就業規則

厚生労働省のモデル就業規則ってぶっちゃけどう? 名古屋の社労士が本音で解説

2017年6月6日

今日は「禁断の」厚生労働省モデル就業規則の話をしたいと思います。

モデル就業規則について

1. 社労士がモデル就業規則を批判するのはリスクあり

なぜ厚生労働省のモデル就業規則を取り上げるのが「禁断」かといえば、もう一昨年になりますかね。

わたしの同業者が「鬱病にさせて会社を辞めさせろ」みたいなことをブログで書いて大炎上した件以降、全国の社労士をまとめる団体である全国社会保険労務士連合会や各都道府県の社労士会は、個々の社労士のネット上での情報発信にかなりピリピリしているわけですよ。

その流れで「社会保険料を安くできるよ」みたいな営業とか、「厚生労働省モデル就業規則」を悪く言うなどといった、社労士の品位に関わるような発信はやめろ、というお達しが出ているわけです。

できれば、そのお達しの中に「著作権に関わるから人の記事を丸々コピーすんな」みたいなお達しを入れてほしかったのですが、まあ、それはいいや。

先に言っとくけど、次、うちのブログをパクる不貞な輩が現れたら、マジで会に掛け合うつもりなんでそこんとこよろしく。

・・・とはいえ、どんなお達しが出ていようが、事実を言ってはいけないという決まりはないはずなので、今回は臆すことなく厚生労働省モデル就業規則について解説していこうかと思います。

 

2. モデル就業規則は割と優秀

さて、冒頭いきなり大きく出た割に、非常につまらない結論を先に言ってしまうと、厚生労働省モデル就業規則、別に悪くないっす。

おべっか使ってるとか、ビビってんのかとか、思われるかもしれませんが、遠回しにでも悪く言っといた方が当然、在野の社労士としては営業になるのであんまおべっか使う意味ってないんですよ。

 

2.1. 法律上必要な項目に漏れがない

では、どう悪くないかというと、まず、就業規則には絶対的必要記載事項と相対的必要記載事項という、法律上、就業規則作成する際に必ず入れないといけない項目に漏れがない点。

厚生労働省が作ってるんだから当然といえば当然ですが、これらが抜けてると監督署の調査でチェックが入ったときなどに是正の対象となるので、きちんと必要な項目が入っているというのは重要なのです。

また、年次有給休暇の日数や割増賃金の割増率など、数字が重要になるところも基本的に法定通りの数字が定められています。

なので、モデル就業規則を基に作成すれば、せっかく作成した就業規則の規定に漏れがあったり、規定があっても労働基準法の基準を満たしてない、基本的には起こらないはずです。

勝手に規定を変えて失敗とかしてない限りは、という前提条件はありますが。

 

3. モデル就業規則の欠点

3.1. 難点1:条文も解説も難しい

ただ、もちろん欠点もあります。

厚生労働省のモデル就業規則には親切なことに、各条文の解説が詳しく書いてあります。

実はこの解説が結構難しい。

難しいというか、普通に社労士試験の参考書と同じくらいのレベルのことが書いてあるので、ある程度知識がないと、パッと読んでパッと理解するのは難しいでしょう。

ただ、きちんと解説を読まないと会社によってアレンジが必要な部分を間違える可能性もあるので、注意が必要なのです。

 

3.2. 難点2:会社を守るための規定が手薄

また、法律上必要なことはきちんと書いてあるのですが、法律に書かれていることって結局、労働者を守るための規定がほとんどなわけです。

一方、就業規則の役割は、労働者の労働条件を定めると同時に、会社を守るために存在するわけですが、この会社を守るための規定がかなり手薄なのもモデル就業規則の欠点。

例えば、士業のような機密を多く扱うような業種が使うには、機密保持の規定を就業規則に入れておきたいわけですが、正直モデル就業規則の内容は十分なのものとはいえません。

あるいは、労働者のほとんどがマイカー通勤だから、通勤中の交通事故が怖い、と思ってもモデル就業規則にそれに答えるような規定もありません。

さらには、スマホやSNSはおろかネットに関する規定もないなど、適用されている法律は最新でも、それ以外の面では時代から置かれてしまっている部分があることも覚えておく必要があります。

なので、厚生労働省のモデル就業規則だけを基にすると、どうしてもアンバランスな就業規則になってしまいがちです。

 

4. モデル就業規則よりもウェブサイトの方が問題

4.1. 厚生労働省のサイトは迷路のように複雑

最後、これは別に何も気を遣う必要がないと思いますが、厚生労働省のサイト、これはもう最悪。

モデル就業規則が置いてあるのはこちらのページですが、まず、厚生労働省のサイトのトップページから行ける気がしない(行けないからGoogle先生頼み)。

また、せっかくたどり着いても、です。

 

4.2. 関連規定へのリンクもない

モデル就業規則はあるし、その内容も悪くない、けれども、就業規則って他にもあるわけですよ、パートタイマー就業規則とか、育児介護休業規定とか。

で、それらは他のページのどこかには確かにある。でも、モデル就業規則のページにリンクがない。

どうせ一緒に必要になるものなんだからリンクぐらい張っとけって話なんですよ。

ちなみに、モデル就業規則のページから、パートタイマー就業規則や育児介護休業規定のページに独力で行くのもほぼ不可能なので、こちらもGoogle先生頼み。

で、厚生労働省の本丸サイトは完全にスパゲッティになってる「のに」なのか「から」なのかはわかりませんが、関連サイトはポコポコできあがってくるのはなぜなんでしょうかね。

いずれにせよ、内容は悪くなくてもUIが酷いと誰も使ってくれない、そのことがわかってない厚生労働省のサイトの方が、モデル就業規則よりもよっぽど害悪だとわたしは思います。

 

今日のあとがき

その昔の大昔、まだ社労士始めて1年も経ってない頃に「ここが変だよ厚生労働省モデル就業規則」という企画を考えて、いつかブログか電子書籍にしたいと思ってたのですが、いつの間にかどうでも良くなって忘れ去られてたんですが、やんなくて良かった。というか、やっても没だったなあと、今回改めてモデル就業規則を読んで思いましたね。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士(登録番号 第23130006号)。社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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