アゴラに掲載していただいた記事および前回の記事に対して少しだけ補足。
契約社員のほうがリスクを負っているのだから、正社員の方よりも契約社員の方が給与を高くすべき、という意見があります。アルバイトやパートでできてしまうような、いわゆる「誰にでもできる仕事」を別にすれば、理屈としては正しいし、海外ではそうなっているところも多いと聞きます。
しかし、現行の日本の法体制で一朝一夕にそのような雇用習慣が根付く可能性があるかといえば、これは限りなくゼロに近い。
企業における人件費に割ける予算というのは決まっています。そして、その予算の大半は正社員、それも年功序列的賃金制度が長いあいだ根付いていた日本では中高年の正社員の給与に割かれています。その残りでアルバイトやパート、契約社員や派遣社員の給与というのは支払われているのだから安くて当然でしょう。
つまり、契約社員の給与を上げるとなるとこうした正社員の給与を削る必要がでてきます。
しかし、日本は正社員を解雇することがとんでもなく難しい国。なので、正社員が辞めた穴に契約社員を入れることができても、正社員と契約社員を会社が能動的に入れ替えることは不可能に近いわけです。
また、給与の引き下げにしても、簡単ではありません。裁判では、すでに夜食を食べる習慣がなくなっていたにも関わらず、たった2000円の夜食手当の削減すら認めなかった例もあります。
結局、契約社員や派遣社員の給与が安いのは、そうした制度の普及が「正社員」という制度の普及よりも圧倒的に遅く、すでに正社員制度が普及し終わった後にはどうにも動かしようがない状況だったのです。
「正社員」という身分制度に一切手を付けずに、労働契約法や派遣法でお茶を濁し続けていては、こうした状況が覆ることは当分ないでしょう。