就業規則を作成する際、その就業規則は、会社内のどの雇用形態の従業員に向けて作成しているのかをイメージしておくことは非常に重要です。
雇用形態とは正規や非正規のことで、つまり、その就業規則は正社員向けなのか、非正規向けなのか、嘱託社員向けなのか等々をきちんとイメージし、そして、雇用区分ごとに区分けする必要があります。
なぜなら、こうした区分けが曖昧だと、パート・アルバイトに適用するつもりのない規定まで、パート・アルバイトに適用されるということが起こりうるからです。
そのため、正規だけしかいない、あるいは非正規だけしかいない、といった会社でない限り、就業規則の「適用範囲」に関する条文の重要性は労働時間や賃金等と並んで非常に高いので、この記事では就業規則の「適用範囲」の条文作成のポイントと規定例について解説していきます。
この記事の目次
1. 就業規則作成の「適用範囲」とは
就業規則を適用する労働者の範囲を定める条文で、主に正規と非正規の線引きを目的とするものになります。
こうした線引きは、特に同一労働同一賃金の面で重要であり、これがきちんとされていないとパートやアルバイトに正社員の規定が適用されるということが起こりえます。
ただし、こうしたリスクに対応するには、単に適用範囲を就業規則に記載するだけでは不十分で、雇用形態ごとの規則の作成も別途必須となります。
2. 「適用範囲」条文作成のポイント
2.1. 正規と非正規の線引きを明確にする
「条文の必要性」で書いた内容と重複しますが、就業規則の本則は基本的に正社員にのみ適用されるものです。
そして、その中には正社員以外の非正規労働者に適用されると不都合な内容もなくはありません。
特に手当や賞与、退職金といったお金に関わる規定が混同して適用されると、思わぬコストがかかることになります。
そのため、就業規則では通常「適用範囲」という項目を定め、正社員とそれ以外の非正規労働者との線引きをはっきり付けるのが一般的です。
ただし、就業規則でその線引きをはっきり付けたとしても、非正規労働者に適用される別規程が作成されていないと意味がありません。非正規労働者がいる会社では非正規労働者用の就業規則も必ず作成しましょう。
2.2. 会社の実態に合った呼称にする
規定例では社員全体のことを「従業員」と呼称していますが、会社の業種等によっては「職員」や「所員」と呼ぶ会社もあると思います。
そうした場合に、「従業員」の箇所を「職員」や「所員」とすることは問題ありません。もちろんその場合、他の規定もすべて統一する必要があります。
2.3. 会社内での呼称と法律上の非正規労働者の定義の違いに注意
非正規労働者についても基本的な考え方は同じです。
アルバイトのことを「キャスト」と呼んだり、契約社員を「準社員」と呼ぶ会社もあることでしょう。
このようにパートタイマーやアルバイト、契約社員に関して別の呼称がある場合はそちらに変更してしまって構いません。
一方で、法律上の非正規労働者は「短時間労働者(所定労働時間が通常の労働者よりも短いもの)」「有期雇用労働者(契約期間の定めのあるもの)」「短時間・有期雇用労働者(契約期間の定めがあり、かつ所定労働時間が通常の労働者より短いもの)」の3つに分けられ、その区分に応じて適用される法律等が変わってきます。(派遣社員は、直接雇用しているわけではないのでここでは除外)
そのため、会社内の呼称を重視する場合、適用される法律の漏れがないよう注意する必要があります。
3. 就業規則「適用範囲」の規定例
第○条(適用範囲)
- この規則は従業員についてのみ適用する。従業員とは第○章で定めるところにより会社と労働契約を結んだ者で、職務の内容および勤務地いずれも制限がなく基幹的業務に携わる者をいう。
- 次の各号に定める者は本規則を適用せず、別に定める規則によるものとする。
① パートタイマー・アルバイト
② 契約社員(無期転換した者を含む)
③ 嘱託社員
4. 規定の変更例
4.1. 正社員の呼称が「職員」の場合
第○条(適用範囲)
- この規則は職員についてのみ適用する。職員とは第○章で定めるところにより会社と労働契約を結んだ者で、職務の内容および勤務地いずれも制限がなく基幹的業務に携わる者をいう。
- 次の各号に定める者は本規則を適用せず、別に定める規則によるものとする。
① パートタイマー・アルバイト
② 契約社員(無期転換した者を含む)
③ 嘱託社員
4.2. 限定正社員がいる場合
第○条(適用範囲)
- この規則は従業員についてのみ適用する。従業員とは第○章で定めるところにより会社と労働契約を結んだ者で、職務の内容および勤務地いずれも制限がなく基幹的業務に携わる者をいう。
- 次の各号に定める者は本規則を適用せず、別に定める規則によるものとする。
① 地域限定正社員
② 職務限定正社員
③ パートタイマー・アルバイト
④ 契約社員(無期転換した者を含む)
⑤ 嘱託社員
会社によっては、最初の規定例に挙げた以外の正社員ではない雇用形態の労働者もいるかと思いますので、その場合は上記のように適宜追加してください。
逆に、契約社員がいない(将来的にもそうした雇用形態を設ける気はない)場合は、規定例に挙げている雇用形態を削除してしまって構いません。
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