賃金

会社と労働者の雇用関係の基本のキ「ノーワーク・ノーペイ」を解説

長らく、ブログ更新が滞っておりましたがいろいろ余裕ができたので、これからまた更新していきたいと思います。

復帰だから、というネタも特にないので、ついさっき、ああそういえばこのネタで記事かいたことって実はなかったなってことが思い浮かんだので今日はそれについて。

 

1. ノーワーク・ノーペイとは

賃金には「ノーワーク・ノーペイ」という原則があります。

一言で言うと「働かないなら賃金はでない」ってことです。

ただ、復帰早々一言で終わらせるのもどうかと思うのでもう少し解説したいと思います。

まず、賃金の支払には「賃金支払いの5原則」というのが労働基準法で定められています。

  • 通貨払い
  • 直接払い
  • 全額払い
  • 毎月1回以上払い
  • 一定期日払い

ただ、ノーワーク・ノーペイはその原則よりもさらに大前提の話となります。

賃金支払いの5原則は、支払う義務のある賃金の支払い方についての原則ですが、ノーワーク・ノーペイはそもそも賃金が発生するかどうか、という話なので。(ちなみに、ノーワーク・ノーペイは労働基準法に定めはない)

 

2. ノーワーク・ノーペイと罰金

さて、ノーワーク・ノーペイの身近な例は、労働者都合の遅刻や早退、欠勤ですね。

時給1000円の人が、1時間遅刻したら1000円が支払われないのは当然のことです。

じゃあ、1時間遅刻した人に対して1000円を支払わずに、1000円払えと罰金を支払わせるのはどうでしょうか。

これはノーワーク・ノーペイには当てはまらず、制裁の問題となります。

働かなかった1時間の賃金である1000円を支払わないのはノーワーク・ノーペイで問題ありませんが、1000円という罰金は労働者に対する制裁であり、それが妥当かどうかはノーワーク・ノーペイとは関係がなく、時と場合によって認めらる場合もあれば、認められない場合もあります。

 

3. 仕方ない休業の場合もノーワーク・ノーペイだが

出産や育児、介護、労災など、必ずしも労働者が悪いとは言えない理由で休業を余儀なくされることもあります。

こうした休業の場合もノーワーク・ノーペイの原則は適用され、そうした休業期間に会社が賃金を支払う義務はありません。

その代わり、出産に関しては健康保険から出産手当が、育児や介護については雇用保険から育児休業給付金や介護休業給付金、労災からは休業補償給付といったように、各種公的保険から労働者の生活を保護するための給付が支給されるようになっています。

また、育児介護休業法に定めのある育児や介護の短時間勤務についても、短縮された労働時間についてはノーワーク・ノーペイが認められるものの、短縮された労働時間分定期昇給を抑えるというのは、ノーワーク・ノーペイの範囲を超え、労働者が短時間勤務を行うことを躊躇させるとして、不利益取り扱いとなります。

罰金もそうですが、ノーワーク・ノーペイ以上に労働者に対して制裁めいたことをするのは、会社は十分な注意が必要ということです。

 

4. 会社都合の「ノーワーク」は「ノーペイ」ではない

では、労働者の都合ではなく会社の都合によって、仕事を早じまいしたり労働日を休日にした場合も「ノーワーク・ノーペイ」なのでしょうか?

もちろん、違います。

会社は労働者を雇用する以上、仕事を与える義務があり、会社の都合で休ませるということはその義務を果たせなかったということになります。

そのため、会社都合で労働者を休ませる場合は平均賃金の6割以上の「休業手当」を支払う義務が、労働基準法では課せられています。

 

5. 「ノーワーク」とは「労働していない時間」

ここまで読んで、「ということは、隣でソリティアばっかりやってる上司の給与はノーワーク・ノーペイでさっ引かれるのか」と思った方に対して、残念ながら「そうとは限らない」とだけ述べておきましょう。

というのも、日本の労働法上の賃金というのは基本的には労働「時間」に対して支払われるものであり、成果に対して支払われるものではないためです。

なので、上で紹介した「働かないなら賃金はでない」というノーワーク・ノーペイの説明はより厳密にいえば「働いてない時間には賃金は出ない」ということになります。

(例え「成果に対して支払う」という賃金制度だとしも、時給基準の最低賃金を下回ることはできないし、残業手当は基本給等を時給計算したものを元に賃金計算を行うように、労働時間と賃金を完全に切り離すことはできません)

つまり、ソリティアしてる時間も労働時間、となればノーワーク・ノーペイとはならず賃金は支払われる可能性があるわけです。

もちろん、そういう人に対して査定や人事考課で昇給を抑えたり、みたいなことはできますが。

 

以上です。

簡単にまとめると、

  • ノーワーク・ノーペイとは「働いてない時間には賃金は出ない」ということ。
  • 育児休業など仕方ない休業の場合も適用されるが、その代わり公的保険からの給付がある
  • 会社都合の「ノーワーク」は「ノーペイ」ではない

 

 

今日のあとがき

しばらくブログ更新が滞っていた理由についてはおそらく後日、お話しできると思うので気になる方はそれまでお待ちを。まあ、どうでもいいって人の方が多いのでしょうが。

話変わって、こちらの記事でも書いたゼルダの伝説ブレスオブザワイルドですが、発売日に買ってほぼ毎日のようにやってますが、未だ全クリならず。ていうか、終わらせたくないくらいに面白い。

ただ、そうは言っても残りの祠の数が20を切っていて、終わりが見えてきてるのがかなり寂しくもあり、その残り20がどこにあるのかさっぱりわからんと世界中を探索をしているのが楽しかったり、なんやかんやゼルダを楽しんでいます。

そろそろニンテンドースイッチも在庫が増えてくると思うので、ニンテンドースイッチ最初の一本にオススメです。

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士(登録番号 第23130006号)。社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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