その他法改正

熊本地震被災者のための厚生労働省からの社会保険・労働保険上の特例措置(4月20日現在)

2016年4月20日

遅れましたが、今回の熊本地震で被災された方々、お見舞い申し上げます。なかなか余震が収まりませんがお気をつけ下さい。

 

1. 厚生労働省からの特例措置

さて、本題。

昨日のヤフトピで、熊本県が特例措置として、今回の熊本地震支援のための募金やチャリティーに使用する場合、くまモンのイラスト使用について届出制(許諾不要)にするという発表が出てましたが、

くまモン、募金等でのイラスト使用は許諾不要に 熊本県が特例措置

実は、厚生労働省の方からも、社会保険や労働保険に関する様々な特例措置が発表されています。

平成28年熊本地震関連情報

以下、概要と解説。

 

2. 保険証なしでの医療機関の受診

保険証を持たずに避難している場合、

  • 氏名
  • 住所
  • 連絡先
  • 加入している医療保険者が分かる情報(けんぽ協会・健康保険組合の場合は会社名、国民健康保険の場合は住所及び組合名、後期高齢者医療制度の場合は住所)

を医療機関に伝えれば、保険診療(3割負担や1割負担)で医療サービスを受けることができるそうです。

保険証なしで医療機関を受診できます(厚生労働省)

 

3. 事業主および医療機関の証明書なしでの労災保険の請求

業務中や通勤中に地震にあい怪我した方は、通常の労災保険の手続きで必要になる事業主の証明や、医療機関の証明が不要となります。

なので、労災の申請書に、事業主の証明および医療機関の証明以外の箇所を埋めて監督署(5号用紙は病院)に提出すれば、労災保険の給付の請求ができます。

とはいえ、労災の書類は、その手のことをなにも知らない、被災された労働者の方やご家族の方が書くにはちょっと難しい、というかわかりづらいし、怪我したまま監督署に持っていくのも大変だと思うので、この辺りは現地や周辺地域の社会保険労務士の先生に頑張ってもらいたいところですね。

労災保険の請求は、事業主や医療機関の証明書がなくても受け付けます(厚生労働省)

 

4. 国民年金保険料の免除について

地震により、住宅や家財などの財産について、おおむね2分の1以上の損害を受けた方は、申請により、国民年金保険料の全額又は一部の免除を受けることができます。

注意点としては、申請しないと免除にならないこと。

また、国民年金の保険料が免除になると、将来もらえる年金額が減ります。全く支払わなかった場合よりはもらえますが、いずれにせよ、後で免除になった分の支払いをしないと、将来満額の年金をもらうことはできません。

国民年金保険料の免除について(厚生労働省)

 

5. 厚生年金保険料等の納付の猶予

会社など事業所から申請があった場合、会社が納めている厚生年金保険料、健康保険料、船員保険料、子ども・子育て拠出金について、納付が猶予されます。

こちらも申請がないと猶予されないので注意。

また、納付猶予なので、当然、将来的には支払わないといけません。

厚生年金保険料等の納付の猶予について(厚生労働省)

 

6. 失業の認定日の変更

地震前に失業しハローワークで失業手当の手続きをしていたけれど、地震の影響で、失業手当の手続きのためにハローワークに行けない場合は「失業の認定日の変更」ができます。

失業の認定日とは、過去の失業状態&求職活動について、ハローワークが確認する日で、この日にハローワークに行かないと、失業手当はもらえません。失業手当をもらう場合、この失業の認定を4週に1回行う必要があります。

通常、失業の認定日の変更は、認定日の前日までに申し出ないといけないのですが、この特例で前日までにする必要はなくなりました。

熊本県熊本地方の地震等に伴う雇用保険失業給付の特例措置について(厚生労働省)

 

7. 失業手当の特例措置

今回の地震で、熊本県全域は災害救助法の指定地域となりました。

その関係で、地震の影響で一時的な事業の休止や廃止を余儀なくされた熊本県の事業所で働く方は、雇用保険に6ヶ月以上加入していれば、給付制限等なく失業手当(基本手当)をもらうことができます。

ただし、通常の失業手当同様に給付には離職票が必要になるので、会社側は離職手続きを行わないといけません。その際、「⑦離職理由」欄の「6 その他」に、被災により事業所が休業するに至ったため、一時的に解雇することを余儀なくされた旨及び当該離職者の再雇用予定年月日を明記する必要があります。

また、特例措置で失業手当をもらった場合も、通常の失業手当同様に、雇用保険をもらう条件に関わる様々な期間はリセットされるので注意が必要です。

熊本県熊本地方の地震等に伴う雇用保険失業給付の特例措置について(厚生労働省)

 

8. 最新情報は厚生労働省のウェブサイトをチェック

以上です。この記事では主に社会保険と労働保険に関わる特例措置について紹介・解説等させていただきましたが、

熊本地震に関する厚労省の最新情報はこちらで見ることができるので、定期的にチェックしておくと良いでしょう。

平成28年熊本地震関連情報

また、今後の動きについては東日本大震災での厚生労働省の取り組みが参考になります。

東日本大震災関連情報

今回はまだ、正式なアナウンス等はありませんが、東日本大震災の時と同様に、労働保険の納付猶予なども今後行われるかもしれません。←追記:4月22日に正式に告示されました。

 

9. ふるさと納税経由、熊本行き

あと、これは余談ですが、わたしも永江さんに倣って

年収500万円で妻と子供2人の場合で40000円!! そうだ。熊本の自治体にふるさと納税しよう

少ないですが、ふるさと納税経由で募金の方もさせていただきました(御礼品なしの完全寄付だから、モノ目当てみたいなつまんない勘違いはなきように)。

無題

単なる募金と違って、後で税額控除されるので懐も痛みません。支援する気持ちはあるけどなかなかお金が…、という方は積極的に活用しましょう。ふるさとチョイス経由ならクレジットカードから簡単に納付ができます。

だいたい、こんなこと言ってる名古屋市長に納税するくらいなら、

名古屋城を木造復元するだけで入場者倍増ってどんだけお花畑なんだ河村市長

熊本に納税したほうが100倍マシです。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士(登録番号 第23130006号)。社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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