1. A9 1年の総労働時間の総枠が増えるほか、残業代の単価が変わる場合があります
1.1. 1年単位の変形労働時間制の総労働時間の枠が増える
1年単位の変形労働時間制の場合、総労働時間の総枠は以下の計算式のように、歴日数で見ます。
よって、うるう年でない通常の年は
が、1年の総労働時間となります。労働時間を変形させる場合はこの2085時間の枠に収まるよう変形ささせる必要があります。
一方のうるう年の場合、歴日数が1日増えるため、
となり総労働時間の総枠が6時間増えます。
1.2. 1年が1日増えた分を労働日とするか休日とするかで残業単価が変わってくる可能性
これは1年単位の変形労働時間制に限りませんが、うるう年に合わせてその年の所定労働時間の総労働時間を増やす場合、残業単価が変わってきます。
例えば、うるう年とそうでない年で労働日数を1日増やす場合がこれにあたります。逆に、増えた分の日数を休日に当てる場合は、残業単価のことを考える必要はありません。
1.3. 残業単価の計算
残業単価とは、割増賃金を計算するために、日給制や月給制の給与(割増賃金に含めない給与を除く)を時給に直したものをいいます。
そのため、月給制の場合、残業単価を計算するには、1か月の給与を月の所定労働時間で割る必要があるのですが、ただ、月の所定労働時間は、曜日や休日の関係で月ごとにバラつきがあるのが普通です。
そこで、給与計算においては毎月の所定労働時間の平均、すなわち月平均所定労働時間数を用いて、残業単価を算定します。
この月平均所定労働時間数は「年間平均の 1 カ月あたりの所定労働時間数」で求められ、例えば、年間の所定労働時間の総労働時間数が2076時間の場合、
が、月平均所定労働時間数となります。
1.4. うるう年は年間の総労働時間が増える一方で単価も減る
うるう年に労働日数が増やす場合、当然、月平均所定労働時間が変わってくるため残業単価も変わってきます。
ただ、変わるといっても、月平均所定労働時間数の増加は残業単価計算の分母の増加となるため、結果、給与や労働時間の条件が同じなら残業単価は下がります。
そのため、うるう年以外の基準でうるう年も時間外手当を支払っている場合、(賃金計算の正確さはともかく)賃金未払いの心配はまずありません(本来支払うべき額よりも多く支払っていることになるため)。
一方、うるう年はうるう年で残業単価をきちんと調整する(変更する)という会社は、うるう年とうるう年以外で残業単価の計算を間違えないよう気をつけないといけません。
1.5. 労働日数
1年単位の変形労働時間制では、1年あたりの所定労働日数の限度を280日と定めています。
うるう年の場合もこの定めに変更はないので、1日の所定労働時間が短めだけど、多くの日数働かせる、という労働条件の会社は注意が必要です。