出退勤は、労働者のプライベートの時間と仕事の時間が切り替わる瞬間です。
その分、気の緩みや不正が起こりやすい瞬間でもあるため、就業規則にてきちんとルール決めをしておきたいところです。
この記事の目次
1. 「出退勤」条文の必要性
出退勤に関する規定は就業規則の絶対的必要記載事項・相対的必要記載事項ではありません。
そのため、法律上はなくても構わない条文となっています。
とはいえ、会社は労働者が出勤してこないことには始まりませんし、出退勤の際に会社に損害のある行動をされても困ります。
そのため、出退勤に関する条文については定めておくのが基本といえます。
2. 「出退勤」条文作成のポイント
2.1. 服務規律に含めてしまっても構わない
出退勤に関するルールは、会社の服務規律の一部ではあるので、個別の条文は作成せず、服務規律の条文に含めてしまっても構いません。
実際、そういう規定例もみられますが、筆者の個人的な意見としては労働者が出社しなければ会社は始まらないので、規定は個別に作成した方がいいという考えです。
2.2. タイムカードの不正は懲戒処分であることを強調しておいた方がいい
タイムカードの不正は詐欺
記事の最後に挙げている規定例ではタイムカードの不正は懲戒処分の対象であることを強調しています。
これはタイムカードの不正は、会社を騙すこと、つまり詐欺であり、そうした行為は非常に罪が重いことを強調するためです。
タイムカードの不正を行った者に対する懲戒解雇を有効とした裁判例も
日本の裁判所は懲戒解雇に対して非常に厳しい立場を取ることが多く、めったに懲戒解雇の有効性が認められません。
しかし、タイムカードの不正については少し話が違い、こうした不正を行った労働者への懲戒解雇を有効とした裁判例が存在します(常懐学園事件)。
裁判所はこの事件において、タイムカードの不正打刻は「労使間の信頼関係を破壊する道徳的不正」と述べていますが、労働時間管理や給与計算等、労務管理において様々な面で活用されるタイムカードに不正を働くということはこうした労務管理の根本を揺るがすものであるということです。
ちなみに、海外ではタイムカードの不正打刻を法律で厳罰化している国もあります。
就業規則で周知しているほど懲戒処分は有効と認められやすい
こうした裁判例を踏まえると、就業規則においてタイムカードの不正が重大な違反であることを強調しておくことには意味があるといえます。
なぜなら、就業規則に「タイムカードの不正は違反」であることを強調しているにもかかわらず、労働者がそうした違反をした場合、そうした規定がない場合よりも懲戒処分が有効であると認められやすくなるからです。
タイムカードの不正をいかに暴くか
就業規則の話から少し逸れますが、では、会社としてはどのようにタイムカードの不正を暴いていけばいいのでしょうか。
まず、不正を行ったという証拠がなければ、第三者にそれを示すことは出来ないので、不正の疑いがある場合はきちんとその現場を押さえる必要があります。
タイムカードの不正を暴く方法としては、タイムカードの打刻場所に監視カメラを置く、他の労働者から聞き取りをしたり協力を得る、パソコンの使用履歴など、他の記録と照らし合わせることなどが考えられます。
また、一回の不正では、たまたま間違えたと逃げられる可能性も考えられるので、最初は指導に止め、それでも繰り返し行うようであれば、懲戒処分等を行うほうが確実です。
なお、勤怠管理システムにそもそも不備があったり、不正が簡単にできるような状態になってしまっていると、会社側の責任を問われかねません。
そのため、不正を暴くことだけでなく、会社はそもそも不正をするのが難しいような勤怠管理システムを導入し、不正を防ぐことにも注力する必要があります。
3. 就業規則「出退勤」の規定例
第○条(出退勤)
- 従業員は出勤および退勤について、次の事項を守らなければならない。
① 始業時刻とともに業務を開始できるように出勤すること
② 出勤および退勤は、必ず所定の通用口から行うこと
③ 出勤の際、日常携行品以外の私物を就業場所に持ち込まないこと
④ 退勤の際は、機械、器具、書類等を整理整頓し、安全を確認した後に退勤すること
⑤ 業務終了後は速やかに退勤するものとし、業務上の必要なく社内に居残ってはならない - 出勤および退勤の際、従業員は自ら、タイムカード等により出退を記録しなければならない。
- 前項の記録について、故意に怠り、あるいは偽ったとき、第三者に代行させるなどの不正を行った場合、懲戒処分の対象とする。
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