その他法改正

4月の施行目前!改正育児介護休業法(育児に関する内容)をチェック

2025年3月11日

令和6年の通常国会で大規模な改正が行われた育児介護休業法。

その改正内容の多くが、今年の4月1日施行となっており、施行日が迫っています。

そこで、今回のブログでは、令和6年改正の育児介護休業法の改正内容のうち、令和7年4月1日施行で、かつ育児関連することについて、最後のチェック的にその改正内容を確認していきます。

 

1. 育児に関する改正の内容の概要

1.1. 子の看護休暇の見直し

まずは子の看護休暇についてです。

こちらは今回の改正で以下のように変更されています。

改正項目 改正内容
取得可能な事由 取得可能事由に以下の事由が追加

  1. 感染症に伴う学級閉鎖等
  2. 入園(入学)式、卒園式
対象となる子の年齢 「小学校就学始期までの子」から、「9歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子(小学校第3学年修了前の子)」に変更
労使協定による適用対象外 「継続して雇用された期間が6か月未満の労働者」の要件は撤廃(「1週間の所定労働日数が2日以下の従業員」については、変更なし)

もともと取得事由が子の看護関することにに限定されていたため、「子の看護休暇」という名称だった本制度。

しかし、今回の改正で、子の看護休暇の名称は「子の看護等休暇」に変更されます。

地味な変更点ですが、こういった細かい部分も就業規則や労使協定、社内様式等の改正の際は見落としがないよう注意したいところです。

 

1.2. 所定外労働の制限の対象拡大

次に、所定外労働の制限について。

育児介護休業法の定めでは、労働者から請求があった場合、原則、会社は当該労働者に所定外労働を行わせることはできないと定められています。

この所定外労働の制限の対象なのですが、現行法では、この所定外労働の制限の対象となる子の年齢を「3歳に満たない子」となっているところ、改正法施行後は「小学校就学の始期に達するまでの子」に変更されます

所定外労働の制限については、よほどのことがない限り育児介護休業規程に定めがあるはずなので、どこの会社でも、育児介護休業規程の当該箇所について、変更が必要となるはずです。

 

1.3. 育児のためのテレワーク導入の努力義務化

育児介護休業法では、事業主に対し、子を養育する労働者に関して、育児目的休暇や時差勤務、フレックスタイム制などの導入を努力義務として課しています。

そして、今回の改正では、この努力義務に、「3歳に達するまでの子を養育する労働者」に対する措置として、「在宅勤務等(テレワーク)」が追加されました。

こちらは、あくまで努力義務となるので、会社として可能な範囲での対応で十分です。

 

1.4. 育児短時間勤務の代替措置にテレワークを追加

事業主に対して義務付けられている育児短時間勤務ですが、業務の内容の関係で短時間勤務が困難な労働者に関しては、労使協定により育児短時間勤務の対象外とすることが可能なのですが、その場合、育児短時間勤務のフレックスタイム制や時差出勤制度などの代替措置を設ける必要があります。

今回の改正では、この代替措置の1つにテレワークが追加されました。

その性質上、育児短時間勤務を行うことが困難な業務がない場合、対応は不要です。

 

1.5. 育児休業取得状況の公表義務が300人超の企業に拡大

現行の育児介護休業法では、従業員が1000人を超える企業に対し、男性労働者の育児休業等の取得状況を年1回公表することを義務付けています。この公表義務のある企業の範囲が、今回の改正で、1000人超から300人超に拡大されます。

本制度が企業に義務づけている公表内容は、以下のうち、いずれか一つとなります。

(ア)育児休業等の取得割合

(イ)育児休業等と育児目的休暇の取得割合

 

(ア)の計算方法

育児休業等をした男性労働者の数 ÷ 配偶者が出産した男性労働者の数

 

(イ)の計算方法

(育児休業等をした男性労働者の数 + 小学校就学前の子の育児を目的とした休暇制度を利用した男性労働者の数の合計数) ÷ 配偶者が出産した男性労働者の数

なお、公表は年1回、公表を行う日の属する事業年度の直前の事業年度(公表前事業年度)の状況について必要です。公表の時期は公表前事業年度終了後、おおむね3か月以内となります。例えば、事業年度末が令和7年3月という場合、初回公表期限は令和7年6月末、令和7年4月の場合は令和7年7月末になるわけです。

 

2. まとめ

改正項目が多い割に、企業への負担はそれほど大きくない、というのが救いといえば救い、というのが正直な感想でしょうか。

ただ、育児に関しては、今回解説した令和7年4月1日施行のものより、令和7年10月1日施行のものの方が、実は会社の負担的にはヘビー。なので、そちらについてもなるべく早めに本ブログでまとめたいと思っています。

また、令和7年4月1日施行の介護に関する記事についても、近いうちに別記事にまとめる予定です。

今回の改正に対応した、育児介護休業規程や社内様式については、すでに厚生労働省のHPで公開されているので、こちらもご活用ください。

育児・介護休業等に関する規則の規定例(出典:厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/000103533.html

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士(登録番号 第23130006号)。社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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