休職期間中の労働者というのは、会社に在籍はしているけれども労働義務はないという、通常の労働者とは異なる特殊な状態に置かれます。
この特殊な状態により、休職期間中は規定に定めがないと、休職期間中の労働者に対し会社が業務命令することができません。
そして、休職中、特に私傷病休職中に関しては、労働者から定期的に報告がもらえないと、会社としては、復職を判断するための情報を得られません。また、報告に遅滞や虚偽があっても同様です。
実務上は、こうした規定がなくても休職中の労働者に報告を求める会社は少なくないと思いますが、労働者側に法的な知識があると、規定がないことを盾に報告を拒否される可能性もあるので、きちんと制度を整えておきたいところです。
この記事の目次
1. 「休職中の報告」条文の必要性
休職は相対的必要記載事項の「その他」に当たるため、休職制度を定める場合、基本的に定めは必須となります。
また、休職期間中の労働者に対しては、規定に定めがないと業務命令をすることができません。
そのため、こうした規定がないと労働者から休職中の状態の報告を求めることすらできなくなる可能性があるため、休職制度の運用においても非常に重要な条文となります。
2. 「休職中の報告」条文作成のポイント
2.1. 休職規定の分割
このサイトでの「休職」の条文は「休職(休職事由)」「休職期間」「休職期間中の取扱い」「休職中の報告」「復職」の5つに分割しています。
もちろん、これは一例ですので、この通りにする必要はありません。
実際、他の規定例は、上で分けた5つを全て一つの条文にまとめていたり、私傷病休職と他の休職を分けていたりするなど、規定を作る人によってその形式は様々です。
条文例の作成者としては、休職の一連の流れに沿った方がわかりやすいと考え上記のように分けていますが、これだとわかりづらい、イメージしづらい、ピンとこない等々の場合は、他の規定例を見てみるのも良いでしょう。
参考:休職関連の条文作成のポイントと規定例
2.2. 復職に含めることも多い
一般的な規定例だと、休職中の報告については「復職」の規定にその内容を含めることも多いです。
ただ、復職を前提としない報告を求めることもあれば、報告によって復職が可能かを判断することもあると思うので、この2つの規定は分けておいた方が良いかと思います。
2.3. 懲戒対象であることを強調することも可能
就業規則の懲戒事由には「就業規則その他会社の諸規程に定める服務規律に違反したとき」といった規定があるのが普通です。
そのため、個々の条文に「○○の場合、懲戒処分の対象とする」といった定めがなくても、違反に応じた処分を行うことは可能です。
その一方で、規定にこうした定めを入れることで、違反には懲戒処分があることを強調するという効果があります。
3. 就業規則「休職中の報告」の規定例
第○条(休職中の報告)
- 会社は、休職中の従業員の状況の確認および復職の可否を判断するため、従業員に現状の報告を求めることがある。
- 前項の報告を求めるに当たって、第△条1項1号または2号により休職する者に対して、会社は医師の診断書の提出を求めることがある。
- 前項に加え、会社が必要と判断した場合、会社は従業員に対し、会社の指定する医師への受診を行わせることがある。
- 従業員は、休職事由の消滅が見込まれる、あるいは休職事由が消滅した場合、その旨を会社に報告しなければならない。
- 従業員は前各項の報告を遅滞なく行い、虚偽の報告をしてはならない。正当な理由なく報告がない、あるいは報告に虚偽があった場合、会社は当該従業員の休職を打ち切り、休職期間が満了したものとみなす。
4. 規定の変更例
4.1. 虚偽の報告は懲戒処分の対象であることを強調する場合
第○条(休職中の報告)
- 会社は、休職中の従業員の状況の確認および復職の可否を判断するため、従業員に現状の報告を求めることがある。
- 前項の報告を求めるに当たって、第△条1項1号または2号により休職する者に対して、会社は医師の診断書の提出を求めることがある。
- 前項に加え、会社が必要と判断した場合、会社は従業員に対し、会社の指定する医師への受診を行わせることがある。
- 従業員は、休職事由の消滅が見込まれる、あるいは休職事由が消滅した場合、その旨を会社に報告しなければならない。
- 従業員は前各項の報告を遅滞なく行い、虚偽の報告をしてはならない。正当な理由なく報告がない、あるいは報告に虚偽があった場合、会社は当該従業員の休職を打ち切り、休職期間が満了したものとみなすほか、懲戒処分の対象とすることがある。
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