就業規則の「表彰」条文の作成のポイントと規定例

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就業規則の「表彰」条文の作成のポイントと規定例

 

会社に貢献してくれた社員を表彰したい、社員に頑張ってもらうために表彰制度を設けたい、表彰制度を設ける理由は会社によって様々です。

また、法律に定めのない部分なので、会社がそのルールを自由に定められることもおり、会社の個性が出やすい制度ともいえます。

この記事では、そんな表彰制度を設ける際の、就業規則上の注意点について解説していきます。

 

1. 法令から見た「表彰」のポイント

1.1. 法律上の義務ではない

会社に表彰制度を設けることは法律上の義務ではありません。

そのため、表彰制度を設けるかどうかは会社の裁量となります。

 

 

2. 「表彰」条文の必要性

表彰は、就業規則の相対的必要記載事項となります。

そのため、労働者の表彰制度がある会社については、就業規則への表彰条文の記載は必須となります。

一方、労働者の表彰制度がない会社については定める必要はありません。

 

3. 「表彰」条文作成のポイント

3.1. 表彰を設ける理由

法律上の義務ではないにもかかわらず、多くの会社で表彰制度を設けているのはなぜか、といえば、その理由は会社によって様々です。

心情的な会社として功労があったものに対して何かしてあげたい、という気持ちから、表彰制度を設ける場合もあれば、労働者のモチベーションやモラールの向上を期待する場合もあります。

いずれにせよ、ただ漫然と表彰を行っても、労働者側がそれに応えてくれるとは限らないので、きちんと目的をもって、それに合わせた表彰事由を定めるべきでしょう。

 

3.2. 表彰制度をなくす場合、労働条件の不利益変更となることも

金一封や副賞を贈呈している場合は特に注意

表彰制度を、後になってなくすという場合、労働条件の不利益変更となる可能性があります。

特に、表彰の際に金一封や副賞を授与している場合、そうした贈呈がなくなるので、その可能性は高まります。

一方、上記のような表彰の特典については、必ずしも就業規則等でルール化されているわけではないので、問題ないと考える人もいるでしょう。

しかし、仮に就業規則等でルール化されていなくても、それが「労使慣行」として認められる場合、それを労働者に不利な形で変更することは、労働条件の不利益変更となります。

 

労使慣行が成立する要件

上記の労使慣行が成立するには以下の4つの要件をすべて満たす必要があるとされています。

①長期にわたり反復継続されてきたこと、

②労使双方が慣例に対して規範意識を持って従ってきたこと

③事実上の行為準則として機能していること

④当事者が明示的にこれを排除していないこと

労使慣行の成立とその改廃及び就業規則との関係(出典:戸谷義治 琉球大学学術リポジトリ リンク先PDF)

なお、上記の①から④の要件を満たしていたとしても、労働基準法等に違反する場合、その効力は否定されます。

 

 

4. 就業規則「表彰」の規定例

第○条(表彰)

  1. 従業員が次の各号のいずれかに該当する場合には、その都度審査の上、表彰する。
    ① 業務上有益な創意工夫、改善を行い、会社の運営に貢献したとき
    ② 長年にわたって誠実に勤務し、その成績が優秀で他の模範となるとき
    ③ 事故、災害等を未然に防ぎ、または非常事態に際し適切に対応し、被害を最小限にとどめるなど特に功労があったとき
    ④ 社会的功績があり、会社および従業員の名誉となったとき
    ⑤ そのほか前各号に準ずる功労が認められたとき
  2. 表彰は、表彰に該当する事由がある度その都度行う。

 

5. 規定の変更例

5.1. 表彰がない会社の場合

 (条文を削除。また、他の規定等に表彰等が書かれている場合はそれらも削除)

 

 

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7. その他の就業規則作成のポイントと規定例

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社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士(登録番号 第23130006号)。社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。