労働災害で一家の大黒柱が亡くなってしまうと、残された家族の生活は大変苦しくなります。そのため労災保険では、遺族補償年金で遺族の生活を補償しています。
この年金をもらえるのは、死亡した人の収入で生計が維持されていた「配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹」です。生計が維持されていたかの判断は、配偶者らの収入のほか、同居していたかどうか、亡くなった人以外に扶養義務を負う人がいるかなどが考慮されます。
受給権は基本、「配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹」の順番で、最も順番が先の人が受給権者となります。例えば、配偶者がいなくて子どもと父母がいる場合、受給権は子どもにあり、父母には支給されません。
では、子どもが二人いる場合はどうでしょうか。このケースでは、どちらにも受給権があります。受給権者が複数人の場合、支給は一人に行われますが、その人が総額をもらうのではなく、人数で割ることになります。
給付額は、労災で亡くなる直前の三カ月間の給料を平均して算出した日額が基準。年金をもらう権利を得た人に生計を同じくする家族がいる場合、つまり、亡くなった人の収入で生活していた遺族が複数人のときは、支給日数が増えます。例えば、年金をもらうのが妻で、小さい子ども二人と同居している場合、遺族は三人で年間計二百二十三日分が支給されます。
受給する遺族が死亡すると年金はもらえなくなります、受給権者が子どもなどで、高校を卒業する時期になったときも同様。これらでは受給権が下位の遺族に移ります。この繰り返しで、権利のある遺族がいなくなるまで支給は続きます。
中日新聞H28.9.8付「働く人を守る労働保険」より転載
連載始まって5ヶ月が経過しましたが、一番ドタバタした原稿です。
ドタバタの原因は詳細は自分の恥部をさらすようなものなので、著者の意向(「アーティストの意向」風)で省きますが、すべてわたしにありますのであしからず。
で、ドタバタの影響でちょっとわかりづらいところがあるので解説させていただくと、記事の4段落目の受給権が子どもにあるけど、その子どもが2人いるという場合の話。
年金を受ける権利は子ども2人、どちらにもあります。
で、年金額も当然2人で分けるわけですが、その合算額を代表してどちらか1人がもらうことになりますよ、というのが4段落目の話です。
人数が3人になれば3人ともに受給権はあるし、年金額も3人で分けたものになるけれど、実務上はその中から代表者を決めてその人が全額をもらう、というわけです。
受給権者それぞれに権利があるので、例えば代表者が持ち逃げしても、裁判等になれば、きちんと他の人にもあげなさい、ということになるはずです(これで裁判になったって話は聞いたことありませんが)。