月曜日は社労士会の本会研修という、社労士なら絶対に出ないといけない研修が池下の方であったのですが、その研修の主なテーマは去年の9月に改正・施行された派遣法でした。
今回は研修の備忘録代わりと研修で得た知識のお裾分けです。
派遣法については、このブログでも何度も触れているのですが、その内容は基本的に派遣元、人材派遣会社目線のものばかりでした。
なので、この記事では主に派遣先、派遣労働者を受け入れる側の会社の視点で、実務面のことを考えていこうと思います。
この記事の目次
0.1. ①事業所単位の制限がなくなったわけではない
今回の改正で最も大きかったのは、これまでは派遣先が派遣労働者を受け入れられるのが、事業所単位で3年だったのが労働者単位で3年になったこと、とされています。
ただ、実際には事業所単位3年の縛りも現行の法律では依然として残っており、延長ができるようになっただけ、にすぎません。
なので、この延長手続きをきちんと行わないと法違反になってしまったり、後述する、派遣3年で労働契約申込みみなしのリスクも生まれます。
また、労働者単位3年と事業所単位3年の派遣期間については、事業所単位の方が優先されるので、いくら労働者単位で派遣期間が3年に達していなくても、事業所単位の期間が延長されないと、事業所単位の期間以上の派遣は行えないわけです。
0.2. ②延長には労働者代表への意見聴取が必要
派遣先の企業が、事業所単位の期間を延長し、3年以上の長期にわたって派遣労働者を受け入れる場合、労働者代表(※)の意見聴取が必要となります。
※ 労働者代表:労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者
また、意見聴取を行う際は、以下の事項について労働者代表に書面で通知しないといけません。
- 派遣可能期間を延長しようとする事業所
- 延長しようとする期間
意見聴取を行えばいいので、必ずしも労働者代表の同意をえる必要はないのですが、異議があった場合には、会社は対応方針等の説明を行わないといけません。
0.3. ③労働者単位の期間は延長不可
上記のように、事業所単位の期間については延長できるのですが、今回新たに制限が設けられた労働者単位3年という派遣期間については延長はできません。
ただし、同じ会社や事業所でも、部署や課が変われば(係や班単位では×)、組織単位ごとの業務が変わったと判断でき、そこから新たに3年派遣として働くことができます。
加えて、この3年の期間制限については、3ヶ月のクーリングが認められていて、派遣と派遣のあいだを3ヶ月開ければ同じ事業所の同じ部署で再び3年働かせることもできます。
また、派遣元の人材派遣会社で無期雇用されている労働者や60歳以上の派遣労働者の場合、この労働者単位3年の派遣期間の制限は受けません。
0.4. ④申し込みみなし制度
申し込みみなし制度とは、派遣先がある条件を満たすと派遣労働者に対して「労働契約を申し込んだ」とみなす制度です。つまり、派遣労働者が同意すれば、会社は派遣労働者を直接雇用しないといけないわけです。
改正された現行の労働者派遣法で労働契約を申し込んだとみなされるのは以下の場合です。
- 派遣労働者に禁止業務を行わせた場合
- 無許可の人材派遣会社から受け入れた場合
- 事業所単位・労働者単位の期間制限に違反した場合
- 偽装派遣・偽装請負の場合
望まぬ雇用契約を避けるためにも、特に、事業所単位・労働者単位の期間制限については、十分に気をつけて対応したいところです。
0.5. ⑤キャリアアップ・均衡待遇の推進
派遣労働者のキャリアアップ支援がおよび雇い入れについては努力義務なので、やれるなら、でかまいません。
ただし、もしも、派遣労働者を雇用しながら、自社(派遣先)で正社員や労働者を雇用する気がある場合には気をつけなければなりません。
そうした募集情報を、以下のように派遣労働者に周知しないといけないからです。
(1)正社員を募集する場合
- 派遣先の同一の事業所で同一の派遣労働者を継続して1年以上継続しており
- その事業所で正社員を募集する場合
(2)労働者を募集する場合
- 派遣先の同一の組織単位の業務に、継続して3年間受け入れる見込みがある派遣労働者について
- 派遣元事業主から、その派遣労働者を直接雇用する依頼があり、
- その事業所で働く労働者(正社員に限らない)を募集する場合
雇用形態にかかわらず労働者を募集する場合は(2)の制限がかかり、正社員を募集する場合はさらに(1)の制限がかかるわけです。
また、例えば、ウェブサイトなどで常に労働者を募集している場合も、ウェブサイトで募集している、もしくは募集を開始した、ということを伝える必要があります。
以上です。
ちなみに、事業所単位の期間、労働者単位の期間、どちらの場合も、その開始は改正派遣法の施行日の9月30日以後に締結される労働者派遣契約を始点とします。
よって、去年の9月30日をまたいだ労働派遣契約がある場合、それが終わって新たに更新した契約に定められた日から3年を計算することになります。
ざっとですが、こんなところです。
派遣法違反については、派遣元は許可の取り下げのリスクが、派遣先には労働契約申込みみなしというリスクがあるので、どちらの立場であっても、派遣労働者を使用するのであれば十分に注意したいところです。
※ 追記:タイトルが2016年改正となっていましたが、実際には2015年改正なので訂正しました。