派遣には登録型派遣と常用型派遣がありますが、特に登録型派遣については雇用保険や社会保険などちょっとわかりにくい部分もあるので、今回はその解説。
この記事の目次
1. 常用型派遣の雇用保険や社会保険
常用型派遣は派遣元(派遣会社)と労働者が労働契約を結び、その労働契約に基いて派遣先に派遣されます。
つまり、派遣元と労働者が労働契約を結ぶことが大前提なわけです。
働く場所は派遣先だけど、労働契約を結ぶのは派遣元なわけです。
よって、労働条件によっては、労働契約を結んだ段階で雇用保険や社会保険に入れる必要もあるし、有給や時間外手当の計算等もしなくてはなりません。
2. 登録型派遣は派遣開始とともに労働契約が始まる
一方の登録型派遣は、派遣労働者が派遣会社に派遣登録をし、派遣先から派遣依頼があった際に、派遣会社は登録リストのなかの労働者を派遣することになります。
登録の段階では派遣会社と登録者のあいだには労働契約はありません。これは人材紹介会社に登録したからといって、人材紹介会社と登録者が労働契約を結ぶわけではないのと同じ。
では、登録型派遣の場合、労働契約を結ぶことはないのかといえばそういうわけではありません。
登録型派遣では、実際に派遣が始まった段階で、労働契約が開始されます。
この場合の労働契約の締結先は常用型と同様に派遣元です。
つまり、登録型派遣であろうと常用型派遣であろうと、労働契約を結ぶのは派遣元なわけです。
3. 登録型派遣と雇用保険
登録型派遣というと、一昔前は日雇い派遣のイメージでしたが、現在では日雇い派遣は禁止されていて、最低でも31日以上の派遣期間が必要です。
この31日という期間、実は雇用保険の加入条件と同じです。
そして、すでに述べたように、登録型派遣といえど、派遣開始と同時に派遣元と派遣労働者のあいだで労働契約は開始されます。そして、労働契約があるのであれば、条件を満たす限り派遣元は雇用保険に加入させる必要があります
雇用保険の場合、期間が31日以上でも、週の所定労働時間が20時間未満であれば、加入させる必要はないので、派遣労働者すべてを雇用保険に加入させる必要があるわけではありませんが、週の所定労働時間次第で加入させる必要はあるわけです。
上記の条件以外にも、学生だったり4カ月以内の季節型労働だったりと、雇用保険には加入できない条件というものは存在します。
当然、登録型派遣もそうした制約を受けますが「(登録型・常用型問わず)派遣だから加入できない」というタイプの制約は存在しないことは覚えておいたほうがいいでしょう。
4. 登録型派遣と社会保険
社会保険についても雇用保険と同様、「(登録型・常用型問わず)派遣だから加入できない」というタイプの制約はありません。
社会保険の場合、有期契約の場合、2カ月以上の雇用見込みがある場合、社会保険に加入させる必要があります(契約期間について詳しくはこちら)。
ただし、通常労働者と比べて、1日と1週の所定労働時間が4分の3未満または月の所定労働日数が4分の3未満であれば加入させる必要ありません。
(今年の10月より、社会保険の適用範囲が拡大されますが、それについては長くなりそうなので明日書きます。)
他に4カ月以内の季節的な業務や、6カ月以内の臨時的業務に派遣する場合も加入させる必要ありません(これらは社会保険の適用除外なので)。
5. 派遣先が変わる場合の取扱い
また、これは社会保険、雇用保険共通ですが、派遣の場合、数ヶ月で派遣先が変わることは普通にあることです。
常用型の場合は、派遣元と常に雇用契約を結んでいるので派遣先が変わったからといって、すぐに社会保険や雇用保険を外す必要が無いことはすぐにわかっていただけると思います。
一方、登録型派遣の場合、派遣開始で労働契約が始まり、派遣終了で労働契約が終了します。
ただ、登録型派遣の場合、派遣終了で労働契約が終了したとしても、次の派遣が始まるまでの空白期間が1ヶ月を超えない場合は派遣元との労働契約が継続しているものとみなされます。
そのため、空白期間が1か月以内の場合は、社会保険や雇用保険の資格を喪失手続きをする必要はありません。
6. まとめ
以上となります。
社会保険や雇用保険に「派遣」という理由で加入できない条件ないように、労働基準法についても、派遣という理由で適用されない定めはありません。
よって、派遣であっても条件を満たせば有給を取ることができるし、法定労働時間を超えれば残業代も付くわけです。
そういえば「ハケンの品格」では、派遣の主人公が残業しないことで主人公が周りから文句を言われることがありましたが、実際には残業するかしないかは派遣元と派遣先の契約によるところが大きい。なにせ、残業命令するのは派遣先ですが、残業代払うのは派遣元ですからね。