今国会での成立が予定されている一方で、どんどん雲行きが怪しくなる働き方改革法案ですが、一度この法案が国会を通ると、会社の人事労務関係者はこの対応をすることになります。
そして、法改正につきものなのが就業規則の改正です。
今回は働き方改革法案成立によって、就業規則を変更する可能性のある箇所について書き出してみたいと思います。
この記事の目次
1. 働き方改革によって変わる法律
まず、大前提として今回の働き方改革法案で改正されるのは以下の8つ。
- 労働基準法
- じん肺法
- 雇用対策法
- 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法
- 労働安全衛生法
- パートタイム労働法
- 労働契約法
- 労働者派遣法
このうち、労務管理に大きな影響があるのは言うまでもなく1の労働基準法で、それ以外だと5と6(派遣労働者がいる場合は8も)の改正も影響が大きいです。
では、就業規則への影響はどうでしょうか。
2. 時間外労働の上限規制と就業規則
まず、気になるのが「時間外労働の上限規制」に関する改正による就業規則への影響ですが、実は「時間外労働の上限規制」が就業規則に影響を与える部分はほとんどありません。
というのも、「時間外労働の上限規制」は基本的に時間外・休日労働に関する協定、いわゆる「36協定」が規制の中心にあるためです。
なので、「時間外労働の上限規制」への対応は就業規則の改正ではなく、「36協定」の改定が中心となるはずです。
ただし、様々な理由で法定休日を特定していない場合は、これを機会に就業規則で特定しておいた方が労働時間の管理がしやすくなるはずです。
3. その他労働基準法と就業規則
一方、時間外労働の上限規制と直接関係のない労働基準法の改正事項については、就業規則への影響は小さくありません。
まず、中小企業において適用が猶予されてきた「一月の時間外労働が60時間を超える場合の割増率5割」という規定が、今後中小企業にも適用されることになります。
なので、施行日までには、それに合わせたものに変えておく必要があります。
また、年次有給休暇の強制取得についても今回の法案に含まれているため、改正後はそれに合わせたものに変える必要があります。
その他、フレックタイム制の改正や特定高度専門業務・成果型労働制の新設などがありますが、これらも就業規則の変更ではなく労使協定や労使委員会の決議で対応する必要のあるものが多いので、就業規則への影響はあまりありません。
有給の強制取得や残業割増率5割など、2017年以降に改正されるはずの改正労働基準法を解説
4. 安全衛生法と就業規則
次に安全衛生法の改正ですが、今回の法案の改正内容は「医師の面接指導」および「産業医の役割強化」となっています。
これらについても就業規則を変更するほどの内容はほとんどありません。
ただ「医師の面接指導」に関しては、「新技術、新商品等の研究開発の業務」に従事する労働者および「特定高度専門業務・成果型労働制」の対象労働者の面接指導は、労働者からの申出の有無にかかわらず会社および労働者の義務となっているため、確実な実施のため対象労働者のいる会社では就業規則にその旨をきちんと定めておいた方がいいかもしれません。
5. 同一労働同一賃金と就業規則
上の5,6,7は同一労働同一賃金に関連した法改正ですが、これらについては法改正によって就業規則を変えるというよりは、法改正後に正式なものが公表される予定の「同一労働同一賃金ガイドライン」の動向を見守る必要があります。
なぜなら、将来的には多くの会社でこの同一労働同一賃金ガイドライン案に沿う形での賃金制度改革が必要になるとみられており、制度改革の過程で、各会社の賃金規程の変更が必要になると思われるからです。
とはいえ、ガイドライン案だけではまだまだ曖昧な部分も多いので、世間や他社の動きを見ながら、慎重に進めるのも手かもしれません。
6. その他働き方改革と就業規則
法改正以外で改正が必要となりそうなのが副業・兼業に関する部分です。
すでに、副業・兼業を容認する内容を含むモデル就業規則が厚生労働省により公開されていますが、副業・兼業に関する問題点が何一つクリアになってない中でこれをそのまま利用するのはリスクが大きいと、個人的には感じています。
また、テレワークやインターバル規制に関しても導入するのであれば就業規則の改定は必要です。
どちらも導入による助成金もあるので、そうした助成金の受給を狙うのであれば、その条件に見合うものにするとより効率的かもしれません。