労災保険制度

なぜ社労士が労災保険の特別加入を行うのか

2016年9月28日

昨日の続きです。

中小事業主が労災保険の特別加入するには、労働保険事務組合を必ず経由しないといけない、というはなしが前回まででした。

一方、労災の特別加入に関しては多くの場合、社会保険労務士が関わることが多いです。

このことを指して、「元社労士」が「ぼったくり」と批判していましたが、ぼったくりかどうかはともかく、なぜ社会保険労務士が特別加入に関わることが多いのでしょうか。

今回はその解説です。

 

1. 社労士が労働保険事務組合を持っている場合も

労働保険事務組合をWikipediaで調べると、

一般的には事業協同組合、商工会議所、商工会等が当該事務を行っている。

労働保険事務組合(Wikipedia)

とあります。

これがそもそもの勘違いを誘発していると思うのですが、労働保険事務組合って「事業協同組合、商工会議所、商工会」の他に、社会保険労務士が運営していることもあるんですよ。

あるというか結構多い。

なにせ、労働保険事務組合の認可基準には

6.労働保険事務を確実に行う能力の有る者を配置しており、当該事務を適切に処理できる体制が確立されていること。

労働保険事務組合(Wikipedia)

というものがありますが、この条件をわかりやすく満たすのが社労士だからです。

よって、労働保険事務組合を作っている社労士がいるから、社労士が特別加入に関わることが多い、というのがまず1点。

組合加入にお金がいるのはどこの世界も一緒なので、ぼったくり呼ばわりされる筋合いはないわけです。

 

2. 社労士が加入する「SR」という労働保険事務組合

もう1つ理由があります。

労働保険事務組合の設立には最低でも30以上の会社の労働保険事務の委託予定がないといけません。

要するに30以上のお客様がいないとダメってことです。

この条件を満たすのは、開業当初はもちろんそれなりの規模になってもなかなかに難しい事が多い。

そのため、各都道府県の社労士会の多くは「SR」という労働保険事務組合を作っています。

この「SR」に社労士が加入すると、その社労士は「SR」を通して自分のお客さんの特別加入をすることができます。

要は、「SR」に加入する社労士は、「SR」という労働保険事務組合の代理店のような形。

多くの社労士が「SR」に加入しているため、特別加入に社労士が絡むことが多いわけです。

(社会保険労務士川嶋事務所も愛知中央SRに加入しており、中小事業主の特別加入の手続きを行っています)

民間の保険代理店もうそうだし、携帯ショップなんかもそうですが、代理店を通せば手数料がかかるのはこれまたどこの世界も同じ。

 

3. 言ってみれば普通の商売

そもそもを言うと、世の中には社労士に手続き業務を委託している会社・事業主の方というのがかなりの割合でいて、手続き業務の委託には大抵の場合、労災保険関連の手続きも含まれているわけです。

そうした中で、特別加入だけはできない、というのでは、お客様である会社や事業主の利便性を損なうわけです。

よって、SRみたいな団体や仕組みがあるわけです。

こうした仕組みの中で社労士や労働保険事務組合は「年会費」や「入会金」「手数料」で商売を行っているわけです。

 

以上です。

法に守られている部分や縛られている部分はあるとはいえ、普通の商売だと、普通の方はわかるのではないでしょうか。

 

以上と言いつつ、最後に余談。

繰り返しになりますが、「年会費」「入会金」「手数料」、どれをとっても、どこの業界にもある普通の商売です。

これらの額があまりにも高くてぼったくりだ、っていうのならともかく、こうした仕組みを指してただただ「ぼったくり」だなんだという件の「元社労士」は、他の商売もすべて否定するんですかね。

まあ、プロフィール見ると、もともと公務員だったみたいなので、そのへんの商売感覚が全くわかってなかったのかな?

4年半前の知恵袋に絡んで2本も記事を書いてしまいましたが、「嘘」や「不当に社労士等を貶める内容」がネット上で消されることなく残っている以上、いつ書かれたかに関係なく、このようにきちんと説明しておいたほうが良いと思い記事にしました。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士(登録番号 第23130006号)。社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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