監督署の臨検調査

平成27年度の監督署の不払い残業の是正指導結果を解析する記事

2017年1月4日

明けましておめでとうございます。社労士の川嶋です。本年もよろしくお願いします。

なんだか今年の世間的な仕事始めは明日の5日というところが多いみたいで、実は弊所のパートナーである給与計算本部事務所の方も5日始め。

ただ、川嶋事務所の方は毎月箱買いしているレッドブルと、

(いきなり余談だけど、レッドブルってマーケットプレイスでの値段競争が激しく、毎月値段が下がってる)

新しく買った椅子の到着日を4日にしてしまったので今日から仕事始めです。

(値段的に結構思い切ったけど、もう1万払って最新のを買う勇気はなかった)

正直、相談とかもあまりなさそうなので椅子だけ作って帰ろうかと思ったけど、昨年末の二の舞いよろしくブログ更新が滞らないよう、今日は書きだめしようかと思います。事務所が静かだと自分の仕事に集中できますし。

 

1. 不払い残業代の合計額↓ 一人あたりの不払い残業代の平均↑

挨拶だけではアレなので、昨年末に出した厚労省のこちらの報告を見ていくことにしましょう。

平成27年度の監督指導による賃金不払残業の是正結果を公表します

賃金の不払い残業に関する監督署の権限についてはこちらでもまとめているので、細かいことを突きたくなる気持ちもありますが、まあ、長くなるので、適正な範囲内で行われた監督指導の結果が公表されているのだと思うことにしておきます。

で、その結果がこちら。

【平成27年度の監督指導による賃金不払残業の是正結果のポイント(詳細別紙1、2)】

   (1) 是正企業数                           1,348企業 (前年度比19企業の増)

  うち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、184企業

   (2) 支払われた割増賃金合計額         99億9,423万円 (同42億5,153万円の減)

   (3) 対象労働者数                         9万2,712人 (同11万795人の減)

   (4) 支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり741万円、労働者1人当たり11万円

   (5) 1 企業での最高支払額は「1億3,739万円」 (金融業) 、次いで「1億1,368万円」(その他の事業(協同組合)) 、「9,009万円」 (電気機械器具製造業) の順

参照:平成27年度の監督指導による賃金不払残業の是正結果を公表します

(1)だけ見ると、割増賃金の不払い企業数が前年度よりも増えているのでギョッとしますが、(2)の支払われた不払い割増賃金の額と、(3)の不払いにされていた労働者の数を見るとどちらも激減していることがわかります。

また、非常に特徴的なのは労働者1人あたりの不払い割増賃金額。

27年度は11万円ですが、実は前年度に当たる26年度は7万円です。

全体としては不払いの割増賃金額は減っていて、不払いにされる労働者の数も減っているのに、1人あたりの不払い割増賃金が増えている、ということは、つまり、搾取される人間はとことん搾取されるようになっているということではないでしょうか。

 

2. その残業代の計算方法、あってますか?

そうして労働者をこき使う会社というのは、外にバレないうちは良くても、一度監督署に入られて是正指導が行われれば、窮地に陥る可能性があります。

賃金の不払いの時効は2年間ですから、2年分の不払い割増賃金の支払いを行わなければならない可能性が出てくるからです。

電通の過労自殺の件もあり、今後、労働基準監督官を増員することを政府が公表していることも見逃せません。

また、おそらく、上記の是正指導の中には、比較的穏やか、と言うと言葉は変ですが、経営者側が意地でも払わない、という不払い残業ではなく、ミスや知識不足に近いような未払いも多く含まれているはずです(でないと、不払いの企業数が増えているのに、不払い額が大幅に減するのはおかしい)。

よって、うちは大丈夫、と思っている会社も、一度の残業代の計算について間違いがないか確認しておいたほうが良いかもしれません。

 

もちろん、川嶋事務所ではそうしたご相談も受け付けております、という最後は宣伝でしたが、改めて、本年もよろしくお願いします。

 

今日のあとがき

残念ながら、厚生労働省の資料からは違反していた企業の規模や、どの地方のどういった企業に対して是正指導が行われたかといったことが読み取れませんでした。

平均や総額って実は統計的には大したことなくて、それらがどのように分布してるかのほうが重要なんですよね。

例えば、大企業で不払いの割増賃金があったりすると、それだけで総額って増えますし。

なので、そうしたところを紐解くと本記事とは別の結論もありうることだけご留意を。

そして、これを書いてるなか、ようやく椅子が届いたので、

こいつを組み立てます!

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士(登録番号 第23130006号)。社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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