労災保険制度

労災保険を食い物にする者達

2013年7月16日

もう秋ですね

って言いたくなるくらいに、先週に比べると週末から今週にかけては過ごしやすい日が続いています。

先週はあまりの暑さに、お客さんの従業員が1日に3人も熱中症で倒れて労災申請、なんてこともありましたが、このまましばらくは千年猛暑もお休みいただきたいところ。

さて今回は労災保険の話。

会社や個人事業主は人を一人でも雇う場合、この労災保険に加入しなければなりません。

労災保険というのは、仕事の最中に怪我した場合や、仕事が原因で病気になった場合に、その分の治療費や、怪我や病気で働けないあいだの収入を保証する保険です。

健康保険と違い、病院にかかっても自己負担分が存在せず(つまり、全額保険で負担)、先に述べたように働けないあいだの収入を保証する給付が存在するため、健康保険に比べるとかなり手厚い保険になっています。

労働災害が起こっても国がその分の治療費を負担してくれるわけですから、経営者にとっても労働者にとっても悪い話ではない、と思いきや、経営者からすると労働災害が増えると、保険料が高くなることがあるためちょっと厄介だったりします(いわゆる「労災隠し」が起こるのもこのため)。

一方で、労働者からするとかなり美味しい保険のため、ちょっとした怪我(業務とほとんど関係のないようなものも含めて)でも申請したがる人は少なくありません。しかし、労災保険給付を受けるためには労働基準監督署の認定が必要。なので、申請したからといって必ず給付をもらえるわけではないのです。・・・本来なら。

実はこの労災保険、労働者にとって美味しいのはもちろんのことですが、医療費の全額を国が負担してくれるため病院にとってもかなり美味しい(点数あたりの医療費も労災のほうが高いとか)。

しかも、労災の書類には殆どの場合、お医者さんの証明が必要となります。

労災認定の場合、その労働災害が起こった状況や仕事との因果関係のほうが重要なので、医者の証明1つで労災認定されるとは限りませんが、一度認定されてしまえば話は別。本当は大したことのない怪我や病気でとっくに治っているにも関わらず、まだ治療中、といった証明書を書くことができます。

そうなると、治療中なら労働者は病院に通わなければならないし、治療中なら労働者は治療後(障害が残った場合に限る)よりもより多くのお金を保険からもらうことができます。医者も労働者もWinWin。困るのは国だけ、と思いきや社会保険料の関係で会社側にも負担を強いられる可能性があります。おまけに労災での怪我や病気の治療中は解雇が禁止されています。生活保護者と病院の甘い関係は比較的有名です。ほとんど同じような問題なのに、こちらはあまり問題になっていないのが不思議な感じもしますが、それはこの国の殆ど人間が労働者だからでしょう。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士(登録番号 第23130006号)。社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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