先日、厚生労働省が「保活」についての実態調査の結果を公表しました。「保活」とは子供を保育所に入れるために、その親が行う活動のこと。
最近、
こちらのブログが話題になったこともあって、待機児童の問題に社会的な注目が集まっています。
それもあっての今回の調査だったと思うんですが、個人的には不完全なものに感じました。
本記事は調査内容の解説ではなく、調査方法やそのまとめ方への疑問がメインなので、調査の詳しい内容が知りたい方は厚労省のウェブサイトをどうぞ。
「『保活』の実態に関する調査」の結果等について(平成28年5月20日)
上記の調査結果を簡潔にまとめている同業者さんのブログもあります。
保活っていつから始めてる?どれくらいの人が希望通りの結果になるの?
1. 不完全な理由:東京と他の地域を分けてない
今回の調査が不完全な理由は↑これです。これがすべて。
今回の調査、調査対象は
政令指定都市及び平成27年4月1日現在で待機児童が50人以上いる市区町村において、平成28年4月からの認可保育園等の利用開始に向けて保活を行った保護者の方。
「保活」の実態に関する調査の結果(厚生労働省 リンク先PDF)
とされていて、有効回答数は3781件あったそうです。
政令指定都市、つまり、大都市や地方中核都市で、待機児童が50人以上と多い地域の保護者の方から色々聞いたというのが今回の調査なわけです。
まあ、「政令指定都市」という要件はいいです。しかし、「待機児童50人以上」という要件はいただけない。
なぜなら、待機児童の数というのは、東京が飛び抜けて多いから。以下の図は厚生労働省の資料「保育所等関連状況取りまとめ(平成 27 年4月1日)」(リンク先PDF)からの抜粋ですが、
去年の4月の段階で、東京だけ7800人の待機児童がいるわけ。全国の待機児童の合計が23000人ですから、待機児童のうちの3分の1は東京にいるということになる。
一方で、待機児童対策に力を入れてる横浜市や名古屋市のある神奈川県や愛知県というのは、実数だけでなく人口比で見ても待機児童は東京より明らかに少ない。
このように「政令指定都市で待機児童50人以上」の範囲の中でも、地域によって大きな差があるのがわかります。
にもかかわらず、今回の調査ではそれらをひとまとめ。このような調査で本当に「実態」がつかめるのでしょうか? 待機児童解決の糸口がつかめるのでしょうか?
2. 東京は別の国
上述のとおり、待機児童の問題は東京だけの問題とは言わないまでも、東京が飛び抜けて深刻で、他の地域と差があることがわかります。
しかし、実は待機児童の問題に限らず、日本の中で「東京だけが他と異なる」ことは少なくありません。
こちらの記事
日本は2つの国からできている!? ~データで見る東京の特異性~
Twitterなどでかなり話題になった記事なので、目にした人も多いかと思いますが、例えば、電車の利用率で言うと、東京都民は他の地域の人と比べて圧倒的に高い。その一方で、マイカー通勤する人の割合は著しく低い。
他にも1人あたりの検索数や、検索ワードの違いが、Yahoo!が保有するビッグデータから明らかにされています。おそらく、もっと幅広く深く調べれば東京の特異性はより顕著になるはずだ。
もちろん、違いがあるのは東京とそれ以外の地域、という構図に限りません。
しかし、よく政治の問題で言われる、地方と都市の構図だけでなく、都市(東京)と都市(東京以外)の構図も今や存在していることを前提にしないといけなくなっているのは間違いないでしょう。
それでなくても、厚生労働省を始めとした官庁は霞が関、つまり、東京にあるわけですから、東京の視点で見たって地方の問題は解決するはずもない。また、東京の問題をあたかも日本全国津々浦々の問題のように言われても、地方もいい迷惑、混乱するだけなのだ。