労働時間を管理する上でタイムカードや勤怠管理ソフトを使っている会社というのは多いと思います。
しかし、そうした物がない場合、あるいは何かしらの理由で意図的に置いてない場合でも、労働時間の推察ができてしまう物があります。
それがパソコンのログ。
この記事の目次
1. パソコンのログとは
パソコンのログとは平たく言うとパソコンの内部に貯まる履歴や記録のことで、何日の何時何分に何をしたか、みたいな情報の集まりを言います。
Windowsでは電源のONーOFFなどの時間を、ログとして自動で記録する機能がOSについています。
実は、このログを利用すれば、例えば覚えのない時間に自分のPCが使われてないか、ある程度は確認することができます。
ある程度、なので、より高度なログ(労働時間中の労働者のPC上での行動をすべて記録するとか)を残したい場合は専用ソフトが必要です。
2. PCのログが労働時間と認められた判例も
で、このログが労働時間とどう関係あるかというと、会社のパソコンのオンオフというのは、基本的にはそのPCを使う労働者の出勤、退勤とリンクしていることが普通です。
そして、パソコンのログはパソコンのオンオフの時間も記録し、その内部に残します。
つまり、パソコンのログを調べれば、パソコンオンオフの時間からある程度の労働時間が推測できてしまうわけです。
実際、パソコンのログから「労働時間」を推測し、それを労働時間として認めた判例もあります(PE&HR事件 東京地裁H18.11.10判決)。
3. パソコンの電源のオンオフのログを確認する方法
3.1. Windows10での確認方法
では、PCのログを見るにはどうすれば良いのでしょうか。
本記事ではWindows10でのログの確認方法について解説していきます(他のOSでの確認については、7や8の入ったPCはもううちにないし、Macは守備範囲外なので行いません)。
まず、Windowsでお馴染みのスタートボタンにカーソルを合わせ右クリックをします。
すると、以下のようなテキストメニューが表示されるのでイベントビューアーをクリックします。
3.2. イベントビューアーを開く
イベントビューアーの画面がこちら。
電源のオンオフのログを確認するには、ウィンドウの左側にある「Windowsログ」の左側にある「>」をクリックします。
格納されていた項目が表示されるので「システム」をクリックします。
すると、Windowsのログがずらっと並びます。
上の画像では、機密情報や恥ずかしい情報があったら困るので、日付以外のところの大事なところは全部黒塗りにしてます。
ただ、この黒塗りを外したとしても、ログは英単語と数字で記述されているだけなので、普通の人が単にそれを見ただけでは、ログの内容はまずわからないと思います。
一応、以下のサイトでイベントIDの番号が、パソコン上のどのような動作を指しているか確認できるので興味のある方はこちらを。
3.3. オンオフのログだけ抽出
労働時間で重要なのは、パソコンの電源のオンオフだけです。そして、イベントビューアー画面からは、特定の必要な情報だけを上記のログから抽出し表示することができます。
そのためには、イベントビューアー右側のテキストメニューにある「現在のログをフィルター」をクリックします。
すると、以下のようなウィンドウが開きます。
電源のON-OFFのログを抽出するため、<すべてのイベントID>というところに、電源のON-OFFを表すイベントIDである「7001,7002」もしくは「7001-7002」を入力し「OK」をクリックします。
出てくるのがこちらの画面。わたしの仕事用のパソコンの、ここ最近の電源のオンオフの時刻がばっちり表示されます。
午前10時前に事務所に来て、19時から20時くらいまでのあいだにPCの電源をオフにして帰る、という生活をしているのがよくわかるのではないでしょうか。
4. 残すログの容量の変更や消去について
ログは残せる容量が決まっていますが、プロパティから変更ができます。
また、ログを消去することも可能で、消去の際に、消去するログをファイルとして残すこともできます。
5. 働き方改革ではパソコンのログで労働時間を把握することを推奨
働き方改革で、その内容の普及を政府が推進している「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、労働時間の把握の際の客観的な記録として、タイムカードやIDカードの他に「パソコンの使用時間の記録」、つまりパソコンのログでの確認を推奨しています。
しかし、パソコンのオンオフが必ずしも労働時間の始業・終業と一致しない以上、パソコンのログは客観的な記録ではあっても、正確な労働時間を記録するものにはなりえません。
言い換えると、パソコンのログをそのまま労働時間とされてしまうと、不正確な上に、会社にとって不利な判断の要因となり得るわけです。
このことから、労働者の労働時間の把握についてはパソコンのログ以外の客観的な方法を用意しておいたほうが得策といえます。
以上です。
「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」でも推奨されているからか、実際に、労働時間の把握が困難な場合に監督署がパソコンのログを使って労働時間を探ってくる、ということがあります。
だから、証拠隠滅のためにパソコンのログを操作したり消去する、というのは感心できませんが、ただ、労働者が嘘の労働時間を会社に報告してる場合もあります。
そうした場合のチェック方法として、パソコンのログを利用するのは1つの手段となり得るのではないでしょうか。