ハラスメント

「中間管理録トネガワ」から読み解く労務管理のツボ ⑦「採用・面接」

2017年2月6日

油断するとあいだが空いてしまうトネガワ。

まあ、ゆっくりやった方が原作に追いつかなくて済むと最近は開き直っています。

今回は3巻最初の話から、テーマは「採用・面接」です。

 

1. 会社に認められている「採用の自由」

実は労働者の採用に関して、会社にはかなり大きな自由が認められています。

これに関しては三菱樹脂事件という非常に有名な判例もあります。

一方で、労働者の解雇には非常に強い規制があるので、とにかく取る段階でその人を判断して、取ったからには責任を取れ、という構造になっているわけです。

取った人間がどんなに無能でやる気がなくても、会社が面倒見て育てないといけない、会社ってのはあなたのお母さんですか? と思わなくもありませんし、こんな構造で、大企業がギャンブル的に中卒や高卒取ったりしますか? ってな話ですが、まあ、それはおいておきましょう。

 

2. とはいえ、無制限というわけでもない

本編を読むと、帝愛グループの採用基準はかなり偏っていて、見た目での採用拒否もすれば、利根川にしても相変わらず「名前」に対しては敏感。

ただ、それでも企業の「採用の自由」が広く認められている以上は、違法と判断することは難しい。

そもそも、企業の採用基準というのは基本的にブラックボックスなので、どのような理由で採用されなかったか、求職者側が立証することはほぼほぼ困難です。

ただし、だからといって何でも自由、ということはなく、例えば「性別による採用差別」は男女雇用機会均等法で禁止されていますし、年齢に関しても求人の際に一定の年齢より若くするには、キャリア形成などの理由が必要となります。

また、企業による身元調査については「人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項」「思想及び信条」「労働組合への加入状況」について、採用の際に収集してはならない情報であると、厚生労働省は指針を示しています。

 

3. 囲い込みは「オワハラ」の可能性も

最後に帝愛グループの採用・面接で最も特徴的に描かれているのが、面接合格者への処遇です。

通常は後日郵送や電話などで知らされる内定通知ですが、帝愛グループではなんと採用するかどうかの判断は面接の際に決まります。

それも、内定なんて生やさしいものではなく採用者を別室に連れて行ったうえでの、相手の意思にかかわらずほぼ強制。

もちろん、求職者側も帝愛を目指して面接を受けに来ているはずですが、例えば、すでに他の内定がある場合で、本当はそちらに行きたい、正直帝愛グループは滑り止めだった、という人からすると、内定辞退の強要、いわゆる「オワハラ」ということになるかもしれません。

(オワハラとは 「就活終われハラスメント」の略らしいですが、無理矢理略してる感じがして、何というかセンスが感じられない)

内定は実質的な契約にほかなりませんが、一方で、労働者には「退職の自由」が認められているため、内定を辞退することは労働者の自由であり、ということを会社が止めることはできません。

なので、会社が内定者に「オワハラ」するのはダメ。

個人的には、複数の内定を取る、というのは多重契約のような気がしてモヤモヤしますが、法律上はそういう風になっています。

 

 

今日のあとがき

これまで使っていたポンデリンクという、Amazonのアフィリエイト画像を拡大できるサイトが事実上終わってしまって、これまでのように記事のサムネイルにトネガワの漫画の表紙を使えなくなってしまいました。

著作権をクリアしながら版権画像を使えるので、トネガワに限らず、結構、いろんな場面で画像を使っていたので重宝していたのですが、使えないものはしょうがないので、これからはシンプルに以下の画像を記事のサムネイルに使ってきます。

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士(登録番号 第23130006号)。社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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