安全衛生教育等の一部を除き、会社が労働者に対し教育訓練を行わせなければならないという法律はありません。
しかし、会社が労働者を雇用し、業務を行っていく上で、教育訓練をまったく行わない、ということはあり得ないでしょう。
この記事では、教育訓練の条文作成のポイントについて解説を行っていきます。
この記事の目次
1. 法令から見た「教育訓練」のポイント
1.1. 教育訓練を命ずる権利
OJTとOffJT
会社が行う教育訓練には業務の過程で行われるOJT(On the job traning)と、職場から離れた場所・時間に行われるOff-JT(Off the job traning)があります。
OJTについては、業務中に行われるものである上、業務と関係のない内容の教育が行われることはまずありません。
そのため、会社が教育訓練を命ずる権利があるのは明白であり、労働者にこれを受ける義務があることもまた明白です。
問題はOff-JTです。
業務命令として行うOff-JT
Off-JTについても、基本的には会社に教育訓練を命ずる権利はあります。
ただし、いかなる内容の教育訓練であってもそうかというと、そういうわけではなく、以下に該当する場合は、会社の教育訓練を命ずる権利の濫用とみなされます。
- 内容が業務遂行と関係のないもの(一般教養・文化・趣味の教育、思想信条教育)
- 態様、方法、期間が相当でないもの(過度の精神的・肉体的苦痛を伴うもの)
- 法令に抵触するもの
また、その内容や実施場所などが労働契約上予定されていないと認められるものについては、労働者の同意を得ないと実施できません。
1.2. 教育訓練中の時間は労働時間か
OJT中は業務中に行われるものなので、OJT中の時間が労働時間であることは明らかでしょう。
Off-JTについても、会社の命令によりその参加が義務づけられているものについては労働時間となるため、所定時間外や休日にこれを行う場合は時間外手当等が発生するため注意火が強うです。
一方で、参加が任意のものについては労働時間には当たりません。(暗黙の強制がある場合は除く)
2. 「教育訓練」条文の必要性
労働者の教育訓練に関する項目は就業規則の相対的必要記載事項に当たります。
日本の会社の場合、計画やカリキュラムに則った教育、というものを行う会社は多くないかもしれませんが、OJTの形で教育訓練が行う会社は多いと思われるので、基本的には記載は必須となります。
3. 「教育訓練」条文作成のポイント
3.1. 基本的には最低限のものでOK
教育訓練の内容については、そのときどきによって変わる可能性があり、就業規則であまりガチガチに詳細を定めすぎてしまうと運用上支障が出る可能性もあります。
そのため、記事の最後の規定例のように最低限のことだけを定めておき、詳細は別途内規やマニュアル等に定めておくのが良いでしょう。
3.2. 「研修」条文を定めるか
業務に直接関係のある研修であれば、それは当然に労働契約に含まれると考えられ、就業規則に定めがなくても行うことは可能と考えられます。
しかし、そうではない一般教養等に関する研修については、就業規則に定めがないと、その都度、個々の労働者の同意を得る必要がでてきます。
また、合宿研修については、出張と研修が合わさったものと考えられるため、両者の規定が定められている分には、特別の定めがなくても命令することが可能と考えられますが、合宿研修中の外出や外泊を禁止する場合は、その旨を規定で定めておく必要があります。
3.3. 派遣許可や助成金申請の場合、追記が必要な場合も
派遣許可申請や助成金申請などを行う際、その目的に合った教育訓練の条文が必要となる場合があります。
例えば、派遣許可申請の場合、「派遣労働者に対して教育訓練を実施する旨及び教育訓練の受講時間を労働時間として扱い、相当する賃金を支払うことを原則とする旨を規定した部分」を提出書類と求めているため、この要件を満たす就業規則を定め、その通りにうんようをおこなっていくひt
4. 就業規則「教育訓練」の規定例
第○条(教育訓練)
- 会社は、業務に必要な知識、技能を高め、資質の向上を図るため、従業員に対し、必要な教育訓練を行う。
- 従業員は、会社から教育訓練を受講するよう指示された場合には、特段の事由がない限り、これを受けなければならない。
5. 規定の変更例
5.1. [条文追加]業務と直接関係のない研修や合宿研修がある場合
第○条(研修)
- 会社は、従業員に対し、一般教養等を含む研修を命じることがある。
- 会社は、従業員に対し、合宿研修を命じることがある。本合宿期間については外出および外泊を禁止する。
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