少し前の話題ですが、三菱東京UFJ銀行が窓口業務を担当する有期雇用の労働者を3年で無期雇用にすると発表しました。
無期雇用とは有期雇用のときの労働条件そのままに、契約期間を無期にした契約で、昨年4月の労働契約法改正では、同じ会社で通算5年間有期雇用された場合に、労働者が申し出た場合には、無期雇用となることができるとされました。
つまり、三菱東京UFJ銀行はそれよりも2年間短縮して無期雇用にすると発表したわけですが、あまり評判は宜しくないようです。
上述のとおり、無期雇用はあくまでも有期雇用、つまりは非正規労働者の労働条件のまま、契約期間が無期になるだけであり、正社員になれるわけではありません。今回の件を批判している人たちはそれが気に入らないわけですが、そういう連中の多くが、そうしたチャンスを奪っているのが誰あろう会社に所属する正社員たちであるという事実に気がつかないバカだったり、そうした事実に目を瞑っている偽善者だったりで救えない。
いくら正社員化しないことを批判したって、正社員化できないにはできないだけの理由があるに決まってるんですがねえ。
まあ、それは今回はいいや。
1. なぜ「3年」なのか
今回の件では、ちょっと社労士らしい実務的な話をしてしみたいと思います。
実は、有期契約の労働者を3年以上雇った状態で契約期間満了で労働者を雇い止めすると、雇用保険では解雇扱いになります。
これは、あくまでもハローワークや労働局の裁量による扱いであり、法律で決まっていることではありません。判例で3年以上雇った労働者を雇い止めした際に、その雇い止めを有効(つまり実質的な解雇とはいえない)としたこともあります。
ただ、雇用保険の助成金の多くは、会社都合で解雇を行うと支給を受けられなくなるので、雇用保険で解雇扱い=助成金をもらえない、となるため、国から助成金をもらっている企業は困ったことになるわけです。
UFJが雇用保険からなんらかの助成金をもらっているのかは知りませんが、そうした企業にとっては、3年を超えた通算5年未満の労働者でも、契約期間満了としておいそれと雇い止めすることはできないわけです。そうなると、わざわざ労働契約法に沿って5年で無期にと就業規則で定めず、3年を1つの区切りとすることは別におかしなことでもないわけです。
加えて、労務管理の観点から言っても、契約社員が3年で無期雇用になるとなると、会社は必然、3年でその契約社員の能力や適性、そして、無期雇用として雇用を継続するかの判断をする必要がでてきます。しかし、今回の場合、窓口業務と業務が限定されているので、だらだらと5年も時間をかける必要もないでしょうから、3年で無期と決めたほうが時間や人材の無駄を省くこともできるわけです。
今回はこんなところです。