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平生28年度の社労士試験合格率は4.4%!そして、社労士試験の合格基準が初めて公に!

2016年11月11日

昨年はまさかの合格率2.6%という、著しく低い合格率で話題を呼んだ社労士試験ですが、今年8月に行われた平成28年度の合格率は4.4%

去年に比べれば上がっているものの、以前までの7~10%ほどの合格率に比べるとやや低い結果となりました。

で、どうやら、このように合格率が低い傾向というのは今後も続いていきそうな気配です。

 

1. ブラックボックスの蓋が開きました

これまでの社労士試験では、合格最低点や救済の基準等が曖昧で、受験生側からするとブラックボックス化されていました。

特に救済については、厚労省の胸三寸な点が非常に受験生にとって不公平だとして、散々このブログでも批判してきたし、毎回救済しないといけないのは試験方式に欠陥があるとさえ思っています。

わたしのように不満を抱く人が多くいたことや、現在、昨年の試験結果の公正さが裁判で争われていることもあってか、厚労省は今回初めて「社会保険労務士試験の合格基準の考え方について 」という資料を出しています。

それがこちら。

社会保険労務士試験の合格基準の考え方について(リンク先PDF 参照:厚生労働省)

 

2. 示された合格最低点の決定方法

で、こちらの資料を読むと、①全体の合格最低点の決め方と②科目ごとの合格最低点の決め方(救済)や補正方法が記されていて、基本的には「前年度の試験結果を基準に決める」ということが書いてあります。

例えば、①全体の合格最低点の決め方については、選択式、択一式ともに、前年度の平均点と今年度の平均点との差を出し、小数点以下を四捨五入した点数を加減する、ということになっています。

どういうことかというと、前年度の平均点と今年度の平均点と差が「+1.7点」だったとすると小数点以下を切り上げ「2点」合格最低点が、前年度より高くなる、というわけです。

択一式の今年の全体の平均点は「28.8点」で、前年度は31.3点となっており、その差は「-2.5点」。

よって、合格最低点「3点」昨年より下がっています(昨年度45点、今年度42点)。

(ちなみに、平均点が公表されたのも今年が初めて)

 

社労士試験の合格基準 ①全体の合格最低点の決め方

  • 「前年度の平均点」と「今年度の平均点」の差を、小数点以下を四捨五入した上で、前年度の合格最低点に加減算したものが今年の合格最低点

(択一式、選択式は、それぞれ分けて考える、以下同じ)

 

 

3. 全体の合格最低点の決定の例外

ただし、このルールには例外もあるようで、1つは、平成13年度以降で切り上げ、もしくは切り捨てられた小数点以下の点数の累計が±1点以上に達したときは、試験の水準を保つため、達した年の合格最低点に反映させるようです。

つまり、ある連続する年度で、0.4点、0.3点、0.4点と全体の平均点が上がった場合、平均点に1点プラスされたり、1点マイナスされたりする、ということがあるようです。

ただし、これを行うことにより平成12年度以降の平均的な合格率よりも乖離が大きくなる場合は、この例外的補正は行われないようです。

また、もう1つの例外として、科目別の合格最低点の引き下げ(つまり、救済)を2科目以上行った場合で、例年の合格率よりもおおむね10%程度高くなる場合は、全体の合格最低点に1点をプラスします。

 

①の例外

  • 切り捨てられた少数点以下の数字が+1点に達した場合は、1点を合格最低点にプラス。逆に切り捨てられた少数点以下の数字が-1に達した場合は、1点が合格最低点から引かれる(ただし、これにより合格率が例年と乖離する場合は行わない)。
  • 救済を2科目以上行ったことで、合格率が例年よりもおおむね10%以上上がる場合は、合格最低点に1点をプラス

 

 

4. 救済判断の基準

社労士試験は、択一式は各科目4点以上がボーダー、選択式は各科目3点以上がボーダーとなっていて、これより低いと全体の点が合格最低点を超えていても不合格となります。

しかし、問題があまりにも難しく、全体の点数が低い場合はこのボーダーが引き下がります。

今回の資料では、この②科目ごとの合格最低点の決め方(救済)についての基準も示されました。

それによると、4点もしくは3点のボーダーに達する受験者の数が全体の5割に満たない場合、救済の対象となりボーダーが引き下がります。

ただし、引き下げた結果、受験者の7割以上がボーダーを超える場合は救済の対象とはなりません。

 

5. つじつま合わせ? 救済判断に不可解な点

もうひとつ例外として、引き下げる場合、ボーダーの点数が択一式の場合は2点以下、選択式の場合で0点となるような場合、救済は行わないという非常に不可解な記載があります。

でも、これだと2点以下や0点となるくらい難しい問題だと返って救済されないことになるような…。

そういえば、去年はおそらく救済されるであろう「労災」が「救済なし」ということで、随分と議論を読んでいた記憶が…。

もしかして、去年のつじつま合わせ的な基準なのでは? とわたしなんかは思ってしまいますがどうなんでしょうか。

わたしの読解力が足りないだけかもしれないので、原文をそのままのっけておきます。

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普通に考えれば、2点以下や0点となるような点数の引き下げは行わないという意味だと思うんですが…。

社労士試験の合格基準 ②科目ごとの合格最低点の決め方(救済)

  • ボーダー以上の点数を取っている受験者の数が5割に満たない場合、救済の対象。

例外

  • 救済の結果、7割以上がボーダーを超える場合は救済を行わない
  • 択一式の場合は2点以下、選択式の場合で0点となるような場合も救済を行わない(2点以下、0点となるまで救済の点数を引き下げない、という意味の可能性も)

 

 

以上です。

これでようやく社労士試験のブラックボックス部分がなくなってすっきり、とはなかなかいかない結果に終わりましたね。

基準が公表されても、選択式が終わってるのは変わらないし。

いずれにせよ、2.6%だった去年を一定の基準としているため、今年が4.4%と低くなるのはある意味当然。

この合格率のもととなった今年の平均点を基準とする、来年以降も合格率が飛躍的に、それこそ以前の7~10%という基準にまで上がるとは思えないので、今後も社労士試験の合格率は5%前後で推移していくのではないでしょうか。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士(登録番号 第23130006号)。社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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