今日の朝日新聞にあまり質のよろしくない記事があったので少しだけ解説。
ゆれる派遣:3 無期雇用にも明と暗 6社目、得意分野に張り合い - 朝日新聞デジタル
派遣社員に関しては現在、特定の業種を除き、3年までしか同一業務に派遣することができません。これを派遣元の会社で正社員となっている社員に関してはどのような業務でも無期限で派遣できるよう法改正しようという動きがある、というのが記事の前半の説明で、その好例となっている会社を「明」として紹介しています。
まあ、これはいいでしょう。
この記事の問題は「暗」の方。
「暗」の代表例となっている会社は08年のリーマン・ショック後、仕事が激減。派遣先がなく派遣労働者として派遣されない「未稼働者」が増加。また、それと時を同じくして会社の社長が労働者に対して「不良在庫」などと発言。
そのため、労働者の1人が労働組合へ加入しようとしたのですが、会社はそれ理由に自宅待機を命じたため、東京都労働委員会はこれを不当労働行為と判断しました。
社長の発言は「パワハラ」、労組加入を理由とした差別は「不当労働行為」。
この点で、会社に非があるのは明らかです(この程度で裁判でパワハラが認められるかは疑問ですが)。
しかし、こうした問題は「派遣業」に限りません。
社長の発言は文字面だけ見ると派遣業特有の表現かもしれませんが、パワハラ問題自体は他の業種でも見られます。労組加入を理由とした差別自体も同様です。
つまり、「暗」の会社の問題は「派遣業という業種の特殊性」に基づいたものではなく、労使間トラブルがたまたま「派遣業」で起こったにすぎないわけです。その意味では「ゆれる派遣」とと銘打ったこの記事には致命的な欠陥があるといえるでしょう。
記事の最後に
「無期だからいいわけではない。派遣会社がひどければ、不安定なことに変わりはない」
とありますが、上の言葉から「派遣」という言葉を取り除いてみれば、
「無期だからいいわけではない。会社がひどければ、不安定なことに変わりはない」
と、他の業種でも当てはまる言葉になるのもその証左でしょうね。