就業規則の「休日」条文の作成のポイントと規定例

2023年11月1日

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就業規則の「休日」条文の作成のポイントと規定例

 

労働者からすると、賃金や労働時間と並んで重要な労働条件といえるのが休日です。

会社が就業規則にて休日のルールを定める場合、法律上守らないといけないことがある一方、会社の裁量で決められる部分も非常に多くなっています。

そのため、法律を守りつつ、会社の実態に合った規定作成を行うために重要なことを解説していきます。

 

1. 法令から見た「休日」のポイント

1.1. 日常用語の休日とは必ずしも一致しない

休日とは、日常用語では、仕事や学校の授業がない日をいいます。また、日曜日や国民の祝日を指すこともあります。

ただ、これらは必ずしも労働基準法の休日とは一致しません。

そのため、日常用語の感覚で労務管理で使用していると、思わぬ法律違反に繋がる可能性があるので、以下ではその解説を行っていきます。

 

1.2. 休日と労働基準法

法定休日とは

労働基準法では、「1週1日もしくは4週4日」の休日を労働者に取得させることを会社に義務づけています。

この「1週1日もしくは4週4日」の休日のことを法定休日といいます。

 

休日1日は暦日で考える

この「1週1日もしくは4週4日」を数える上では、そもそも「1日」とはいつからいつを言うのかをわかっていないといけません。

実は法律上の「1日」とは「暦日」、つまり、午前0時から午後12時までのものをいいます。

そして、休日の日数を数える場合も、この「暦日」で考えなければなりません。

つまり、深夜0時をまたいで働く場合、次の日に勤務がなかったとしても、法定休日としては数えられないわけです。

(ただし、8時間の交代制で勤務する三交代勤務制の場合、暦日ではなく継続24時間を休日1日とすることが可能です)

午前0時を跨いで労働した場合、次の日に勤務がなかったとしても、その日は休日とは数えられない

 

1.3. 法定休日と所定休日

所定休日とは

週休2日が当たり前となった現在では、法律で定められた「1週1日もしくは4週4日」以外にもお休みがあるのが普通です。

こうした法定休日とは別に設けられた休日のことを所定休日といいます。

法定と所定の2つの休日については、以下で説明するように、労働基準法上扱いが異なる部分がいくつかあるので、その使い分けに注意が必要です

 

休日出勤と割増賃金

法定か所定かで変わってくるもののうちの一つが、休日労働があった場合の割増賃金の割増率です。

どう変わってくるかというと、まず法定休日に労働させた場合の割増率は3割5分です。

一方の所定休日に労働させた場合は割増率は2割5分となります。

法定休日労働の割増賃金が3割5分となるのは、労働基準法でそう定められているからですが、所定休日労働の割増賃金が2割5分となるのはなぜでしょうか。

これは所定休日に労働させた場合というのはあくまで法定時間外労働という扱いとなるからです。逆にいうと、所定休日に労働させたとしても、週の労働時間が40時間を超えない場合、割増率2割5分の部分の支払義務は発生しません。

 

休日出勤と時間外労働の上限規制

割増賃金の他に所定か法定かで変わってくるものとして、時間外労働の上限規制があります。

というのも、時間外労働の上限規制では、以下のように、法定休日労働時間を含める上限と含めない上限規制があるからです。

法定休日の労働時間を含まない

法定休日の労働時間を含む

限度時間(1か月45時間、1年360時間) 2か月~6か月の平均で各80時間以内
年間上限720時間 単月で100時間未満

なお、所定休日労働の労働時間については、通常の労働時間と扱いが同じとなるので、それが法定時間外労働に当たる限り、基本的にはどちらにも含めることになります。

 

1.4. 振替休日と代休

振替休日と代休の違い

就業規則の休日規定を作成するに当たっては、振替休日と代休の区別も重要です。

では、どう違うかというと、まず振替休日とは事前に労働日と休日を入れ替えるものをいいます。

一方の代休とは事後、つまり、休日労働をした後に、後日、もともと労働日だった日に休日を取らせることをいいます。

 

振替休日と代休と時間外手当

事前か事後かで何がそんなに変わってくるかというと、それは割増賃金です。

振替休日は「事前に」労働日と休日を入れ替えることになるので、入れ替えた時点では時間外労働や休日労働はまだしていません。

そのため、振替休日の場合は入れ替え後の労働時間が週40時間の法定労働時間の枠内に収まっていれば、時間外手当は発生しません。

一方、代休は時間外労働や休日労働をすでに行った後であり、すでに行った時間外労働や休日労働をなかったことにすることはできないので、必ず割増賃金は発生します。これは後に代休を取らせたとしても同じです。

 

 

2. 就業規則「休日」条文作成のポイント

2.1. 就業規則における必要性

休日は就業規則の絶対的必要記載事項となります。

そのため、就業規則作成の際は必ず規定を作成する必要がある上、労働者にとっても非常に重要な労働条件であるため、実態とかけ離れたような規定作成は避けなければなりません。

 

2.2. 法定休日の特定

法定休日を特定すべきとは法令に書かれていない

労働基準法では、就業規則で、法定休日をどの日(曜日)と特定するかまでは義務づけていません。

過去の通達(【昭23.5.5 基発682 号、昭63.3.14 基発150 号】)では、休日を特定することが法の趣旨に沿うとし、就業規則においては、単に1 週間に1 日というような形ではなく、具体的に一定の日を休日と定めることが望ましいとしています。ただ、通達は行政の法令解釈の一つであるため、そこに絶対的な効力があるわけではありません。

