来月より年金の支給額が1%減額になります。
この減額措置は来年および再来年も行われ、それぞれ1%、0.5%を減額します。つまり、年金額は3年間で2.5%マイナスとなるわけです。
よっぽどおめでたいか現実逃避な人間以外、このままでは年金財政が持たないことは誰の目にも明らかでしたから、当然の措置ではあるのですが、その理由がいただけません。
年金額というのは収めた保険料の期間と収めた保険料の額(国民年金は収めた期間のみ)によって決まりますが、それだけでは、経済状況の変化によって物価が変動した場合、年金額の実質的価値が大きく上下してしまいます。
そのため、物価の変動により年金額を変動させる「物価スライド」という制度でこれに対処してきたのですが、平成12年度に0.3%下がった際、この物価の変化を年金額に反映させず据え置いたのです。
政府としてはまたすぐに物価が上がると思っていたのでしょうが、翌年度もその翌年度も物価は下がりましたが、一度据え置いてしまった手前、年金額にこの物価変動分も反映させませんでした。
しかし、流石に「物価スライド」がきちんと行われていた場合(本来水準)と、据え置いた分の年金額(実際の支給水準)との差があまりに大きくなってしまったため、厚労省は「物価スライド特例措置」という措置を行わざるを得ませんでした。
「物価スライド特例措置」とは、本来水準と実際の支給水準との差を埋めるための制度で、一定の水準までは、物価が上がってもそれを年金額に反映させない一方、物価が下がった際には年金額に反映させるものです。
ですが、その後も物価は下がり続けたため、本来水準と実際の支給水準との差は、縮まるどころか広がるばかり、そして、現在のその差は2.5%。
あいだが長くなりましたが、今回の年金額の減額というのは結局、過去の失策の埋め合わせなわけです。
平成12年度に減額せずに特例法で乗りきったばっかりに、平成27年4月までに累計で9.4兆円もの年金受給者に対する払いすぎが発生するそうですが、その分、保険料を支払う現役世代は損をしているわけです。
まあ、9.4兆円なんて現在の年金財源の積立不足は1000兆円を超えているので、焼け石に水のようなものですが、こうした現状維持思考が今の破綻寸前の年金財政状況を生んだとも言えるのだから根の深い話です。