最近は、六十歳を過ぎても元気に働く人が増えました。しかし、基本手当(失業保険)がもらえるのは六十四歳まで。六十五歳以上の人には、基本手当とは別に「高年齢求職者給付金」があります。両者の違いは大きく二つです。
まずは「もらえる条件」。基本手当は原則、過去二年間に十二カ月以上、雇用保険に加入していることが必要でした。一方、高年齢求職者給付金では、過去一年間に六カ月以上と短くなっています。
次に「もらえる日数」です。基本手当の場合、最低でも九十日の日数がありますが、高年齢求職者給付金は三十日か五十日の二種類しかありません。条件は緩いけれど、基本手当よりもらえる日数は短くなっています。
雇用保険では、手当をもらう仕組みだけでなく、保険料を納める仕組みも六十五歳前後で違いがあります。六十四歳以上になると雇用保険料が免除されますが、六十五歳以降は新たに雇用保険に加入できなくなります。高年齢求職者給付金ができた三十年余り前は、六十五歳以上で新たに就職することが珍しかったためです。
時代は変わり、いまの日本では六十五歳以上で働いている人は七百三十万人もいます。国は現状に合わせようと、法律を改正しました。来年一月からは六十五歳以上でも新規に雇用保険に加入できるようになり、二〇二〇年四月からは六十四歳以上の雇用保険料の免除も廃止されます。
実は高年齢求職者給付金の制度ができる前は、雇用保険に年齢による差はありませんでした。誰かに雇用されて働くお年寄りが少なく、考慮する必要があまりなかったからです、でも、これからは基本手当への統一が議論されるようになるかもしれません。
中日新聞H28.6.2付「働く人を守る労働保険」より転載
というわけで、今回は高年齢求職者給付金と、それに絡めて、今国会の法改正の話も入れてみました。
ただ、法改正については、こちらの記事がより詳しいです。
また文中の730万人というのはこちらの資料から引っ張ってきたもの。
労働力調査(基本集計)平成27年(2015年)平均(速報)結果の要約(リンク先PDF 参照:総務省統計局)
2014年と比べてなんと49万人も増えていて、すでに全体の就業者数に占める割合は1割を超えています。そのような状況で、高齢者だけ雇用保険で扱いを別にするってのはもう時代遅れなんではないでしょうかねえ、というのが本文の最後の部分です。