし、実際には就業規則作成義務違反で起訴されたり、上記のような刑罰を受けるケースというのは稀です。

例えば、労働基準監督署の調査の際に、会社に就業規則がなかった、という場合でも、監督署の労働基準監督官(労働法の司法警察官としての権限を持つ)が、いきなり会社を書類送検するということはありません。これはよっぽどのことがない限り、交通法規違反でいきなり逮捕されることがないのと似ています。

もちろん、いきなり逮捕や書類送検されないからといって、就業規則の作成義務があるのに作成しなくても良いという理由にはなりません。

 

3. 就業規則を作成しないことの企業秩序的リスク

就業規則がないことによる法的なリスクは上記で見たとおりですが、それ以上に問題なのは、就業規則が存在しないことによる労使間トラブル発生のリスクです。

例えば、遅刻や早退、無断欠勤を繰り返すような問題社員が社内にいたとしても、就業規則がなければ、減給や解雇といった懲戒処分を行うことはできません。中小企業の中には就業規則無しでそうした懲戒処分を行っているところもあったりしますが、そうした処分は違法なものであり、処分を受けた労働者に訴えられ裁判になった場合、まず会社は勝てません。

よって、法律で決まっているから就業規則を作る、作らないではなく、会社を守るために積極的に就業規則を作成し改定していく姿勢が経営者には求められているといえるでしょう。

また、近年ではネットの発達により労働者側が労働法に関する知識を蓄えていることもあり、義務があるのに作成しない、あるいは作成していても穴だらけ、となると、そうした労働者から指摘を受ける可能性もあります。

 

4. 労働者の数が10人未満の場合、作成義務ないが作成することも可能

4.1. 10人未満の事業場で就業規則を作成する意義

法律上、労働者の数が10人未満の場合、就業規則の作成義務はありません。

一方で、就業規則を作成することは会社のルールを作成することと同じことから、規模の小さな会社でも作成の意義は小さくありません。

そもそも労働者の数が常時10人未満の会社でも時間外労働や休日・有給などの労働基準法の制約は受けるからです。よって、就業規則でそれらをきちんと定めることは、会社のコンプライアンスを高めることに繋がります。

また、いくら労働者の数が少なかったとしても、問題を起こす人、悪いことをする人、というものはどうしても一定数いるものです。

そうした人との無用な労使トラブルの回避や、そうした小童たちから会社を間もあるためにも就業規則を作成しておくことはとても重要です。

ただし、作成した以上は、労働者だけでなく「会社も」その就業規則を積極的に守っていく必要が有ることは忘れてはいけません。

ちなみに、労働者の数が10人未満の事業場で就業規則を作成した場合、労働者に対してその就業規則を周知させなければ法的な効力が発生しないのは10人以上の事業場の就業規則と同様ですが、行政官庁に届け出る義務はありません。

 

 

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社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士(登録番号 第23130006号)。社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

2016年6月17日