社労士

社労士試験は運ゲーだ、繰り返す、社労士試験は運ゲーだ

2016年8月19日

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来週の日曜日はいよいよ社労士試験ですね。

幸か不幸か、わたし今年の試験官から見事落選しました。

社労士1年目から3年連続でやらせてもらってたんですが、今年はなし。

こんな記事書いたからかな~、

国家試験の恥だから社労士試験の合格率をいじるのはもうやめろ

とか思ったけど、最近全く支部の活動に出てないせいかもしれないし、って、あっ。

試験官の選出って「厳正なる抽選」で決まってるんだった。

なので。単に抽選に外れたから、ということにしといてやります。

 

1. 受験申込者数は横ばい

社労士会の話になると、おまえは取り敢えず中指立てずにはいられないのか、って話ですが、本題は社労士試験の話です。

今年の社労士試験の受験申込者数は約52000人だそうです。

社労士試験オフィシャルサイト

昨年の受験申込者数が52612人なので、ほぼ横ばい。

ここ数年の減少傾向にはちょっと歯止めはかかったのかな、と言ったところ。

ちなみに、申し込みをして実際に試験を受ける人の割合である受験率は、毎年8割弱ぐらいで落ち着いているので、実際に受けるのは40000人くらいかと思われます。

 

2. 社労士試験は運ゲー

で、社労士試験を語る上で絶対に欠かせないのが選択式です。

この選択式があるかぎり、社労士試験は運ゲーです。パチンコや麻雀と一緒。

ただ、麻雀でも実力のある人とない人の勝率が違うように、社労士試験も相応の実力があるかないかで運ゲーの勝率も変わってくるのは確か。

でも、運ゲーであることに変わりはない。

 

3. 各教科ごとにボーダーライン

とはいえ、どんな試験でもある程度運が絡むのはどうしようもないです。

わたしも昔、大学受験で、過去5年間一度も出題されてなかったので漢文の勉強を全くしなかったら、その年に限って出題されて結果落ちるという悲運を経験したこともあります(受験要項には漢文は対象外とは一言も入ってなかったので、100%わたしが悪いんだけど)。行きたかったな~、早稲田辞めてただろうけど)。

ただ、社労士試験の運の絡み方は正直、すごく理不尽だと思うんですよ。

ご存知ない方に説明しておくと、社労士試験というのまず、すべてマークシート。

この時点で、ちょっと運ゲー(ただし、受験者にいい意味で)。

出題形式は5肢択一の択一式と穴埋めの選択式の2つに分かれていていて、それが教科ごとにそれぞれ出題されるようになっています。

そして、全体の総得点とは別に、教科ごとにボーダーラインが定められていてどんなに全体の総得点が高くても1教科、例えば、択一の厚生年金がボーダーラインに満たなかったり、選択の労災保険がボーダーラインに満たなかったりしたら、それで不合格。来年またおいで、となるわけです。

 

4. 選択式は運ゲーの権化

で、正直、択一でボーダーラインを切るってまずないわけです。1教科10問あって4問以上がボーダーなので。

総得点の合格ラインを考えると6割から7割は取らないといけないし、1問や2問意地の悪い、作ってるやつの顔を見た上でビンタしたくなるような問題があっても、他をきっちり抑えればなんとかなる。

一方、選択式は5問中3問がボーダーライン。

択一式が4割ボーダーなのに、選択式が6割ボーダーって、なにその一問の重みの違い、って話で、これが衆院選だったら裁判間違いなしなんですが、出題される文章が簡単なものなら別に怒らないというか、みんな解けるので、まあ、いいんですよ。それこそ、どこの参考書にも出てくるような法律の条文をマークシート式で埋められないなら受験生の方に問題がある。

ただ、現実には半年、一年、あるいはそれ以上勉強してきた受験生が「何これ、初めて見るよ」みたいな文章を元に問題が出題されることがあるわけです。

もうこうなると、トゲ付きのメリケンサックで往復ビンタです。

ちなみに選択式は教科が8つあり、往復ビンタものは毎年1つや2つは必ずある。

結果、1点2点しか取れなくて、涙を呑む、ということがあるわけです。

社労士試験初受験の時はわたしもこれで泣きました。

 

