昨日は珍しく社労士向け(?)に記事を書きましたが、本来の趣旨に戻って今日は会社の経営者や人事・労務担当者向けの記事です。
まあ、会社の経営者や人事・労務担当者向けにしたって、どこが? 見たいな記事、たくさんありますけどね。
で、今日は「中小企業退職金共済制度」についてです。
そもそも、退職金というのは会社に支払義務のあるものではなく、事実、中小企業では退職金制度そのものがないところも少なくありません。
会社の資金と別に退職金をプールしておくのは大変な負担ですしね。
その一方で、人手不足の時代にハローワークの求人などでパート募集ならまだしも、正社員募集で「退職金なし」と書いてしまっては、今や選べる立場の求職者はその会社を敬遠しかねません。
この記事の目次
1. 中小企業退職金共済制度とは?
中小企業退職金共済制度とは、労働者1人あたりに毎月一定の掛け金と国からの助成で、労働者の退職時の退職金を確保するというもの。
毎月掛け金を納める形なので、会社の負担も抑えられ、万が一退職者が続出した場合も、支払が滞るということはありません。
また、この掛け金は法人の場合、会社の損金扱いとなり、必要経費として全額非課税となるため、会社にもメリットはあります。
2. 中小企業退職金共済制度に加入できる事業所の条件
しかし、当然、どのような会社でもこの中小企業退職金共済制度に加入できるわけではありません。
なにせ「中小企業」と付いてるわけですからね。当然、中小企業しか加入できないわけですが、その基準は以下のようになっています。
業種 | 常用従業員数 | 資本金・出資金 |
小売業 | 50人以下 または | 5千万円以下 |
サービス業 | 100人以下 または | 5千万円以下 |
卸売業 | 100人以下 または | 1億円以下 |
その他一般 | 300人以下 または | 3億円以下 |
上記の通り、多くの助成金の中小企業主の範囲や、労働基準法の割増賃金(60時間以上で5割以上)の区分けと基本同じです。
3. 中小企業退職金共済制度に加入できる労働者
事業所が中小企業退職金制度に加入する場合、原則、そこで従業員は中小企業退職金共済制度に加入することになりますが、以下の人たちに関しては、加入させなくても良いことになっています。
- 期間を定めて雇用される従業員
- 季節的業務の雇用される従業員
- 試用期間中の従業員
- 短時間労働者
- 休職期間中の者およびこれに準ずる従業員
- 定年などで相当の期間内に雇用関係の終了することが明らかな従業員
また、以下の方々については、そもそも加入できないことになっています。
- 中退共制度に加入している方
- 特定業種退職金共済制度に加入している方
(※中小企業退職金共済法に基づく特定業種(建設業・清酒製造業・林業)退職金共済制度には企業として両制度に加入はできますが、同一の従業員が両制度に加入することはできません。)- 被共済者になることに反対の意思を表明した従業員
- 小規模企業共済制度に加入している方
4. 掛け金について
掛け金については、会社が全額負担し、労働者に負担させることはできません。
その代わり、掛け金が非課税なのは前述の通り。
掛け金は以下の中から、会社が選ぶことができます。掛け金の決定に労働者の同意を得る必要はありません。
5000円 | 6000円 | 7000円 | 8000円 |
9000円 | 10000円 | 12000円 | 14000円 |
16000円 | 18000円 | 20000円 | 22000円 |
24000円 | 26000円 | 28000円 | 30000円 |
短時間労働者(週所定労働時間30時間未満)に関しては、特例として2000円、3000円、4000円からも選ぶことができます。
掛け金の変更に関しては、増やす分にはいつでもできますが、減らす際には「従業員の同意があるとき」もしくは「現在の掛け金を維持することが著しく困難であること」が認められた場合に限られます。
掛け金に関しては「新規加入の助成」や「掛け金増額の助成」など、国からの助成が多いのも特徴です。
掛け金と退職金の関係としては、基本的に24ヶ月以上の加入期間があると、掛け金よりも多くの退職金がもらえる計算となっています(シミュレーションしたい場合はこちらをどうぞ)。
5. 加入方法
制度に加入するには、まず加入させる従業員の同意を得なければなりません。申込書に同意の旨の押印もしくはサインをする箇所があります。
また、申込書には加入させる従業員の一人ずつの掛け金額を書く欄があるので、申込書を作成するまでに、誰をどの掛け金月額で加入させるか決めておく必要があります。
その他、会社の規模が加入ギリギリの場合等は添付書類等が必要となるので注意が必要です(詳しくはこちら)。
作成した書類は最寄りの金融機関または委託事業主団体の窓口に提出することになります。
以上です。
非課税とはいえ、月々の会社の負担する人件費が増えるので、会社ごとの検討は必要になるかと思います。
ただ、会社の負担と労働者にとってのメリットを考えると、比較的コストパフォーマンスの高い制度かと思います。
今日のあとがき
何で突然、中小企業退職金共済制度、いわゆる中退共の話を今回したかというと、何のことはない、今までこのブログで中退共を扱っていなかったから。
で、ブログで欠けてるところって往々にして、自分の知識的に欠けていたり、注意が足りてないことが多いので、今回扱ってみましたが、おかげで勉強になりました。