今月のビジネスガイド(2015年1月号)の大内伸哉先生の連載(キーワードから見た労働法)が面白かったのでメモ代わりに。今月のテーマは時季指定権。
時季指定権とは、「労働者が請求すれば指定した時期に有給を得ることができる」権利とされています。
以下、連載から興味深い部分を箇条書きで。
- 時季指定権は労働者の権利ではなく使用者の義務
- 労働法は労働者に必ずしも権利を与えておらず、多くは使用者に義務を負わせている
- 法律上の使用者の時季変更権行使のハードルは高い。ただし、有給の期間に反比例し、長くなるほど使用者の裁量は認められる傾向にある
- 日本では病気のために有給をとっておくことが多い(結果使わない)
- 欧州では病気休暇が法律で保障されていることが多い
- 業務が限定されていない(ことの多い)正社員よりも、業務範囲が決まっている非正規のほうが取得率が高い
- 海外(ドイツ、フランス、イタリア)の有給制度では、労使間で有給時季の交渉はするものの、基本的に使用者にイニシアティブがある。また、日本のように1日単位の取得はせず、12日間や2週間のように連続して取ることが求められている
いきなり時季指定権は労働者の権利ではない、ということに面食らいますが、要は労働法の多くというのは使用者に(労働者に対して)ああしなさいこうしなさい、とは書かれているが、それがイコールで労働者の権利になるわけではないよ、という法律論の割とテクニカルな内容です。まあ、一般の人はこのへんはあまり深入りしないで、へー、そうなんだ、ぐらいで済ませていいところかもしませんね。
また、海外と日本での有給取得率の差が非常に大きいということがよく話題になりますが、日本のような有給制度を取っているのはイギリスぐらいで、他はそもそも制度としてかなり違うものである点が興味深いところ
厚労省は現在、企業に社員の有給取得消化を義務付ける方向で有給の改革を考えているようですが、それは要するに、よりドイツやフランス型の制度に近づけるという方向性の改革なのだと、今回の記事を読んで理解しました。確かに、労働者が自由に有給取得できるに越したことはないですが、それをやろうとしていつまで経ってもどうにもならない以上、こうした舵切りは仕方ないのかもしれません。
今回の記事は、あくまでわたし個人のメモ的なものなので、記事だけではわからない点等は、ビジネスガイドの連載原文を読んでいただければと思います。
あっ、うちは年間購読してるので気づきませんでしたが、Amazon見たらまだ発売されてなかった・・・。年間購読してるとちょっと早めに届くんですね。意図せぬフラゲでした。