労災保険制度

従業員が就業中に暴行などの犯罪に巻き込まれたときに会社がすべきこととは

2016年8月30日

今人気の二世タレントが強姦致傷事件を起こし世間は大騒ぎですが、一世のほうも二世のほうも事件が起こるまで全く知らなかった名古屋の社労士川嶋です。

で、今回の事件なんですが、加害者が有名人ということもあり、どうしても加害者の方にばかりスポットがあたっています。

まあ、事件が事件なんで被害者の方にスポット当てるとセカンドレイプの問題も出てくるのですが。

今回被害に遭われたのはホテルの従業員だったわけですが、性犯罪にかぎらず、こうした就業中にみなさんの会社の従業員が犯罪被害に遭った場合、会社はどうすればいいのでしょうか。

 

1. 暴行などにより怪我を負った場合

業務中に客に因縁をつけられたりして、結果暴行を受け怪我などを負った場合、労災の第三者行為災害に当たります。

第三者行為災害というのはまあ、会社や被災した労働者以外の「誰かのせい」による事故とだけ覚えておいてください。

第三者行為災害の場合、加害者であるその「誰か」は何らかの形で国の労災給付を負担することになります。

なので、店員と揉めてぶん殴ってしまった場合、お縄に付くだけでなく、後で国から労災の給付分を請求されることになるわけです。働いてる人に手を上げるのは怖いことなんですよ、実は。

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そのぶん殴りが人生の下り坂

いずれにせよ、怪我などの治療や、休業中の生活保障などは労災の方から出ますので、会社としてはその点は心配ありません。

会社としては労災関係の手続きをきちんと行えば問題ないわけです。

もちろん、被害者に対する、犯罪に遭われたことによる精神的なショックに対する配慮も必要となるはずです。

 

2. 犯罪者が責任を負うのが基本

客と従業員が揉めた末での暴行も当然、犯罪は犯罪なのですが、それとは別に業務と関連性のない犯罪に巻き込まれる場合もあります。

例えば、ひどい別れ方をした元恋人が職場に乗り込んできて従業員を刺した、というのは、業務中ではあるけれど、業務のせいで怪我をしたわけではありませんので、労災とはなりません。

また、業務中の事故ではないですが、大阪南労基署長(オウム通勤災害)事件というものがあります。

通勤中にある会社員が、公安のスパイと間違われオウムの信者に殺害されたという事件です。その際、労基署・裁判所はともにこの死亡は通勤災害とは言えないと判断しています。

通勤中に起こったにもかかわらず、通勤災害と認められなかったということは、同様のことが業務中に起こっても業務災害とは認められないと推測できます。

ちなみに、この件、通勤災害ではないということなので、国は給付等の負担をしないよということなのですが、遺族給付のこととか考えると、亡くなった方の遺族にとってはちょっと可哀想な感じもします。オウムに訴えても賠償金をちゃんとくれるかわからないですし。

(同じく通勤中に起こった地下鉄サリン事件は通勤災害と認められたりしてるだけに…)

 

3. 第三者行為でも会社が責任を問われる場合

とはいえ、仮に上記のようなことが業務中に起こって業務災害と判断されると、会社は安全配慮義務などの使用者責任が問われることになります。

そうなると、会社も損害賠償を請求される可能性があるので油断なりません。

では、そういったことがありうるのかといえば、その可能性はゼロではありません。

例えば、銀行やコンビニ、すき家(もう忘れてやれ)など強盗被害に遭いやすい事業所で防犯設備や体制がきちんとされていない場合、会社は安全配慮義務を怠っていたと責められる可能性があるからです。

 

 

追記:まさに今回の記事のような事件が、記事をアップした直後に出てました

東京・港区議を逮捕 タクシー運転手を殴った疑い

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士(登録番号 第23130006号)。社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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