こういう仕事をしていると、いろいろな人の人生を、相談や手続を通して見ることになります。どこかの会社の従業員の方が、結婚した、子供が生まれた、離婚した、亡くなった、みたいな話も割と日常的に聞きます。
で、どこの家庭にも様々な事情があるわけですが、たまにたまにの極稀に、離婚した奥さん(配偶者)や奥さんに引き取られたお子さんを健康保険の扶養に入れたままにしておきたい、という方がいます。
そんなことができるのでしょうか。
結論から言うと、子供はできますが、配偶者は無理です。
1. 健康保険の被扶養者になれる条件
健康保険の被扶養者になれる家族には①生計維持関係があれば同一世帯に属していなくてもよい物と、②生計維持関係にプラスして、同一世帯に属していないといけないものがいます。
①生計維持関係のみあればいい者
- 直系尊属(父母・祖父母等)
- 配偶者(事実婚含む)
- 子
- 孫(曾孫は入らない)
弟妹(兄姉は入らない)兄弟姉妹(法改正により変更)
②生計維持関係と同一世帯に属している必要がある者
- 被保険者の3親等内の親族
- 事実婚相手の父母および子(祖父母・孫は入らない)
- 事実婚相手が死亡した後の相手の父母および子
生計維持関係とは、法律上明確な定めはありませんが通達で年収が「130万円未満(60歳以上又は障害者は180万円)」のもとしています。つまり、生計維持関係とは130万円の壁のことを指すわけです。
また、たとえ年収が130万円未満だとしても、同一世帯に属している場合は原則被保険者の年収の2分の1未満であること、同一世帯に属していない場合は被保険者からの仕送りよりも収入額が少ないことが条件となります。
1.1. 離婚直後の相手と事実婚?
離婚した元配偶者に引き取られた子供が扶養に入れる理由は、前段のまとめでわかるかと思います。生計維持関係さえあれば、子供は同一世帯に属していなくても被扶養者の範囲に入るわけですから。
一方、離婚した元配偶者というのは、①の範囲内には含まれません。
一応、健康保険上の扶養は法律上の婚姻は絶対条件ではなく、事実婚でも良いとされていますが、さすがに離婚したばかりの相手と事実上婚姻関係がある、というのは苦しい。たとえ、離婚した相手とそのまま同居するなどしても、です。
1.2. 離婚した配偶者は3親等内の親族ではない
では、②の方はどうかというと、まず、3親等内の親族でないことは明確でしょう。3親等内の親族とは
- 3親等内の血族(養子含む)
- 3親等内の姻族(法律上の婚姻によってできた親族)
を言うわけですから。婚姻中の配偶者は3親等内の血族に含まれますが、離婚すると血族ではなくなります。
現行の行政システムだと、実はけんぽ協会が、それぞれの被保険者の被扶養者が上記のような条件できちんと入っているか、あるいは外れているか、というのを全て正確に知ることはできていないようで、ときに違法な状態で被扶養者が入ったままになっていたりします。
しかし、来年から始まるマイナンバー制度による行政同士の連携が進めばこういったことも是正されていくはずです。
それにしても、全然年末向けの話じゃなかったなあ、今回のエントリー(笑)。