会期末が近づいている2019年度の通常国会ですが、昨年ほどではないにせよ人事労務に関する法改正があるので、今回はそれらをまとめてチェックしておきましょう。
この記事の目次
1. 1.健康保険法等の改正
1.1. マイナンバーカードを保険証の代わりに
保健医療の関係で一番大きな改正は、マイナンバーカードを保険証の代わりとすることができるようになる、という点です。
健康保険の保険証の番号に関してはこれまで、会社が変わるごとに新しい番号が発行されていました。
しかし、改正後は被保険者個々に健康保険の番号を割り振る方式に変わります。このため、上記のようにマイナンバーカードと連携することが可能となるようです。
こちらの施行は来年4月から2年の範囲内となっています。
1.2. 被扶養者の国内居住要件を追加
他の改正での注目点は、被扶養者の要件に日本国内に住所を有することが要件として追加されます。
ただし、留学や海外赴任への同行など、将来的に再び日本で生活する可能性が高いとされる場合はこの限りではないとされており、詳しくは省令で定められる予定です。
こちらの施行は来年4月からとなります。
その他、健康保険に関する法改正の概要についてはこちらの資料をどうぞ。
医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正について(出典:第118回社会保障審議会医療保険部会)
2. 2.女性活躍推進法の改正
女性活躍推進法では、常用労働者の数が301人以上の事業主に対し、一般事業主行動計画の策定や公表等を義務づけています。
今回の改正では、この一般事業主行動計画の策定義務が課される事業主の範囲が拡大され、「常用労働者数101人以上300人以下」の事業主にも、行動計画の策定義務等が課されます。
また、301人以上の事業主については、現在1項目以上の公表が求められている情報公表項目について、以下のように
- 職業生活に関する機会の提供に関する実績
- 職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績
2つに区分し、各区分で1項目ずつの公表が新たに義務づけられます。
こちらの施行は改正法公布後から3年以内の政令で定める日となります(公布日は令和元年6月5日)。
その他、法改正の概要はこちらから。
女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案の概要(出典:厚生労働省 第198回国会(常会)提出法律案)
3. 3.パワハラ対策の強化
労働施策総合推進法の改正により、事業主に対してパワハラ防止措置の実施が義務化されました。
これにより、事業主はパワハラ防止のための雇用管理上の義務として、被害者からの相談体制の整備等が義務づけられるほか、相談をしてきた者に対して不利益な取扱いをすることが禁止されます。
詳細については今後、厚生労働省が指針を出すことになっていますが、現在のセクハラやマタハラ等と同等の対策が必要になることが予想されます。
相談者に対する不利益取扱いの禁止はセクハラやマタハラ等も同様のことが規定される他、違反した場合には公表の対象とされることも新たに定められました。
パワハラ防止措置の義務化は改正法公布から3年以内、それ以外の不利益取扱いの禁止等については公布日から1年以内の政令で定める日となります(公布日は令和元年6月5日)。
その他、法改正の概要はこちらから。
女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案の概要(出典:厚生労働省 第198回国会(常会)提出法律案)
4. 4.障害者雇用安定法の改正
今回の障害者雇用安定法の改正については、昨年問題になった「国の機関の障害者雇用対策」がメインです。
労務管理上、会社に関係ありそうな改正では、法定雇用率の計算に含めない労働時間20時間未満の障害者を雇用した場合の助成金創設や、障害者雇用をしている優良な事業主を認定する制度が創設などがあります。
その他、法改正の概要はこちらから。
障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案の概要(出典:厚生労働省 第198回国会(常会)提出法律案)
以上です。
昨年の改正と比較すると、今すぐ対応しなければならない、というような改正はあまりありませんが、きちんと押さえておきたいところです。