今日は「退職証明書」について。
退職証明書とは、自社を退職した労働者が自社を退職していることを第三者に証明するためのもので、会社が退職した労働者に対して交付します。
ここでいう第三者とは他の会社と考えて差し支えありません。
何のために必要かと言えば、採用選考の際、そうした証明をほしがる会社があるからです。
なぜなら、転職先になるかもしれない会社からすると、退職証明書は履歴書と違い第三者によって書かれたもののため、簡単な身分確認ができます。また、前の会社を辞めたと言っておきながら本当は前の会社を退職していない、みたいな労働者を雇い入れることを避けることもできるといった利点があるからです。
ただ、実際には退職証明書を発行していない会社や、雇い入れの際に提出を求めない会社も少なくありません。
こうした対応は、法律上問題ないのでしょうか。
1. 退職証明書の交付は「労働者が請求した場合」
退職証明書の交付は労働基準法22条にて会社に交付が義務づけられていますが、交付しなければならないのは「労働者が請求した場合」に限られます。
(もちろん、会社が自発的に交付することは問題ありませんが、その場合、次項で解説する点に注意する必要があります)
一方、雇い入れの際に必ず退職証明書の提出を求めないといけないという規制はありません。
つまり、自社を退職した労働者が、採用面接等で退職証明書の提出を求めない他の会社にいく場合、会社が退職証明書を出す機会というのはほとんどないわけです。
採用面接等で退職証明書の提出を求めない会社というのは、中小規模の会社ほど多いと思われるため、結果、中小企業にとってはこの退職証明書はあまり馴染みのないものとなっています(普及具合は規模だけでなく、業種によっても異なりますが)。
2. 退職証明書のルール
そんな退職証明書ですが、証明書に記載する項目は以下の通りです。
- 使用期間
- 業務の種類
- その事業における地位
- 賃金
- 退職の事由(退職の理由が解雇の場合はその理由を含む)
ただし、注意が必要なのは、上記の項目に関しては、労働者が請求しないものについては、会社は記入してはいけない点。
例えば、前の会社で賃金をいくらもらっていたかを、労働者が次の会社に隠したいから書かなくていいという場合、記入してはいけません。
あるいは、労働者が退職理由が解雇ということは記入していいけど、解雇理由を書いてほしくないと請求した場合も、会社はそのようにしなければなりません。
とはいえ、現実問題としては、退職証明書を受け取る側の会社もあまりにその退職証明書の中身が空白だと、それはそれで怪しいと思うかもしれませんが。
ちなみに、労働者の退職証明書の請求権の時効は2年です。
こちらは厚生労働省が出しているモデル退職証明書ですが、辞めたことだけ証明するシンプルなものとなっています。
退職証明書(リンク先PDF)
主要様式ダウンロードコーナー(厚生労働省のページ。上記の用紙のWord形式のものや、パートタイマー向けの労働条件通知書等も置いてあります)
3. 社会保険は資格喪失証明書
以上が、労働基準法上の退職証明書の簡単な説明ですが、労働者の退職時、会社が交付するものは他にもあります。
代表的なのは雇用保険の離職票ですね。
雇用保険に加入していた労働者は離職票によって雇用保険の失業手当の手続きを行うことができます。
ただし、離職票発行の手続きは労働者が退職した後でしかできないため、退職日と労働者が離職票を受け取る日にはタイムラグが生じます。
また、社会保険では退職した労働者から資格喪失証明書の発行を求められることがあります。
これは健康保険から国民健康保険に移行する際に必要となる書類です。
よって、退職後、他の会社に就職したり、配偶者の扶養となる、あるいは、任意継続被保険者となる場合は不要ですが、そうでない場合は、労働者から交付の請求があると思われるので、きちんと準備しておいた方が良いでしょう。
健康保険 厚生年金保険 資格喪失証明書(PDFファイル)(参照:全国健康保険協会 沖縄支部)
今日のところは以上です。
今日のあとがき
厚生労働省がバカやってくれた裁量労働制ですが、最新の報道だと施行の延期が検討されているようです。
どうも既存の裁量労働制の改正部分だけでなく、新設される特定高度専門業務・成果型労働制についても施行が延期されるようです。
まあ、施行日が延期されるのは百歩譲るので、法案だけは早く通ってほしいと思う今日この頃ですよ、まったく。