その他

「移民はいらない。ニートの若者を働かせろ」が暴論の理由

2014年3月28日

2チャンネルまとめサイトの、それも、新聞の投稿欄という暇人御用達欄を元に立ったスレッドにツッコミを入れるのもどうかと思いつつ、まあ、持ち前の出歯亀根性で、ツッコミを入れてやろうかというのが今回の記事です。

75歳男性 「移民はいらない。ニートの若者を働かせろ」

移民政策に関しては口を出せるほどの知識を持ちあわしていないので割愛しますが、ただ、代わりにニートの若者を働かせろ、というのはまったく意味のない提言です。

まあ、そもそも働く気がないのがニートでしょ、というツッコミ1つで済ませてしまってもいいのですが、今回の記事ではもう少し詳しく解説していきたいと思っています。

0.1. 労働力不足の本質

移民受け入れ政策というのは、少子高齢化により人口減少局面にある現在の日本において、国内の労働力不足を解消するための案です。

しかし、現在の日本には、ニートのように働けるのに働かない労働力というものが確かに存在しています。だから、海外からわざわざ労働力を輸入しなくても国内に余っているじゃないか、というのがこの発言の趣旨です。一見正しそうにも思えます。

ただ、実を言うと「労働力不足」という言葉自体がそもそもあまりよろしくない。なぜなら、単に「労働力不足」と言ってしまうと、まるで日本全国津々浦々どこの会社のどこの業種も平均的に労働力が不足しているように思えてしまうからです。

しかし、実際にはそうではありません。

今の日本で労働力が不足している、あるいはこれから不足していくのは、基本的には「労働条件が低い、不人気業種」からです。

どういった業種がそうか、というのを具体的に述べることはここではしません。社会保険労務士は多くの業種と接する機会のある職業ですが、その度に思うのは「職業に貴賎なし」という言葉に嘘偽りなし、ということです。どのような職種にも業務にも価値があるし、また価値があるから存在しているとも言えます。それがぱっと見、自分にとって価値が感じられないものだとしても、です。

ただ、自由市場のなかではどうしてもモテるモテないはでてきます。人にしてもそう、商品にしてもそう、そして職場にしてもそう、なのです。特に、一般的な知名度のない多くの中小企業はその点で大きなハンデを負っています。

現在、そうした労働市場上であまり人気のない会社の労働力不足を埋めているのは外国人労働者です。おそらく移民政策が本格化されても、暫くの間はそうした日本人に人気のない業種を移民たちが行うことになるはずです。

0.2. 移民とニートの労働力は同等か

ニートを労働力にする、という話に戻りましょう。

彼らが心を改め働こう、と思った時に、彼らがそうした職場を選ぶでしょうか、というのがわたしの疑問です。元々日本人に人気のない職場なのに、同じ日本人だけどニートには人気がある、ということはありえるでしょうか。

そもそもを言うと、わたしの勝手な偏見かもしれませんが、彼らは実務経験があまりない割に理想だけが高いような印象があります。下品な例えで申し訳ないのですが、まるで童貞の処女厨みたいな感じで、ニートだから働く場所を選ばないと思ったら大間違いで、ニートだから働く場所を選ぶ可能性だってあるわけです。

そして思い通りの職場に付けないのならまたニートに戻る可能性もある、かもしれない。

このように考えていくと、「移民」と「ニート」ではそもそも労働力という意味で全くと言っていいほど同一、同質ではないことがわかるかと思います。そして、社会主義ではない日本で、本人の意志に反するような労働を強いることは不可能。

にもかかわらず、移民はいらない。ニートの若者を働かせろ」と、まるでニートがまるで移民の代わりになるかのような提案に意味があるとは到底思えないわけです。その意味で「移民はいらない。ニートの若者を働かせろ」は正論どころか暴論なのです

そして、今回は詳しく述べませんでしたが、いくら人が足りないとはいえ、募集をかけた会社側がそうした労動者を雇ったりするのか、という問題も当然あります。

川嶋事務所へのお問い合わせはこちらから!

良かったらシェアお願いします!

  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士(登録番号 第23130006号)。社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

-その他