以前、ベネッセの件で、・・・と書くと「またベネッセかよ」とか「もうその池にどじょうはいねえよ」とか「おまえはおふくろの手料理か。バカの1つ覚えみたいに同じの作りやがって。もうその芋煮たやつ飽きてんだよ!」とか言われてしまいそうですが、本題はそこではありませんのでご安心を。
で、そのときの記事の反応として、こんなことIT業界では当たり前だよ、みたいな反応がTwitter等で結構ありました。うちの事務所は残念ながらIT系の顧問先やお客様がいないので、「へ~、そうなんだ」とか「本当かな?」くらいの感じでわたしはそれらを見ていたのですが、そういった反応をなさった方々の話がどうやら本当なのだなという発表が今日、厚労省からありました。
派遣元事業主に対する労働者派遣事業停止命令及び労働者派遣事業改善命令について
1. 派遣に継ぐ派遣
今回、厚労省が業務停止命令および業務改善命令を出した事件の概要については、厚労省が今回の件をまとめた図がわかりやすいのでそちらを貼っておきます。
株式会社RJCから株式会社スライムスタイル、スライムスタイルから株式会社ケイズ・ソフトウェア、そしてケイズ・ソフトウェアからほかのIT企業といったように、まるで労働者のバケツリレーのように多重派遣が行われていたため、今回こうした処分が行われたというわけです。行政がいきなり業務停止命令を行うことはあまりないので、もしかしたら、これらの会社は過去に是正勧告等を受けていたのかもしれません。
法律に違反したのだからそれに関して処分を受けるのは、当然といえば当然と思われるかもしれません。しかし、法律で決まっていればみんながみんな法律を守るのなら何の苦労もないし、ASUKAも覚せい剤打ちながらセックスしたりはしないわけです。つまり、彼らがどうしてこのような違法派遣を繰り返したのか、その背景を考えないとこうした違反を撲滅することはできないわけです。
余談ですが、最近の労働問題、特にブラック企業に関する論調を見ると、なぜブラック企業は法律を破るのか、という観点が抜けているか、単に経営者が儲けたいだけのひとでなし的な論調ばかりでうんざりします。
2. IT業界の労務管理
先に述べたように、わたしはIT系の企業の労務管理に強いわけではありません(IT関連のことは結構なんでも好きなんですが、仕事では縁がない・・・)。なので、どうしても人聞きの又聞きになってしまう点はご容赦を。
ただ、以下の記事を読む限り、いかにも時代の最先端を行くイメージの業種ながら、その実態はむしろ製造業や建設業に近いように感じました。
人月商売とは「人月(1人の技術者が1カ月に行う作業量)を単位として見積もった工数をベースに料金を算出する」(上記記事より引用)ものを言うそうで、wikipediaによると「1人が20日(1か月)かけて行う作業と、20人が1日で行う作業はどちらも同じ1人月として計算される」そうです。
つまり、人月商売は労働時間がそのままイコールで生産量になるわけです。これは労働時間がほぼイコールで生産量となる工場労働に非常によく似ています。
また、多重下請けに関しては建設業でよく行われていることなのはいまさら言うまでもないでしょう(ただし、建設業への派遣は法律で禁止されている)。
となると、結局、多重派遣が行われる根っこの部分というのはは一般的な派遣労働の問題と変わらないのでは、というのがわたしの考えです。そのあたりのことについては過去にすでに記事を書いているので、下記のリンクからお読みいただければと思います。
今回はこんなところです。