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あの電通も取得していた次世代育成対策支援「くるみん」の特典とは?

2016年10月26日

Twitterで回ってきたニュースに面白いものがありました。

電通を「時短企業」認定 07・10・15年 厚労省 違法知りつつ

まさか、赤旗にリンクを貼る日が来るとは…。まあ、それはいいや。

記事によると電通は、

厚労省はこれまで2007年、10年、15年と3回にわたって(「安心して働ける企業」として)電通を認定。08、09両年度には、「仕事と生活の調和推進モデル事業」で、「日本を代表する企業10社」にも選び、労働時間短縮などのリーダー役まで委託していました。

※ ()は筆者による

とあり、厚労省から過去、幾度にも渡って電通は「安心して働ける企業」としてのお墨付きをもらっていた。

その一方で、厚労省の下部機関である労働基準監督署から何度も是正勧告を受けていて、先日から話題になっている過労死労災認定の件もあり、厚労省おまえは一体何をやっているんだ、という趣旨の記事です。

どうしてこんなことが起こるかと言えば、答えは簡単で、「安心して働ける企業」としての認定を与える部署と、労働基準法に基づく取締を行う部署が別だから。

前者は雇用環境・均等部、後者は 労働基準部の仕事なわけです。

だから、しょうがない、ということではなく、要するに、厚生労働省内、というか労働局内の各部署で情報連携がきちんと取れてない、ということが今回の件で露呈されてしまったわけですね。

 

1. あの電通も認定を受けていた「くるみん」

実は電通が受けていた「安心して働ける企業」としての認定というのは、「子育てサポート企業」としての認定であり、「くるみん」という愛称で呼ばれています。くるみんの上にさらに「プラチナくるみん」もあります。

くるみんの認定を受けるには次世代育成支援対策推進法の一般事業主行動計画を作成するだけでなく、その行動計画を達成したり、男女問わず育児をする労働者に対しての支援がきちんと行き届いている必要があります。(詳しくは厚労省が出しているパンフレットをご覧ください)

ちなみにこちらが、電通の行動計画

時間外労働の削減等についてはこの行動計画に入っていないものの、くるみんの認定条件として「法令に反する重大な事実がない」ことも要件の1つなので、認定に問題があるのは間違いないです。

 

2. 「くるみん」で対外的にアピール

で、この「くるみん」なのですが、認定を受けるためのハードルは比較的高い(※)ものの、大企業を中心に多くの会社が認定を受けています。

くるみん認定及びプラチナくるみん認定企業名都道府県別一覧

その理由としては、「くるみん」の認定を受けることで、コンプライアンスや育児等に力を入れている、ということを対外的にアピールするというのが第一にあるかと思います。

ただ、今回の電通の件でその価値はだいぶ下がった気がしないでもないですね。

まあ、プライバシーマークを持っていたベネッセが個人情報の大量流出を招いた件なども踏まえると、こうした認定制度は参考程度に考えるべきなのでしょうが。

※ 認定基準については厚生労働省が出しているこちらのパンフレットをご覧ください

 

3. くるみんには税制優遇措置も

もう一つ考えられる理由として、くるみんの認定を受けると、以下のような、税制上の優遇を受けることができる点です。

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要するに、「次世代育成支援対策資産」の導入を前提とした次世代育成支援対策推進法の一般事業主行動計画を策定し、くるみん認定またはプラチナくるみん認定を受けると、「次世代育成支援対策資産」にかかった費用の一部が税制優遇措置の対象となる、というわけです。

なので、保育施設や、男女別の更衣室、多目的トイレといった設備を会社内に設置することを考えている場合、くるみんの認定を受けることを視野に入れてもよいかと思います。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士(登録番号 第23130006号)。社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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