5. 毎年救済←その時点でなにかおかしい

で、これは流石に運ゲーすぎるということで、社労士試験には救済、という制度があります。

これは、ボーダーラインを下回る受験生が多く出た教科のボーダーラインを下げるというもの。

救済は択一式・選択式を問わず行われることがありますが、だいたいは選択式への適用。

というか、選択式では、救済が行われない年の方が珍しいくらい、毎年のように救済が行われています。

つまり、社労士試験は救済が前提の難易度のバランスとなっているわけ。

ビデオ判定でいちいちゲームが止まる今のプロ野球みたいなもの。

普通ならテニスのチャレンジやアメフトみたいに、徐々に制度を改善していくものですが、何年も何年も変わることなく救済は続いている。

つまり、「毎年選択式で救済が行われている」というのは、社労士試験の欠陥をずっと放置していることにほかならない。

試験結果発表後はたいてい「どうしてこの教科で救済が行われないのか?」といった愚痴や不満が不合格者から出るし、そこに目を奪われがちですが、実際の問題は毎年救済が出る、という制度上の欠陥の方なのです。

 

6. なぜか合格率が安定する不思議、からの…

では、毎年救済が出る、なんていう、制度上の欠陥、いわば社労士試験の恥部を毎年晒しながらも、社労士試験の運営者たちは制度を変えようとしないのでしょうか。

それはこの救済という制度で、合格者数を調整しているから。

社労士試験の合格者は、一部例外を除き、毎年7~8%前後と「安定」しています。

にもかかわらず、昨年の合格率は2.6%。

調整すればおそらく7~8%にできたはずですが、それをしなかった。その理由は未だに不明です。

つまり、試験問題も運ゲーなら、救済が行われるか行われないかも運ゲーなわけです。

 

7. 裁量は権力の源泉

わたしは別に運ゲーだから社労士試験なんて受けないほうがいい、と言いたいわけではありません。

運ゲーだろうがなんだろうが、受かんないことには社労士になれないわけですし。

ただ、救済とかいう、わけのわからないことをしなくてもいいような制度にはすべきだと思っています。

ちょうどオリンピックが今やってますが、例えばマラソンの選考なんかだと、協会みたいなところが「各大会の成績を考慮して選考する」みたいなことをしてますよね。

で、たまにその選考でなんでこの人ではなくこの人が選ばれたの? みたいなことが起こる。

マラソンじゃないけど、水泳では千葉すずがスポーツ仲裁裁判所に訴えたこともありました。

でも、陸上競技や水泳のように数字ではっきりと実力がわかる競技であれば、わざわざ協会が選考なんかしなくても、この大会とこの大会でタイムの良かった◯人を選考、みたいにしておけば、協会なんかなくても決められるわけです。

でも、そうしてしまうと協会の存在意義がなくなってしまう。

また選考するという、人の運命を握ることもできなくなる、すなわち、権力も失うことになるから、そういうふうには絶対にしないわけです。

わたしが救済のような裁量措置が気に喰わないのは、そうした裁量があると、権力の発生源になりうると考えているからです。

 

8. 訴訟にまで発展している昨年の社労士試験

百歩譲って裁量的に合格者を決めるのであれば、権力を持つというのであれば、それに伴う責任というものがあってしかるべきでしょう。責任も持たずに権力だけあると、森喜朗みたいになるわけだから。

例えば、サッカーの監督は選手を選ぶ権限を持つと同時に結果が出なければ辞めるかクビになる。

社労士試験の運営者は去年の「2.6%事件」について何か責任を果たしたでしょうか? 説明責任の1つも果たしてないから、訴訟にまで発展しているわけです。

aijのブログ

 

こうやって、社労士試験の批判すると、社労士の格や品位を貶めるようなことを言うなとお叱りを受けそうですが(幸か不幸か、叱られたことはないけど)、そんなものよりも理不尽でアンフェアな試験が存在していることのほうがわたしは許せないので、社労士試験の批判は今後もしていくことになると思います。

なにはともあれ、今年の社労士試験に受験される方々、本番で実力を出しきり、運を味方にできるよう頑張ってください。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士(登録番号 第23130006号)。社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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