労働関連法令改正

労働基準法改正で変わる「フレックスタイム制」の変更点を解説(2019年4月1日施行)

2017年9月13日

追記:2018年4月6日に提出された働き方改革法案の内容に合わせて一部内容を変更しました。

追記の追記:サイト内の記事のブラッシュアップの一環で、記事の内容を一部変更しました。

 

臨時国会で提出予定の働き方改革に関する法改正から。

「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」(諮問)(PDF:593KB)(参照:厚生労働省)

今日はフレックスタイム制の改正について。

これからフレックスタイム制の導入を考える人向けに、改正による変更点だけでなく、フレックスタイム制という制度自体の解説も一緒にしていきたいと思います。

 

1. 働き方改革よりも前に決まっていたフレックスタイム制の改正

先に割とどうでもいいことに触れておくと、フレックスタイム制の改正は、今年の3月に公表された「働き方改革実行計画案」に含まれるものではありません。

というのも、今回の労基法の改正は2年前から予定されていた(が結局、国会に提出されなかった)改正内容と、今回の働き方改革で改正が決まった内容が一緒になったものであり、フレックスタイム制の改正は前者に含まれるものだったからです。

この事実を知っている者からすると、このフレックスタイム制の改正を働き方改革に含めるのはちょっと違和感があります。

が、しかし、フレックスタイム制自体は、働き方改革のテーマの一つである労働者のワークライフバランスに寄与するのは間違いはありません。

 

2. フレックスタイム制とは

前置きが随分長くなりましたが、今回の改正でのフレックスタイム制の変更点について説明していきましょう。

フレックスタイム制の制度そのものの詳しい解説についてはこちらのページでしているので、フレックスタイム制がどういったものかについて知りたい場合はまずは下記の記事を参考にしていただければと思います。

フレックスタイム制とは? 導入のメリット・デメリットも解説

 

3. 法改正により変わること

今回の法改正で変わるのは、ずばり「清算期間の上限」です。

清算期間とはフレックスタイム制で、労働時間を柔軟に変形できる期間の単位で、法改正前はこの清算期間の上限は「1ヶ月」とされています。

これが、法改正により「3ヶ月」となります。

これに伴い「1ヶ月を超える清算期間」を定める場合、注意点が2つ生まれます(清算期間が「1ヶ月」以内の場合は現行通りです)。

 

3.1. 残業代

まず、残業代について。

「1ヶ月を超える清算期間」を定める場合、清算期間全体の労働時間とは別に、清算期間を1か月ごとに区分した期間(最後に1か月に満たない期間が出る場合は、その期間)の中で平均週50時間を超えた場合も時間外労働となり、割増賃金等の義務が発生します。

これは、3ヶ月の中で一部の期間に極端に労働時間が集中するようなことを防ぐための措置と考えられます。

つまり、「1ヶ月を超える清算期間」を定める場合、

  • 1か月ごとに区分した期間の中で平均週50時間超えていないか
  • 清算期間全体で法定労働時間の総枠を超えてないか

の2つの尺度で労働時間を管理する必要があります。

 

3.2. 労使協定

もう一つは、労使協定の提出義務について。

解説で、フレックスタイム制導入のための労使協定には監督署への提出義務はないと書きましたが、「1ヶ月を超える清算期間」を定める場合は提出する必要があるので注意が必要です。

 

追記:官報で協定届の様式が公表されています。そちらの紹介記事はこちら

公表された「1か月を超え3か月以内の清算期間のフレックスタイム制」の労使協定届

 

3.3. 清算期間中に入社・退社した場合

清算期間が1か月を超える場合で、清算期間よりも短い期間しか働かなかった労働者、すなわち中途入社した労働者や退社した労働者の時間外手当については、

「当該労働者を労働させた期間を平均し一週間当たり四十時間を超えて労働させた時間」

について、時間外手当等の義務が発生します。

法定労働時間の総枠等とは異なる計算方法となるので注意が必要です。

 

3.4. 完全週休二日制で所定労働時間が1日8時間の場合

完全週休二日制で1日の所定労働時間が8時間の事業場でフレックスタイム制を行う場合、曜日の関係で所定労働時間通りに働いているにもかかわらず法定労働時間の総枠を超えてしまうことがありました。

例えば、30日の月で土日が4日ずつしかないという場合、所定労働日数は22日のため、1か月の総労働時間は「8時間×22日=176時間」となる一方、30日の月の法定労働時間の総枠は「40時間×(30日÷7日)=171.4時間」となってしまいます。

こちらについては労使協定に一定の定めをすることでこの問題を解決できるとする条項が追加されています。

 

今日のところは以上です。

今日のあとがき

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士(登録番号 第23130006号)。社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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