ヤフトピにもなって話題沸騰のこちらの記事。
なんと、朝礼のため、通常より5~10分早く出勤させていたハローワークの職員に対して、その分の超過勤務の届出を提出させず、結果その分の手当を支払っていなかったそうです。
会社と求職者を結びつける役割を持ち、会社から出る求人内容・労働条件をチェックする立場のハローワークともあろうものが何やってんだか、という話ですが、公務員の残業がらみで言うと、つい最近こんなこともありました。
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公務員っていうのは、与えられた予算は全て使い切らないといけない人種であることはよく知られていますが、逆を言えば、与えられた予算を超えるわけにも行かないんで、こういう事が起こりうるのでしょう。
ちなみにですが、一般の地方公務員といえど、労働基準法の適用はあります。一部、適用のない項目もありますが、基本的には適用されます。(国家公務員は適用除外です。)
0.1. 公務員の世界はノータイムカード
ただ、こうした公務員の世界でのサービス残業問題というのは氷山の一角かと思われます。
というのも、公務員の世界って基本的にタイムカードがないから。基本的になので、あるところにはあるはずだけど基本ない。
これについては、以前、国会答弁でも問題視されていて、
四 タイムカードで、正確な労働時間が算定できるか否かの疑義がある。
判例には、「就業開始前の出勤時刻については余裕をもって出勤することで始業後直ちに就業できるように考えた任意のものであったと推認するのが相当であるし、退勤時刻についても既に認定した営業係の社員に対する就労時間の管理が比較的緩やかであったという事実を考えると、打刻時刻と就労とが一致していたと見做すことは無理があり、結局、原告についてもタイムカードに記載された時刻から直ちに就労時間を算定することは出来ないと見るのが相当である」とされた三好屋商店事件(東京地判、昭和六十三年五月二十七日)、や「被告におけるタイムカードも従業員の遅刻・欠勤を知る趣旨で設置されているものであり、従業員の労働時間を算定するために設置されたものでないと認められる。したがって、同カードに打刻・記載された時刻をもって直ちに原告らの就労の始期・終期と認めることはできない」とされた北洋電機事件(大阪地判、平成元年四月二十日)など、タイムカードで直ちに労働時間を算定することができないと否定的な立場のものも少なくない。
また、平成十六年三月二日受領の「衆議院議員長妻昭君提出国のタイムカード導入及び賃金不払い残業に関する質問に対する答弁書」(内閣衆質一五八第一五号)において、国は
「厚生労働省における職員の勤務時間管理については、国の機関として国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)、人事院規則等に基づき勤務時間報告書等を適切に管理することにより特段の支障なく行っているところであり、また、タイムカードのみでは職員の正確な勤務時間が把握できないことから、勤務時間管理の手法としてタイムカードの導入は必要でないと考える。
(中略)タイムカード導入のメリット及びデメリットについては、その導入により職員の登庁及び退庁の時刻を把握することが可能になると考えられるが、一方、機械的に登庁及び退庁の時刻を記録するタイムカードのみでは職員の正確な勤務時間が把握できないと考えられ、また、導入のための費用も必要になると考えられる。」
と答弁している。
このように国が、国家公務員の勤務時間の把握につき、「職員の正確な勤務時間が把握できない」と認識しているタイムカードにつき、民間に対しては、その打刻時刻にもとづいて労働時間を算定すること、ならびに、これにより算出された労働時間から、賃金の支払いを強要することは、おかしいのではないか。
と、厚労省は、「タイムカードのみで(厚労省)職員の正確な勤務時間は把握できない」としながら、実際に労働基準監督官が会社に対して労働時間把握の指導をする際にはタイムカードを重要視するという、なんとも二枚舌なやり方をしていることがこの質問からわかります。
上記の国会答弁は平成22年のものですが、平成28年の現在でも知り合いに聞いたところタイムカードは使ってないそうです。
公務員の給与というのは、払ったら払ったで批判の対象になることがある、という難しいというか面倒な話題なのですが、少なくとも、人様の会社の労働時間とやかく言う前に、自分のところの職員の労働時間きちんと把握したらどうですか、という話です。
でないと、今後もこういう話は次から次へと表沙汰になってくることでしょう。