年金・健康保険制度

厚生労働省の論理破綻が(相変わらず)酷い件 -年金の納付期間が45年に延長されるとどうなるか-

2014年2月27日

まだまだ自分の電子書籍を宣伝したい気満々なのですが、今日は以下のニュースについてちょっと解説。

厚生労働省が年金の納付期間の延長を考えているようです。

厚労省:年金減額強化を検討 納付期間45年に延長も

65歳まで雇用が延長されるのが当たり前になったから、というのがその理由です。当たり前にしたのは誰なんだ、とか、それが本当の理由だとすると、今は大学に行くのが一般的なのだから、それを理由に納付期間を短くしないとおかしいだろ、とも思いますが、まあ、建前にごちゃごちゃ言うのは立て板に水というものでしょう。

さて、納付期間が延長されると一体どうなるのでしょうか。

現在の年金制度ですと、480ヶ月、つまり40年分の保険料納付期間がきちんとある場合に限り、国民年金は満額出ます。これは厚生年金の基礎年金部分(定額部分)も同様です。言い換えれば、いくら480ヶ月以上の保険料納付期間があっても、それ以上は基礎年金部分は増えないことになります。(厚生年金の報酬比例部分は別)

これによって大きな影響をうけるのは、自営業等で国民年金の保険料を支払っている人の場合でしょう。これまでは20歳から60歳までのあいだ1ヶ月も欠くこと無く480ヶ月間保険料を支払っていれば、60歳から65歳までのあいだ保険料を支払う必要はありませんでした。しかし、45年に延長されればこの期間も支払う必要がでてきます。

一方、厚生年金の保険料は、どこかの企業に勤めていて労働者として働いてる限り今でも発生しています。なので、納付期間が延長されたとしても、65歳定年まで働くのなら、どちらにしても65歳まで保険料を支払う必要があるわけです。ちなみに、厚生年金の保険料は、それを支払えば基礎年金部分と報酬比例部分どちらも支払ったことになります。

厚労省の言う、65歳まで雇用が延長されるのが当たり前になったから、という説明はこうした企業勤めの労働者のことを指しているのだと思うのですが、今の制度のままでも、こうした企業勤めの労働者というのは保険料を収めなければならないのだから、説得力に欠けるというか、取ってつけた感が丸出し。

さらに大きな懸念としては、このように納付期間が延長されたとして、年金額は果たして増えるのか、という問題です。

年金の納付期間の上限が45年に延長されるということは、今までなら480ヶ月分を支払えば満額もらえていたのが、540ヶ月分のの保険料納付期間があってはじめて国民年金および厚生年金の基礎部分が満額もらえることになるわけです。

しかし、540ヶ月になったとしても、480ヶ月で満額もらえてたときと年金額が変わらないとすれば、1ヶ月の保険料に対して年金として返ってくる額というのは実質的に下がることになります。これまでよりも多くの保険料を支払わなければならないのに、貰える額が同じなのだから当然ですよね。逆に、厚労省からすれば保険料収入は増やしつつ、被保険者に払う年金の額は変わらないわけです。

ねずみ講扱いされて久しい現在の年金制度ですが、社労士としては、できれば快く年金保険料を支払ってもらえるような制度になってほしいのですが・・・。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士(登録番号 第23130006号)。社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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