1. A3 事業場の規模によってどちらを選任しなければならないかは変わりますが、基本的にはどちらも労働者の健康確保を目的に選任される人となります
1.1. 衛生管理者とは
衛生管理者とは労働者の健康確保を目的に、従業員の数が50人以上の事業場で選任が義務づけられているものです。
一方、衛生推進者は選任の目的こそ同じですが、10人以上50人未満の事業場で選任が義務づけられています。
1.2. 衛生管理者の資格
衛生管理者は誰でもなれるわけではなく、以下のいずれかの資格を持つものから選任しなければなりません。
- 第1種衛生管理者免許を持つもの
- 第2種衛生管理者免許を持つもの(屋外・工業的業種の場合は不可※)
- 衛生工学衛生管理者免許を持つもの
- 医師
- 歯科医師
- 労働衛生コンサルタント
衛生推進者と違い、実務経験だけではその資格が満たせないので注意が必要です。
また、衛生管理者は基本的にその事業場に専属(その会社のみに所属しているということ)である必要があります。
そのため、開業の医師や歯科医師を選任することはできません。
1.3. 衛生管理者を複数選任する必要がある場合
また、事業場の規模によっては、以下の表のように複数の衛生管理者を選任しなければなりません。
事業場の規模(常時使用する労働者数) | 衛生管理者数 |
50人~200人 | 1人以上 |
201人~500人 | 2人以上 |
501人~1000人 | 3人以上 |
1001人~2000人 | 4人以上 |
2001人~3000人 | 5人以上 |
3001人~ | 6人以上 |
さきほど、衛生管理者は専属である必要があると書きましたが、複数の衛生管理者がいる場合で、その中に労働衛生コンサルタントが含まれる場合は、その労働衛生コンサルタント1人に限り専属不要となります。
ただし、衛生管理者に労働衛生コンサルタントが複数いたとしても、専属不要なのはそのうちの1人だけとなります。
1.4. 専任の衛生管理者が必要な場合
専任とは「専ら、その職務のみに、勤務時間を費やすこと」をいいます(一方、専属は「その会社のみに所属しているということ」をいう)。
衛生管理者に関しては、以下の条件に当てはまる場合、専任の衛生管理者を選任する必要があります。
専任の衛生管理者が必要な事業場の規模 | 専任が必要な衛生管理者の数 |
常時1000人を超える労働者を使用する事業場 | 衛生管理者のうち、1人以上を専任とする |
常時500人を超える労働者を使用する事業場で坑内労働
又は 一定の有害な業務に常時30人以上従事させる事業場 |
1人以上を専任とする |
常時500人を超える労働者を使用する事業場で坑内労働
又は 特に有害な一定の業務に常時30人以上従事させる事業場 |
上と同じ。
さらに、衛生管理者のうち1人を衛生工学衛生管理者免許を持った者から選任 |
1.5. 衛生管理者の職務
法律上、特にこれをしないといけない、といった義務のなかった衛生推進者と違い、衛生管理者には業務としてこれをしないといけない、と法律で決められているものがあります。
- 総括安全衛生管理者が統括すべき業務のうち衛生に関する技術的事項の管理
- 少なくとも毎週1回の作業場の巡視
2.は説明不要かと思いますが、1.については具体的に以下の通りとなります。
- 健康に異常のある者の発見及び処置
- 作業環境の衛生上の調査
- 作業条件、施設等の衛生上の改善
- 労働衛生保護具、救急用具等の点検及び整備
- 衛生教育、健康相談その他労働者の健康保持に必要な事項
- 労働者の負傷及び疾病、それによる死亡、欠勤及び移動に関する統計の作成
- その事業の労働者が行なう作業が他の事業の労働者が行なう作業と同一の場所において行われる場合における衛生に関し必要な措置
- その他衛生日誌の記載等職務上の記録の整備等
- 安全衛生に関する方針の表明に関すること。
- 労働安全衛生法第28条の2第1項又は第57条の3第1項及び第2項の危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること。
- 安全衛生に関する計画の作成、実施、評価及び改善に関すること。
1.6. 衛生管理者選任時は監督署に報告書を提出する必要あり
衛生管理者は専任すべき事由が発生した日から14日以内に選任しなければなりません。
また、衛生管理者を選任した後は、遅滞なく、事業場管轄の労働基準監督署に報告書を提出する必要があります。
その他、衛生管理者が旅行や疾病等で職務を行うことができない場合は代理者を選任しなければなりません。