労働者派遣

協定対象派遣労働者とは 2020年4月に施行目前の「派遣労働者の同一労働同一賃金」の解説⑤ 

2019年11月25日

労使協定方式を中心とする派遣労働者の同一労働同一賃金の解説は④で終わり、としたはずだったんですが、よくよく考えると「協定対象派遣労働者」のことを解説してなかったので、今回はその解説。

 

1. 協定対象派遣労働者とは

派遣労働者の同一労働同一賃金で労使協定方式を利用する場合、この労使協定の対象となる派遣労働者のことを「協定対象派遣労働者」と呼びます。

過去の解説でも述べたとおり、2020年4月の法改正後は、多くの人材派遣会社が労使協定方式を活用すると予想されるので、必然的に多くの派遣労働者は「協定対象派遣労働者」になることが予想されます。

 

2. 協定対象派遣労働者に対する派遣元・派遣先の義務

協定対象派遣労働者については、労使協定で定めた賃金その他の待遇について、会社がそれを守っていく必要があるほか、それ以外にも派遣元及び派遣先が義務として行わなければならないことが、以下のとおり法律等で追加されているので注意が必要です。

 

2.1. 労働者派遣契約への記載義務

ここでいう労働者派遣契約とは、派遣元と派遣先が結ぶものをいいます(というか、法律上は派遣契約といったらこっち)。

労働者派遣契約を結ぶ際の記載事項については、省令の改正で「派遣労働者が従事する業務の責任の程度」と「協定対象派遣労働者に限るか否かの別」が追加されます。

つまり、労働者派遣契約を結ぶ際は、労働者を派遣する際に派遣先均等・均衡方式の派遣労働者を含めて派遣するのか、労使協定方式の派遣労働者(協定対象派遣労働者)だけを派遣するのか、を決める必要があるわけです。

また、記載事項は「協定対象派遣労働者に限るかどうか」なので、派遣元に協定対象派遣労働者がいない場合も、契約書に記載する必要があります。

 

2.2. 派遣元の派遣先への通知義務

派遣元の事業主は労働者派遣を行う際、法令で定められた事項を派遣先に通知する義務がありますが、法改正後は「協定対象派遣労働者であるか否かの別」についても派遣先に通知する必要があります。

こちらは、派遣元に協定対象派遣労働者がいない場合でも記載する必要があります。

 

2.3. 派遣元管理台帳

法改正後は、派遣元管理台帳に協定対象派遣労働者であるか否かの別を追加する必要があります。

派遣元に協定対象派遣労働者がいないでも記載する必要があります。

 

2.4. 派遣先管理台帳

法改正後は、派遣先管理台帳に協定対象派遣労働者であるか否かの別を追加する必要があります。

派遣先に協定対象派遣労働者が派遣されていない場合でも記載する必要があります。

 

2.5. 事業報告書

年に一度の派遣の事業報告において、派遣元は職種ごとの人数及び職種ごとの賃金額の平均額を報告する必要があります。

改正法施行前なのではっきりとしたことは言えませんが、おそらく事業報告書に該当項目が追加されるはずです。

また、事業報告の際は労使協定方式の労使協定を添付する必要がある点にも注意が必要です。

 

2.6. 協定対象派遣労働者への明示・説明義務等

派遣元は、派遣労働者の雇入れ時、労使協定方式の対象となる派遣労働者であるか否かについて明示しなければなりません。労使協定方式の対象となる場合、その労使協定の終期についても明示する必要があります。

また、協定対象派遣労働者から、労使協定で定めたの賃金その他待遇についての説明の求めがあった際も、その内容について説明を行う必要があります。

 

以上となります。

細かい部分の変更が多いですが、ミスのないよう気をつけたいところです。

 

「派遣労働者の同一労働同一賃金」記事まとめ

2020年4月に施行目前の「派遣労働者の同一労働同一賃金」を1から解説①

労使協定方式のひな形とともに解説 2020年4月に施行目前の「派遣労働者の同一労働同一賃金」の解説② 

労使協定方式の賃金基準の求め方 2020年4月に施行目前の「派遣労働者の同一労働同一賃金」の③ 

労使協定方式の労使協定の賃金部分を解説 2020年4月に施行目前の「派遣労働者の同一労働同一賃金」の解説④ 

協定対象派遣労働者とは 2020年4月に施行目前の「派遣労働者の同一労働同一賃金」の解説⑤

派遣労働者の同一労働同一賃金を目指す労働者派遣法の改正の概要(施行は平成32年(2020年)予定)

同一労働同一賃金ガイドラインにみる「労働者派遣」について

 

今日のあとがき

このブログ、一応、それなりにアクセスがあることもあって、ときどき、被害に遭います。

一番酷かったのは、同業者に内容をまるっとパクられた件ですが、まあ、これは話が通じるだけマシ。

どう対応すればいいかわからない、という意味で困ったのは、海外のサイトからこのサイトに大量にリンクを付けられてしまったという件。

基本的にサイトのリンクが他のサイトに貼られるというのは悪いことではないのですが、貼る方のサイトの質が悪いと、SEO上悪影響が出ます。

結局、Googleのサーチコンソールからバックリンクの否認という対応をしたのですが、つい最近になってまたも同じことがやられていることが発覚し、これまた対応。

ほんと勘弁してほしいです。

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士(登録番号 第23130006号)。社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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