今回はこちらのニュースについて。
大阪の医療法人常磐会「ときわ病院」10日に閉鎖へ…給料未払い“事実上の倒産”
上記の記事だけだと経緯がわかりづらいですが、こちらの記事を読むと
給与不払いのときわ病院を捜索…100人規模、2千万円規模か 大阪労働局
要するに病棟を閉鎖する際に職員を大量に解雇にした、それはまあ、どこの落ち目の企業にもある規模縮小による解雇です。ただ、この病院は、病棟閉鎖前の労働分の給与を支払っていなかったということのようです。
どちらの記事を読んでも11月分の給与の話しか出てこないので、10月分はもしかしたらきちんと払われていたのかもしれません。
だとすると、1カ月早く病棟閉鎖してれば払えたんじゃないの? と思わなくもありません。
それとも、雇用保険の失業給付があるから最後の給与払わなくてもいいとか病院が思っちゃったのか…。
いずれにしても、新聞記事しか情報がないので憶測や想像でしか何も言えないのですが。
1. 国が未払賃金を立て替える?
今回はこの件に深入りするというよりは、上の記事内で紹介されていた、
企業倒産により退職した労働者に対しては、国が未払い賃金の8割を立て替え払いする制度がある。
こちらの制度について。
多くの人からすると、そんな制度あるの? という話かもしれませんが、あるんです。
まるで潰れた銀行の預金を国が補填するかのような制度が賃金にも。
2. 立て替え率は80%
この未払賃金の立替払事業は会社が破産(※)等した場合に、未払いとなっている賃金を国が補償するもの。
そのため、賃金や残業代の未払いがあるけど、会社はピンピンしてるという場合、この制度の対象にはなりません。
この制度で保証される未払賃金は未払賃金総額の80%。残念ながら未払賃金の全額が補償されるわけではありません
また、未払賃金総額が2万円未満の場合は立替払はそもそも行われません。
※ 具体的な事例は以下のとおり
- 破産手続開始の決定を受けた場合
- 特別清算開始の決定を受けた場合
- 再生手続開始の決定を受けた場合
- 更生手続開始の決定を受けた場合
- 賃金を支払うことができない状態になったことについて、退職したものの申請に基づき、労働基準監督署長が認定した場合
3. 上限もある
未払賃金の立替払事業と呼ばれるこの制度の財源は労災保険です。
詳しくは説明しませんが、労災保険の社会復帰促進等事業の1つが未払賃金の立替払事業なのです。
こうした事情から労災に加入していない事業所ではこの制度の適用は受けられません。
また、先ほど「潰れた銀行の預金を国が補填」というたとえを使いましたが、こうした預金の補償についてはペイオフにより2000万円までしか補償されませんよね。
未払賃金の立替払事業についても同様で上限があります。
上限は年齢により異なり以下の表のとおり。
退職日の年齢 | 未払賃金総額の上限額 | 支払額の上限額(左列の80%) |
30歳未満 | 110万円 | 88万円 |
30歳以上45歳未満 | 220万円 | 176万円 |
45歳以上 | 370万円 | 296万円 |
つまり、30歳未満の人で未払賃金が150万円あったとしても、立て替えてもらえるのは88万円までだよ、ということです。
さすがに上記の表の上限額になるまでタダ働きする人はいないと思いますが、突然会社が潰れてもこうした制度があることを知っておけば、少しは余裕が持てるのではと思います。
なにより、この制度は労働者の請求がないと利用できないので!
By KishujiRapid - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=21193211