この記事の目次
1. 働き方改革法の施行はもう目前
昨年6月に成立し、今年(2019年)の4月より順次施行される働き方改革法ですが、施行日は制度や企業規模によってばらつきがあるほか、経過措置や適用猶予のあるものもあります。
そのため、今回は働き方改革法の各制度の施行日をまとめておきたいと思います。
2. 時間外労働の上限規制
2.1. 原則は今年の4月から
時間外労働の上限規制は大企業では2019年4月1日、中小企業では2020年4月1日より始まります。
ただし、以下のような経過措置があるため、ぴったし4月1日から始まるところは意外と少ないのではと思われます。
2.2. 経過措置あり
時間外労働の上限規制は36協定の締結を前提とした制度です。
そして、現在締結している36協定の有効期間によっては、施行日をまたいでいることも十分考えられます。
このような場合、経過措置として、その36協定が法改正後の内容を満たしていなくても有効とされ、その有効期間が終了するまでは法改正前の要件を満たしていれば違法とはなりません。
逆に言うと、時間外労働の上限規制の適用は、その有効期間が施行日以降の期間のみを含む36協定の期間から開始されるということです。
そのため、36協定の起算日が4月の場合と3月の場合とでは、施行までにかなりの時間差があることになります。
2.3. 適用猶予となる事業及び業種
工作物の建設等の事業、自動車の運転の業務、医業に従事する医師、鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造の事業においては、2024年3月31日まで時間外労働の上限規制の適用が猶予されます(砂糖製造の事業については、一部項目は施行日から適用あり)。
つまり、適用猶予となる事業及び業種については2024年4月1日より上限規制が開始されるわけです。
ただし、適用猶予となる事業及び業種については適用後の扱いについても特例があったりします(長くなるので今回は省略)。
2.4. 派遣元は注意が必要
派遣元となる事業場については適用の開始時期が派遣先依存となるため、派遣先の事業規模や、事業及び業種によって適用の開始時期が以下の通り異なります。
- 大企業に派遣する場合は2019年4月1日以降の36協定の有効期間から
- 中小企業に派遣する場合は2020年4月1日以降の36協定の有効期間から
- 適用猶予となる事業及び業種に派遣する場合は2024年4月1日以降の36協定の有効期間から
3. 年次有給休暇の年5日の取得義務
3.1. 原則は今年の4月から。ただし、経過措置あり
年5日の年次有給休暇の取得義務については、その企業規模にかかわらず2019年4月1日より施行されます。
ただし、経過措置として、施行日以降最初に迎える基準日(年次有給休暇の付与日)までは適用が猶予されます。
つまり、実際に年5日の取得義務が必要となるのは施行日以降最初の基準日からとなるわけです。
そのため、労働者によって「年5日」の1年が異なる可能性があるので注意が必要です。
4. 月60時間を超える場合の割増率
時間外労働が月60時間を超えた場合、その割増率を通常の2.5割増以上から5割増し以上にしなければなりません。
こちらについて大企業ではすでに導入済みですが、中小企業にはこれまで適用が猶予されていました。
しかし、今回の法改正でこの適用猶予措置は廃止され2023年4月1日から全ての事業場で適用が開始されます。
5. フレックスタイム制、高プロなど、その他労働基準法の改正
フレックスタイム制の改正、特定高度専門業務・成果型労働性(高度プロフェッショナル制度)などに関する労働基準法の改正については、企業規模にかかわらず2019年4月1日より施行されます。
6. 安全衛生法等の改正
医師の面接指導、産業医に関する役割の強化、さらには労働時間把握の義務化が盛り込まれた安全衛生法の改正ですが、こちらも企業規模にかかわらず2019年4月1日より施行されます。
また、労働時間等の設定の改善に関する特別措置法の改正についても、企業規模にかかわらず2019年4月1日より施行されます。
7. 同一労働同一賃金
7.1. 短時間・有期雇用労働法の改正
短時間・有期雇用労働法とはいわゆるパートタイム労働法のことです。
今回の改正で短時間労働者だけでなく有期雇用労働者もその規制の対象となったことから、正式名称及び通称の変更が行われています。
名称の変更だけでなく、正規と非正規の均衡待遇の要となる法8条に関する改正がいくつか行われています。
こちらの改正については大企業は2020年4月1日より、中小企業については2021年4月1日より施行されます。
7.2. 労働者派遣法の改正
派遣労働者と派遣先の労働者との格差是正を目的とした労働者派遣法の改正。
こちらについては、企業規模にかかわらず2020年4月1日より施行されます。
以上です。
繰り返しになりますが企業規模や経過措置によってズレがある点に注意が必要です。