労災・雇用保険の改正

雇用保険や社会保険など人事労務に関する平成29年4月施行の改正法をチェック

2017年3月6日

国会がまともであれば、今年の4月というのは労働基準法の改正により、有給強制取得等が義務化される予定だったんですが、今国会を見る限りそれはなさそう。

よって、セミナー主催者が「これはセミナーにしたい」と血湧き肉躍るような、目玉となるような法改正はこの4月にはありません。

ただ、法改正が全くないわけでもなく、重要なものもあるので、今回はそのあたりチェックしていきたいと思います。

 

1. 雇用保険法等の改正

雇用保険関連の法改正については、今国会で通れば、という条件付き。

ただ、去年もギリギリに通してきたので、おそらくは今国会中、それも3月中には通るはずです。

1.1. ① 保険料率の変更

平成29年度変更予定の雇用保険料率(カッコ内は平成28年度の料率)

①+②
雇用保険料率
①労働者負担 ②事業主負担
一般の事業 0.9%(1.1%) 0.3%(0.4%) 0.6%(0.7%)
農林水産・清酒製造の事業 1.1%(1.3%) 0.4%(0.5%) 0.7%(0.8%)
建設業 1.2%(1.4%) 0.4%(0.5%) 0.8%(0.9%)

過去記事でも何度か使ってる表ですが、見ての通り、労使ともに0.1%ずつ、保険料率が低くなる予定です。

反映は4月分の給与からなので、国会で改正雇用保険法(というか厳密には徴収法)が通った場合、4月分の給与の雇用保険料率の変更を忘れないようにしましょう。

 

1.2. ② 特定理由離職者の暫定措置を5年間延長

雇い止めによる離職や、労働者側に辞めざるを得ない正当な理由がある場合、その離職者は「特定理由離職者」という扱いとなります。

この特定理由離職者は現在、会社の倒産や解雇等による離職者である「特定受給資格者」と失業給付の日数などで同等の扱いを受けています。

この扱いは法律上は、暫定措置なので、期限が決まっているのですが、今国会で改正案が通れば、この期間が延長されます。

改正案通らなければ、平成29年4月1日以降退職者は一般の退職者と同じ扱いとなってしまいますが、そうはさせないために法案は無理矢理にでも通すはずです(去年の雇用保険法や一昨年の派遣法がそうでした)。

ていうか、もう暫定措置じゃなくて普通に法律に入れ(以下。略)。

 

1.3. ③ 特定受給資格者および特定理由離職者の給付日数が変更

特定受給資格者および特定理由離職者で、離職字の年齢が「 30 歳~ 35 歳未満」「 35 歳~ 45 歳未満」の年齢層の基本手当の給付が以下のように拡大されます。

被保険者であった期間が1年以上5年未満の場合

  • 現行制度:「 30 歳~ 35 歳未満:90日」「 35 歳~ 45 歳未満:90 日」
  • →改正後の制度: 「 30 歳~ 35 歳未満 :120日」「 35 歳~ 45 歳未満 :150日」

 

1.4. ④ 新たな個別延長給付の創設

雇用保険には「延長給付」という制度があります。

特別な理由により受給期間中の再就職が困難と認められる場合、基本手当にプラスして支給されるものです。

その中に「個別延長給付」というものがあるのですが、こちらはリーマンショックの際に創設された暫定措置で期限付きの制度でした。

今回の改正ではこの暫定措置をひとまず終了し、新たな形でこの「個別延長給付」を創設します。ただし、この制度もとりあえずは5年間の暫定措置

この個別延長給付による支給対象となるのは、特定受給資格者または特定理由離職者で以下の基準に当てはまる場合。

  • 心身の状況が厚生労働省令で定める基準に該当する者
  • 震災等の災害で就職等が困難とみられる地域に居住する者
  • 震災等の災害によって離職を余儀なくされた者

上記の場合、基本手当にプラスして原則60日(最大120日)、給付日数が延長されます。

 

2. 社会保険関連の改正

2.1. 労使間の合意による短時間労働者の社会保険の適用拡大(500人以下の規模)

501人以上の規模の会社では、昨年10月より短時間労働者の社会保険加入要件が拡大されました。

いわゆる「月額8万8千円の壁」ですね(一般に言われる「106万円の壁」は実務とかけ離れた言葉なので注意)。

一方、500人以下の規模の会社は、これまで通り(微妙に変わったけど)の4分3ルールで社会保険の加入要件のままです。

しかし、今年の4月からは労使間の合意があれば、500人以下の規模の会社でも、月額8万8千円や所定労働日数20時間以上といった社会保険の適用基準が利用可能となります。

中小の規模ではそもそも労働者w社会保険に入れたくない会社や、社会保険に入りたくない労働者も多いので、どこまで活用されるかは不明ですけどね。

あるとすれば、ライバルの大企業が短時間労働者の社会保険完備などを売りにしている場合に対抗するためとかでしょうか。

また、これに合わせて、国・地方公共団体に関しては規模にかかわらず(つまり、500人以下の規模の地方公共団体でも)、「月額8万8千円の壁」の対象となります。

 

以上です。

雇用保険の料率以外に、会社の人事労務に大きな影響を与えるものはなさそうですが、きちんとおさえておくにこしたことはないでしょう。

今日のあとがき

先週末はニンテンドースイッチでひたすらゼルダをやってました。

正直ニンテンドースイッチというハード自体のポテンシャルはまだよくわかりませんが(持ち運んだりしないので)、ローンチで出たゼルダの凄さだけは間違いなし。

オープンワールドな上、今回のリンクはほぼどんな壁や木も登れるので、世界のありとあらゆるところに(握力一つで)行けるというのが気に入ってます。そして、行った先には必ず何かしらの遊びが用意されてるのもゼルダらしい。

WiiU版でもいいので、対応ハード持ってる人は絶対やった方がいいソフトですよ。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士(登録番号 第23130006号)。社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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