労働関連法令改正

法改正で企画業務型裁量労働制の業務拡大されるらしいけどそれってどんな業務?

2018年2月27日

厚生労働省の官僚がお馬鹿なことしてくれたおかげで、揺れている裁量労働制ですが今回の法改正の内容が争点になってないのはなんとも不毛な感じがしますね。

メディアでも言われているとおり、今回の働き方改革法案では裁量労働制の業務が拡大されます。

裁量労働制には専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制の2つがあり、一般的に利用されているのは専門業務型裁量労働制の方です(一般的といっても普及率はかなり低いですが)。

今回、業務が拡大されるのは専門業務型裁量労働制よりも利用されていない企画業務型裁量労働制の方です。

 

1. 企画業務型裁量労働制とは

企画業務型裁量労働制とは、以下の条件全てに該当する業務に関して、その事業場に設置された労使委員会で決議した時間、労働したものとみなすことができる制度です。

① 事業の運営に関する事項についての業務であること
② 企画、立案、調査及び分析の業務であること
③ 当該業務の性質上これを適切に遂行するためにはその遂行脳方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある業務であること
④ 当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務であること

ここでいう「事業」とは「自社」それも「本社」のような会社の中枢やそれに近い機能を備えた支社などを指します。

そうした自社での「企画、立案、調査及び分析の業務」が対象というわけですから、そうした業務に就ける労働者というのはかなり限られることは想像に難くなく、導入率が低いのもうなずけます。

人の生涯という長いスパンで見ても、このような業務に就く人が日本に何人いるのだろうと考えてしまうレベルです。

 

2. 法改正で追加される予定の業務

では、上記に加えて、企画業務型裁量労働制にどのような業務が増えるかというと、以下の通り。

  1. 事業の運営に関する事項について繰り返し、企画、立案、調査及び分析を主として行うとともに、これらの成果を活用し、当該事業の運営に関する事項の実施状況の把握及び評価を行う業務
  2. 法人である顧客の事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析を主として行うとともに、これらの成果を活用し、当該顧客に対して販売又は提供する商品又は役務を専ら当該顧客のために開発し、当該顧客に提案する業務(主として商品の販売又は役務の提供を行う事業場において当該業務を行う場合を除く。)

 

2.1. 1.PDCAを回す業務

1.が想定している業務とはPDCAを回す業務とされています。

原稿の企画業務型裁量労働制ではPDCAのうちP(計画)とC(評価)までしか裁量労働の対象ではありません。

しかし、1.の業務が追加されると、D(実行)とA(改善)も裁量労働として行うことができるようになりPDCA全てを裁量労働の対象にできるようになります。

ここでいう「事業」は法改正前と変わらないので、1.の具体的な業務としては「全社レベルの品質管理の取組計画を企画立案するとともに、当該計画に基づく調達や監査の改善を行い、各工場に展開するとともに、その過程で示された意見等をみて、さらなる改善の取組計画を企画立案する業務」とされています。

2.2. 2.ソリューション営業

一方の2.は一般に「課題解決型提案営業」や「ソリューション営業」と呼ばれるものを裁量労働の対象に加えるとするものです。

これは、商品を紹介して顧客に商品を選んでもらうという従来型の営業と異なり、営業自らが顧客の情報をより多く集め、それらの情報を分析し、そこから顧客の課題や不満等を探し、その課題の解決策を提案する営業形態をいいます。

よって、ルート営業のような従来の営業は裁量労働制の対象とはなりません。

 

以上です。

見てわかるとおり、1.にせよ2.にせよ、一般的な労働者の業務とはいえず、法改正で追加されたとしても対象となる労働者はそれほど多くないことは想像に難くありません。

そうした業務に就いてる人や今後就く予定のある人が騒ぐならともかく、なぜメディアが騒いでるのか不思議なレベルですね。

で、実は裁量労働制の法改正はこれだけではありません。

というか、長時間労働や過労死のこと騒ぐなら、こっちのことをもっと討論しろよ的な内容の改正があるので、これについてはまた明日解説します。

今日のあとがき

今回の法改正では新たな裁量労働制とも言える、特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度やホワイトカラー・エグゼンプションと呼ばれていたもの)が追加されます。

その追加も含めて「裁量労働制の業務拡大」といわれているようですが、話をシンプルにするため、今回の記事では現行のものに限定して解説しました(明日もその予定)。

特定高度専門業務・成果型労働制については過去の記事で解説しているので、知りたい方は以下をどうぞ。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士(登録番号 第23130006号)。社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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