労務管理

新社会人と新社会人を雇う会社のための「試用期間」講座

4月も半分以上が過ぎましたね。

新社会人からすると、入社から2週間以上が過ぎたことになります。

この入社から2週間というのは労働基準法上、ちょっとしたポイントなので今日はその解説。

 

1. 試用期間は「14日」?

新卒に限らず、入社直後から正規採用や正式配属ということは少なく、大抵はその前に試用期間や研修期間を挟みます。

この試用期間ですが、労働基準法上明確な定義があるわけではありません。

ただし、労働基準法第21条で、解雇予告や解雇予告手当の支払いが不要な者として「試の使用期間中の者」との規定がされており、加えて、「該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。」となっていることから、労働基準法上の試用期間といえば「14日以下」と考えることもできます。

入社から2週間というのが労働基準法上のちょっとしたポイントだと言ったのはこのためです。

よって、4月1日入社の労働者を今日、4月17日に解雇する場合、解雇予告または解雇予告手当が必要になります。

ただし、これは、会社は試用期間を必ず「14日以下」にしないといけないということではありません。

上の規定は試用期間の期間を制限し規制する法律ではなく、また、そうした条文も他になく、あくまで解雇予告&解雇予告手当の話。

よって、これらの規制を守る限り、解雇予告14日を超えた試用期間を設定することは可能です。

ただし、短すぎると対象労働者の適性を判断できず、長すぎると対象労働者は長期間契約的に不安定な立場に置かれることになります。

実務上、多いのは3ヶ月から6ヶ月の期間を設けて、規定で場合によって期間を延長したり短縮できるようにしておく方法です。

 

2. 「試用期間中は保険に入れない」は都市伝説

よくある勘違いとして、試用期間中の労働者は雇用保険や社会保険に入れる必要はないと考えている会社がたまにありますが、そのようなことは一切ありません。

雇用保険や社会保険には試用期間について一切規定されておらず、言い換えれば、試用期間であろうと正採用だろうと同じような基準で加入条件を見るとされているわけです。

そのため、加入条件を満たす限り、加入させる必要があります。

というより、そもそも、法律上は試用期間中だからといって、労働者にとって不利な条件や不当に低い条件をを押しつけることができるようにはなっていません。

入ったばかりで額が能力に見合わないなどの理由で正採用の労働者や最低賃金よりも低くできる賃金と、上述の解雇予告が例外的な取り扱いなのだと考えるべきでしょう。

 

3. 試用期間の結果、正式採用できないと思った場合でも・・・

試用期間は法的には「解約権留保付労働契約」という堅苦しい言葉になります。

解約権が留保されているとはいえ労働契約ですから、例え、能力が本採用に見合わないとしても、本採用の拒否は「解雇の問題」となります。

解雇が認められるかどうかは、その解雇が客観的に見て合理的であり社会通念上相当であるかが争点となります。

よって、判断基準や試用期間中の会社の行動が適切でないと、本採用拒否が権利の濫用で無効になることも考えられます。

試用期間は労働者の適性を見極める期間ですので評価等はきちんと行っているかとは思われますが、単に形だけ試用期間を設けて、結果「なんとなく気に入らない」「ちょっと仕事ができなさそう」といった印象だけで本採用を拒否することは大きなリスクがあることを忘れてはいけません。

 

今日のあとがき

労働法って面白いのは、法律の網の目がやけに濃いところと、スッカスカのところが両極端にあるところで、今回の試用期間は本当にスッカスカ。

なので、法律だけ見たらほぼ会社が好きに決められるわけですが、一方でこうしたスッカスカのものでも判例があると判例にある程度合わせないと会社は思わぬリスクを負うことになるので、気をつけたいところです。

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士(登録番号 第23130006号)。社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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