労務管理

内部告発と情報漏洩は違うという話と、解雇も視野に入る情報漏洩のラインについて

加計学園の問題で、義家弘介文科副大臣は、文書を漏洩させた者について国家公務員法違反(守秘義務違反)で処分する可能性を示唆したそうです。

その理由として「告発内容が法令違反に該当しない場合、非公知の行政運営上のプロセスを上司の許可無く外部に流出されることは、国家公務員法(違反)になる可能性がある」としています。

加計学園の問題は、最初に出てきた文書の真偽がどうあれ違法性はほぼないとされています(なにせ、この問題を積極的に追求している国会議員がそれを認めている)。

今回の問題は、違法性のない(百歩譲って薄い)国の情報(それも真偽不明)を、文部科学省の関係者の誰かが勝手にメディアあるいは野党に流したわけですから、それは単なる情報漏洩ですよね、という話。

だから、文科副大臣の発言も常識の範囲内なわけですが、この発言が朝日新聞の手にかかるとあら不思議。

加計問題の内部告発者、処分の可能性 義家副大臣が示唆

あのさー、あなたたちさー、内部告発の意味って知ってる? と言いたくなる見出し。

呆れてものも言えないので、今日は情報漏洩つながりで、労働者の情報漏洩の話。

 

1. 情報漏洩はなぜダメなのか

まず、基本的な話として、組織が秘密として管理している情報の漏洩は当然ながら、その組織を危機にさらします。

顧客情報が漏れればそこから顧客を取られる可能性があるし、国防情報が漏れれば他国の侵略を許すかもしれない。

だから、不正競争防止法では営業秘密や営業上のノウハウの盗用を禁止しているし、国家公務員法では国の情報を国家公務員が漏洩させることに刑罰を付けています。

加えて、日本では公益通報者保護法という法律によって「一定の基準を満たした告発でなければ内部告発者を保護しません」と定めてもいます。

保護しない、ということは、組織は情報を漏洩させた者を処分したり、賠償を求めることができるということですが、逆に言えば、きちんとした告発であればその人を守るといっているわけです。

公益通報者保護法については過去に詳しく解説しているのでそちらも。

岡山大学や大王製紙の事件で話題の内部告発者を守る公益通報者保護法とは?

 

 

2. 解雇が認められる情報漏洩とは

情報漏洩、特に故意にそれを行った労働者に関しては、通常は難しいとされる懲戒解雇も有効と認められやすい傾向にあります。

ただし、何でもかんでも有効になるわけではなく、司法の場での争いになった場合は以下の3つの点が重視されます。

  1. 企業が秘密として管理している(秘密管理性)
  2. 事業活動において重要な技術上又は営業上の情報(有用性)
  3. 公然と知られていない(非公知性)

このうち、特に重要なのは「1」ですが、これに関しては会社が「どのように管理していたか」も重要で、例えば、いくら重要と会社が主張しても鍵のないキャビネットに無造作に置かれている資料では、そんな扱いをしてるんだから「重要な秘密」ではないでしょ、と言われてしまう可能性があります。

また、社員がその情報を「秘密」と認識していたかも判断材料となり、「秘密」と会社からいわれていなかったり、「秘密」とパッと見てわかるような状態にない情報は「秘密」として認められない傾向があります。

逆に、秘密保持の就業規則の規定や誓約書などは、社員にその情報が「秘密」であることを認識させるのに非常に重要となるのです。

 

また、上記の3つの項目を満たしていたとしても、公益通報者保護法における内部告発に当たる情報漏洩の場合は解雇等の不利益取り扱いは認められないので注意が必要です。

 

以上は、在籍中の社員の話ですが、すでに退職した社員に関しては、退職時に誓約書を結ぶ、情報漏洩があった場合には退職金の返金を求める、損害賠償請求する、など対応が変わってくるので注意が必要です。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士(登録番号 第23130006号)。社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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