労災保険制度

テーマは業務災害、「仕事による心の病も(働く人を守る労働保険第18回:中日新聞連載)」

2016年8月4日

 

けがや病気で病院に行く場合、通常は健康保険か国民健康保険を利用し、保険から医療費の一部を給付してもらいます。もし、けがや病気が労働災害によるものなら労災保険を使います。本当は仕事が休みの休日にけがをしたのに、労災とうそをつくと不正受給となります。やめましょう。

とはいえ、仕事の休憩時間中のけがなどのように労働災害に当たるか分かりづらいケースもあります。そこで労災保険が適用される労働災害について考えてみます。

労働災害には「業務災害」と「通勤災害」の二種類があります。けがや病気の原因が業務だと業務災害、通勤が原因だと通勤災害です。

業務災害の判断は「業務遂行性」と「業務起因性」をともに満たしていることが条件。「業務遂行性」は働く人が「会社の管理下」にある状態を言います。基本的に業務時間中はすべて業務遂行性があります。後片付けや休憩中も、会社の管理下にあるとされます。

「業務起因性」は、けがや病気の原因が業務と関連していることをいいます。業務で使う機械でけがをした場合はもちろん、セクハラやパワハラによるメンタルヘルス、長時間労働による過労死なども業務起因性が認められます。

休憩中は、さきほど説明したように「業務遂行性」はあります。「業務起因性」はというと、「階段で転んで骨折した」など、けがが会社の設備によるものであれば「ある」といえます。一方、同僚とキャッチボールをしていた場合など、会社の設備と無関係だと認められません。

業務災害かどうかは最終的には労働基準監督署が判断します。判断に迷ったら、近くの労働基準監督署に相談してください。もう一つの労働災害の「通勤災害」は次回、解説します。

中日新聞H28.8.4付「働く人を守る労働保険」より転載

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士(登録番号 第23130006号)。社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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