よって、法定休日をいつとするか特定しない形の規定もあり得るわけですが、実際のところ、会社や労働者にとってはどちらがいいのでしょう。

 

特定するメリット

法定休日を特定すること、しないことについては、メリット・デメリットあり、どちらが絶対的に良いということはありません。

そのため、両者のメリットを確認しておく必要があります。

まず、法定休日を特定するメリットとしては、法定休日が後から変わることがないので労務管理上の手間が少なくなります。

要するに、毎週日曜日を法定休日と定めておけば、日曜日に休日出勤したときのみ、法定休日労働扱いにすればいいので、給与計算や労働時間管理が簡素化されるわけです。

 

特定しないメリット

一方、法定休日を特定しないことのメリットとしては、人件費を下げられる可能性があることです。

というのも、法定休日を特定しない場合、4週4日の休日が確保できない場合のみ法定休日労働扱いとなります。

つまり、休日労働の日数がいくら多くても、4週4日にかかってこない限り割増率が3割5分になることがないわけです。4週4日にかかる場合、というのは、具体的には4週のうち2日や3日しか休みがない場合です。

とはいえ、このようなことは法定休日以外の所定休日全てで休日労働でもしない限り起こりません。むしろ、ここまでくると時間外労働の上限規制や長時間労働等の他の問題が発生している可能性が高いでしょう。

 

2.3. 所定休日の特定

所定休日の特定についてはどうでしょうか。

こちらについては、そもそも法律の定めのない部分なので、特定すべきかどうかについて法令や通達に定め自体がありません。

ただし、例えば、就業規則に「祝日を休みとする」とした場合で、ある祝日に出勤させようと思うと、それは休日出勤扱いとなってしまいます。(なお、割増賃金が発生するかは、その週の労働時間によります。)

加えて、後から実態に合わない休日をなくそうとすると労働条件の不利益変更となる可能性が出てきます。

そのため、会社の目線で言えば、あまり特定しない方が都合が良いといえますが、労働者からするとお休みがいつかはわかっていた方が働きやすいのは確かです。

以上を踏まえると、所定休日については、無理のない範囲で就業規則で特定する、というのが現実的な落とし所となるでしょう。

 

2.4. 就業規則上の法定休日、所定休日の区別

法定休日か所定休日かについては、割増賃金や時間外労働の上限規制については法律上の扱いが異なるため、きちんと区別する必要があります。

逆にいうと、それ以外の場合では両者を区別する必要性はほとんどありません。

そのため、就業規則上で休日を区別する必要のない箇所では、法定か所定かは特に記載せず、単に「休日」と記載するのが普通です。

 

2.5. 就業規則に振替休日と代休を定めるか

取りあえず入れておく、もあり

振替休日と代休を規定に定めるかは会社の実態次第ですが、いずれも、実施するのであれば定めは必須となります。

ただ、振替休日に関しては、過去に行ったことがなかったり将来的に行う予定がないという場合であっても、規定があって邪魔になることはない(会社の負担が増すような規定ではない)ので、とりあえず入れておく、でも問題はありません。

 

代休は別規定にするのがおすすめ

一方、代休については実施するとなると、運用面で注意すべき点が少なくありません。

そのため、もしも代休規定が必要な場合でも、休日規定に定めるのではなく別規定で定めるのが無難です。

 

 

2.6. 日曜日や国民の祝日との関係

記事の冒頭でも述べましたが、日常用語における休日では、日曜日や国民の祝日を指すことが少なくありません。

では、会社は日曜日や国民の祝日を、会社は必ずお休みにしないといけないかというと決してそんなことはなく、基本的には、いつを休日とするかは会社が業務との兼ね合いで決めてしまって構わないものです。代表的な例でいうと、 不動産業の場合、週末がかき入れ時なこともあり、水曜日をお休みとすることが多いですよね。

ただし、就業規則に国民の祝日を休日にするとしていたにもかかわらず、後になってこうした規定を削除する場合、労働条件の不利益変更となる可能性があります。なので、業務の兼ね合いで決めてしまっていいといっても、会社の都合でコロコロと変えられるわけではないので注意が必要です。

 

3. 就業規則「休日」の規定例

3.1. 基本となる規定例

第○条(休日)

  1. 休日は次の通りとする。
    ①日曜日
    ②夏季休暇(   月  日 ~  月  日)
    ③年末年始休暇( 12月  日 ~ 1月  日)
    ④その他会社の年間カレンダーで定める日
  2. 法定休日は日曜日とする。
  3. 業務の都合により会社が必要と認める場合は、あらかじめ1項の休日を他の日と振り替えることがある。

 

3.2. 規定の変更例

法定休日を特定しない場合

第○条(休日)

  1. 休日は次の通りとする。
    ①日曜日
    ②夏季休暇(   月  日 ~  月  日)
    ③年末年始休暇( 12月  日 ~ 1月  日)
    ④その他会社の年間カレンダーで定める日
  2. 前項の休日のうち、法定休日を上回る休日は所定休日とする。
  3. 業務の都合により会社が必要と認める場合は、あらかじめ1項の休日を他の日と振り替えることがある。

 

4. その他

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4.3. その他の就業規則作成のポイントと規定例

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社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士(登録番号 第23130006号)。社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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